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北海道の参議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…

  • 2022年6月15日

さまざまな「数字」が飛び交う選挙の世界。それを的確に「分析」するのは選挙取材の基本です。
選挙管理委員会の記録やNHKに残っている当時の資料などをもとに、北海道の参議院選挙をデータで“深掘り”していきます。
なお、最近の詳しい選挙結果については、「参議院選挙 北海道の結果を振り返る 平成以降の戦いの歴史は…」の記事をご覧ください。 

“深掘り”その1 「投票率」

まずは、「投票率」です。
3年ごとに行われる参議院選挙は戦後、前回・2019年(令和元年)の選挙まで25回行われました。
昭和の時代は14回。平成の時代は10回です。
今回の26回選挙は、令和に入って2回目の選挙となります。

前回までの25回の選挙について、北海道選挙区の投票率の推移は次のようになります。(※かつては各都道府県が1つの選挙区となる「地方区」と、全国が1つの選挙区となる「全国区」の二本柱で参議院選挙が行われていました。この「地方区」を含みます)

参議院は戦後、戦前の貴族院に代わって設置されました。
記念すべき1回目の参議院選挙は、1947年(昭和22年)に行われました。
この年、日本国憲法施行に合わせて、4月に衆議院と参議院の選挙、知事選挙や市町村長選挙、地方議員選挙が集中して行われました。
最初の参議院選挙はその1つでした。今では参議院選挙といえば「夏」ですが、最初は「春」だったわけです。
ただ当時、海外から引き揚げてきたばかりの有権者は、選挙への関心が低かったとみられています。北海道の投票率は50.28%で、前回までで過去2番目に低い記録です。
なお、参議院議員は任期が6年で、3年ごとに半数が改選されます。
この1回目の選挙では、北海道では8人が当選し、得票順に上位4人が任期6年、下位4人が任期3年とされました。下位当選の4人は早くも3年後、1950年(昭和25年)の2回目の選挙で改選期を迎えたわけです。

前回までの参議院選挙で投票率が最も高かったのは、衆議院選挙と同日に行われた1980年(昭和55年)の12回選挙で76.28%でした。
当時のNHKの取材記録では、投票率の上昇について、「自民党の2人がいずれも新人だったこともあり、当初、選挙戦は低調だったところに突然の衆議院解散。史上初の衆参同日選挙で状況は一変した」としています。
70%を超えたのは、前回選挙までの25回のうち6回で、昭和後期から平成にかけての時期に集中しています。
逆に、投票率が最も低かったのは、定数是正で定員が「4」から「2」になった1995年(平成7年)の17回選挙で46.92%でした。50%を下回ったのは、前回までではこのときしかありません。

平成に入って以降は、1989年(平成元年)の15回選挙は70.90%と高かったものの、続く1992年(平成4年)の16回選挙、そして17回選挙と2回続けて、前の選挙よりも10ポイント以上下がりました。この2回で、実に24ポイント近く下がったことになります。
その後、1998年(平成10年)の18回選挙は投票時間の2時間延長などで59.90%まで回復し、以降、2010年(平成22年)の22回選挙までは概ね60%前後で推移しました。とくに2004年(平成16年)の20回選挙から22回選挙までは3回続けて60%を超えています。

その後、2013年(平成25年)の23回選挙は54.41%と、22回選挙よりも7ポイント以上下がり、再び50%台に落ち込みました。
選挙権を得られる年齢が18歳に引き下げられた前々回・2016年(平成28年)の24回選挙は56.78%で、23回選挙と比べて2ポイント余り上がりましたが60%には届きませんでした。この選挙では定数是正で定員が「2」から「3」になり、与野党の勝敗がはっきりするようになりましたが、投票率としてはもうひとつでした。
そして前回、2019年(令和元年)に行われた令和最初の25回選挙は53.76%で、やはり60%には届きませんでした。
かつては70%を超えていた投票率は、最近は60%に届かなくなっています。

ところで、グラフを詳しくみると、“定期的”に投票率が落ち込んでいることが分かります。2回の衆参同日選挙の間に行われた1983年(昭和58年)の13回選挙や、50%を割り込んで過去最低の投票率となった17回選挙などです。
かつて参議院選挙は「地方区」と「全国区」の二本柱で行われていましたが、この13回選挙から、「全国区」に変わって「比例代表」が導入されました。
「全国区」が候補者個人への投票だったのに対して、あらたな「比例代表」では政党・政治団体への投票に変わりました。(※現在の「非拘束名簿式」とは異なり、当時は政党・政治団体が名簿でつけた順位に従って当選者が決まっていました)
また、17回選挙は北海道選挙区の定員が「4」から「2」に削減された選挙です。
選挙の仕組みが大きく変わった“節目”ですが、むしろ、投票率は落ち込んでいます。
実は、この“共通項”はー。

グラフで緑の丸をつけたのは、「い年」。12年に一度、春の統一地方選挙と夏の参議院選挙が重なる年です。
組織型の選挙が主流だったその昔は、「い年」の参議院選挙は投票率が下がるという経験則がいわれていました。統一地方選挙の“選挙疲れ”から、組織の動きが鈍くなるということです。

一方、その「い年」の次は、下がった投票率が「元に戻る」かたちになっていますが、中でも目に付くのは1974年(昭和49年)の10回選挙です。
一気に16ポイント以上も回復。75.86%は過去2番目に高い投票率です。
この10回選挙は第2次田中内閣のときで、2人の自民党の現職は、自民党の公認を得られなかった無所属の候補者と保守票が分散したこともあっていずれも落選しました。
自民党と社会党が“指定席”として2議席ずつ分け合うかたちが続いた北海道で、自民党が初めて議席を得られなかった選挙です。
当時のNHKの取材記録では、「狂乱物価をはじめとする失政に対する有権者の不満がストレートに投票に結びついた。戦後政治の大きな節目となった」と総括しています。

投票率はそのときどきの政治情勢に大きく左右されます。
与党側が有利なタイミングで解散して選挙を仕掛けられる衆議院選挙と違って、参議院選挙は日程がある程度絞られるため、かならずしも与党側に有利な状況では行われません。
過去には、ときの与党側の大敗で、その後の政権交代につながった選挙もあります。
その1つ、2007年(平成19年)の21回選挙は、「い年」の選挙でしたが、投票率は62.40%と今世紀の7回の選挙で最も高くなっています。
一方、選挙期間が長いことや候補者との心理的な遠さもあって、参議院選挙はそのときの「風」に左右されやすいともいわれています。
投票率の推移を分析していくと、そうした事情もかいまみえてきます。

前回の25回選挙も「い年」の参議院選挙でした。その昔ほど、1つ前の選挙から大きく落ち込んだわけではありませんが、53.76%は過去4番目に低い投票率でした。
さて今回の参議院選挙。「い年」の次の選挙でもあり、投票率がどうなるかも注目点です。

“深掘り”その2 「期日前投票」

次に、期日前投票を“深掘り”します。
期日前投票は、仕事や旅行などの用事があって投票日当日に投票できない有権者が事前に投票できる制度で、公職選挙法の改正で2003年(平成15年)12月に導入されました。参議院選挙では2004年(平成16年)の20回選挙から行われていて、前回・2019年(令和元年)の25回選挙で6回行われたことになります。
最近の選挙では、全国的に期日前投票を利用する人が増えています。
次のグラフは、参議院選挙で北海道選挙区の期日前投票者数と投票率の推移を並べたものです。

棒グラフで示した期日前投票者数は、制度が導入された20回選挙では北海道全体でおよそ38万人でした。これが前回の25回選挙ではおよそ76万人と、20回選挙と比べてほぼ倍増していました。
この間、折れ線グラフで示した投票率は8ポイント程度、下がっています。
全体の投票率が下がるなかで、期日前投票は逆に増えているわけです。
これは北海道にかぎらず全国的な傾向で、期日前投票はもともと投票日当日に投票に行く層が“前倒し”で投票を済ませている状況がみえてきます。かならずしも、期日前投票があらたな投票層を“開拓”しているわけではない、期日前投票が当日投票の“先食い”になっている状況がみえてきます。
 
ここで、投票全体に占める期日前投票の割合を計算してみます。
期日前投票がどれくらいの“重み”があるかを示す指標で、「期日前シェア」と名付けます。その推移を折れ線グラフで描いたのが次のグラフです。

期日前シェアは、制度が導入された20回選挙はおよそ13%でした。「投票者の8人に1人以上」が期日前投票を利用した計算です。
その後、期日前シェアは、回を重ねるたびに増えています。
2013年(平成25年)の23回選挙ではおよそ23%と20%を超え、「投票者の5人に1人以上」が期日前投票を利用していました。
そして、前々回・2016年(平成28年)の24回選挙ではおよそ28%と「投票者の4人に1人以上」に。前回の25回選挙ではおよそ31%と「投票者の3分の1近く」になりました。
前回の選挙は全国の期日前シェアがおよそ33%で、北海道はこれをやや下回りました。なお、47都道府県で期日前シェアが最も高かったのは秋田県で、50%を超えていました。秋田県選挙管理委員会は、「期日前投票所をスーパーや病院など利便性が高い場所に設置する工夫をしている自治体もあり、制度の利用が進んでいるとみられる」と分析しています。

回を重ねるごとに期日前投票の“重み”は増しています。
裏を返せば、有権者の投票傾向を正しく把握するためには、当日投票者の分析だけでは不十分だということです。NHKは情勢分析にあたり、投票日当日に加えて期日前投票での出口調査にも力を入れています。投票日当日の投票と事前の期日前投票では傾向が一致するケースがほとんどですが、どちらかに“波乱”の芽が隠されていないともかぎりません。最近の選挙では、両者の投票傾向を丁寧に見極めることではじめて、正確な情勢分析が可能になっています。

“深掘り”その3 「出口調査」

NHKは、国政選挙や注目選挙で有権者の動向を探るため、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施しています。
その設問の1つに「支持政党」があります。どの政党・政治団体を支持しているのかを具体的に選択肢を示して尋ねています。その結果、各党の支持率からは党としての“勢い”がわかるほか、支持する政党・政治団体のない支持なし層、いわゆる無党派層の状況も把握できます。
参議院選挙で投票日当日に行った出口調査で、最近の「支持政党」の結果は次のようになります。全道の結果を2004年(平成16年)の20回選挙から前回・2019年(令和元年)の25回選挙まで並べています。

20回選挙では、与党・自民党と野党・民主党の支持率は32%で並んでいました。
その後、2007年(平成19年)の21回選挙では民主党が40%、自民党が31%で差がつきました。
民主党は2009年(平成21年)の衆議院選挙で政権交代を果たしました。
21回選挙当時は、2年後の政権交代に向けて民主党が全国的に勢いを増していた時期です。それが北海道での支持率にもあらわれています。
そして政権交代後の2010年(平成22年)に行われた22回選挙。
与党・民主党への逆風の中で行われましたが、支持率では民主党が43%、自民党が23%と、21回選挙よりも差が広がりました。
実は、投票先と支持政党は別モノという状況は多くの選挙でみられます。(例:「A党を支持してきたが、今回は対立するB党に投票する(※戒めの心理)」「C党は支持していないが、今回は投票してみる(※期待の心理)」)
有権者心理は実にさまざまで、だからこそ出口調査の分析はおもしろいのです。
また、この22回選挙では「順序効果」も考えられます。
出口調査の「支持政党」はその時点での政党の勢力順に選択肢を並べています。22回選挙当時は、与党は民主党で、選択肢としては1番目でした。このたぐいの調査では、一番上にある選択肢が選ばれやすい傾向がみられます。この「順序効果」が一定程度含まれていることは分析にあたって考慮しなければなりません。
この次、2013年(平成25年)の23回選挙からは、再び自民党が支持率トップとなりました。安倍首相による長期政権が続いていた時期で、自民党の支持率も23回選挙は37%、その次の前々回、2016年(平成28年)の24回選挙は38%、前回の25回選挙は40%でした。自民党はこの間、安定的に支持率トップを維持していました。
対する野党。野党第1党の座は、23回選挙は民主党、24回選挙はその流れをくむ民進党、そして25回選挙は立憲民主党でした。その支持率は自民党に一定の差をつけられるかたちが続いていて、前回選挙は立憲民主党と国民民主党を合わせても23%で、自民党とはダブルスコア近い差となっていました。

さて、選挙でカギを握るといわれるのが支持なし層、いわゆる無党派層です。
その推移をみますと、自民党や民主党などと比べて、変動はそれほど目立ちません。政党対決色が強まる国政選挙では、地方選挙と違って支持なし層の割合はそれほど高くならない傾向がみられます。
ただ、そうした中にあっても濃淡はみられます。例えば、21回選挙や22回選挙では支持なし層は比較的低めになっています。民主党の政権交代の前後で、政党支持を明確にしやすい雰囲気もありました。一方、その後の23回選挙以降は、支持なし層の割合は2割近くと相対的に高めとなっています。
実はひと口に政党支持といっても、いまは昔の選挙ほどは強固ではなく、選挙のたびに投票先を変える“そのつど支持”が少なくないという指摘もあります。
明確な争点があって政党支持を明確にしやすい選挙では、特定の政党の支持率が上がり、実際の投票でもその党が地力以上に票を集める、いわゆる“雪崩を打つ”状況になりがちです。その逆に、政治情勢が比較的穏やかな状況での選挙では、とりあえず政権与党を投票先の消極的選択肢として選ぶという有権者は少なくありません。そうした“そのつど支持”層は、支持政党でみれば支持なし層であるケースが多くなっています。
その“ふわっとした”層の存在も分析にあたって考慮しなければなりません。

最後に、前回の25回選挙で、年代別に支持政党の傾向をまとめたのが上のグラフです。
自民党は、すべての年代で他党よりも支持率が上回り、とくに働き盛りの30代から50代では支持率が高くなっていました。
立憲民主党は、年代が高くなるほど支持率が上がっていました。10代・20代と比べて、70代以上では3倍以上の支持率でした。
これと対照的なのが支持なし層です。年代が若いほど支持なし層の割合は高く、10代・20代では40%と、自民党の支持率32%を上回っていました。
年代が上がるほど社会経験を積んでいることから、政党支持は明確になりがちです。
そうした中で、自民党は若い年代でも一定の支持を得ています。
こうした傾向は北海道に限らず、最近の選挙では全国的にみられます。(※支持なし層といっても「実際に投票した支持なし層」であり、「寝て」はいません。その点は留意すべきです)

今回の選挙で、出口調査はどのような投票傾向を示すのかー。
NHKは出口調査の結果を引き続き、“深掘り”していきます。

(札幌局選挙班)

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