NHK札幌放送局

ロシア産石炭禁輸方針 北海道で生産できないの?

シラベルカ

2022年6月1日(水)午後2時06分 更新

皆さんから寄せられた疑問に答える「シラベルカ」。

今回は、札幌市の男性から、次のような投稿をいただきました。

「北海道で、石炭の生産は現在できないのでしょうか?」

男性にお話を聞くと、ウクライナへの軍事侵攻を受けたロシアへの経済制裁として、政府がロシア産の石炭の輸入を段階的に削減し、最終的に禁止するというニュースを見て疑問に思ったそうです。
石炭を使って火力発電を行っている電力会社をはじめ、燃料にロシア産の石炭を使ってきた道内の製紙業やセメント製造業などでは調達先の変更を強いられています。
北海道は、空知地方を中心に、かつて石炭産業が栄えてきました。
今、石炭を採掘することはできないのでしょうか? 男性の疑問について調べました。
(岩見沢支局記者 竹村知真)

石炭採掘の現状は

疑問を解決すべく、まずは北海道庁の担当者を訪ねました。
今、道内で石炭の採掘はできるのか。環境・エネルギー課の担当者に話を聞くと…

北海道環境・エネルギー課 北創課長補佐
「石炭は現在でも北海道内で産出しています」

かつて盛んだった石炭の採掘、今も行われているというのです。

北海道環境・エネルギー課 北創課長補佐
「北海道で石炭の採掘方法は2つあります。1つは地表に露出している、あるいは、地表近くにある石炭を採取する『露天掘り』という方法です。そして、もう1つは、地下深くの炭層にある石炭に坑道を通して、そこから石炭を掘り出す『坑内掘り』という方法です」

「露天掘り」とは

採掘はどのように行われるのか。
地質の専門家とともに夕張市を訪れました。
夕張市では、石炭の「大露頭」を目にすることができます。
高さ7メートルにわたって積み重なった5000万年前の石炭層です。

道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所 林圭一主査
「露天掘りというのは基本的に“掘りやすいところで広く採る”という掘り方です。地層が途切れたり、曲がったりしておらず、かつ、水平に近い地層が広がっているエリアを狙って掘ることになります」

道内では、空知地方を中心に、今も6つの企業が露天掘りを行っています。
年間の産出量は令和2年度の実績ベースで45万トン。ほとんどが砂川市の火力発電所で使われていて、道内の使用量に占める割合は全体のわずか5%ほどに過ぎません。

国内唯一の「坑内掘り」

一方、釧路市では、国内で唯一となる石炭の「坑内掘り」が行われています。
釧路市では、2002年に、国内最後の炭鉱だった「太平洋炭礦」が閉山しました。
「釧路コールマイン」がその事業を引き継ぎ、国からの委託で海外から研修生を受け入れ、外国人技術者の育成を担っています。
今は、市内にある火力発電所に年間20万トン余りを供給しています。

会社には、ロシア産石炭の禁輸方針が示されたことを受けて、「石炭を分けてほしい」という問い合わせが相次いで寄せられたといいますが、採掘は10年スパンで計画を立てているもの。今、需要が一時的に高まったからと言って、対応するのは難しいということでした。

釧路コールマイン 松本裕之専務取締役
「いろいろな企業さんから、『石炭を回してもらえないか』とか、『量を増やしてもらえないか』といった要望は頂いています。ただ、10年、15年先まで計画を立てて採炭を行っているので、今すぐに増産することは難しいんです。私たちとしては、今、取り引きをしている企業さんに安定した石炭の供給をしていくことが重要だと思っています」

“脱炭素”の中で

政府を挙げて「脱炭素」の取り組みを進めている中、国内で石炭の増産をという話にもなりにくいのが現状です。

道立総合研究機構エネルギー・環境・地質研究所 林圭一主査
「二酸化炭素を出さないことが目標として掲げられる中で石炭を社会的に大きく使っていこうという話はなかなか難しい」

一方、かつてに比べて限られた規模になってきたとはいえ、生産を維持してきた石炭産業は、今も道内経済に役割を果たしています。
道環境・エネルギー課の北課長補佐は、次のように指摘しています。

「石炭は、それを掘り出す作業に従事している方もいるので、雇用や地域経済の活性化に大きく役立っています。石炭は北海道にある貴重なエネルギー資源だと考えているので、有効活用していくことが大事だと思っています。ただ、環境への配慮もしなくてはなりません。環境負荷をできるだけ減らしながら使っていくということだと思います」

業界では二酸化炭素の排出を抑えるための技術開発も進めています。
たとえば、三笠市では、石炭層から取り出した水素と二酸化炭素を分け、水素をエネルギーとして活用し、二酸化炭素は地下に埋め戻すという計画を進めています。
今回取材した釧路コールマインでも、採掘したあとの空間を埋め戻す際、回収した二酸化炭素を注入して閉じ込める実証事業を始めています。

道内の石炭産出や脱炭素をめぐる動き、今後も調べていきたいと思います。

2022年5月31日

道内の石炭産業にまつわる記事はこちら👇

「炭鉱住宅」 はいま
炭鉱で栄えた地域で人々の暮らしを支えた『炭鉱住宅』
いまどうなっているのか調べました

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