NHK札幌放送局

洋上風力 向いているはずの北海道でなぜ進まない?

ほっとニュースweb

2021年6月14日(月)午後7時05分 更新

「脱炭素社会」の流れが急速に進む中、「海の上の風力発電」が北海道で注目されています。陸上よりも風が強く、効率よく発電できるなど、多くのメリットがある洋上風力発電。国は北海道を全国的にも適した地域として挙げています。ところが、道内で事業化に向けた動きは具体化しておらず、全国的には遅れているのが実情です。それは、なぜ、なんでしょうか。(札幌放送局記者 吉村啓、臼杵良)

北海道は全国最大の潜在力が

道内は洋上風力発電にどのくらい向いているのか。それを示す数字があります。

「2040年までに955万キロワットから1465万キロワット」

政府が掲げた目標で、この数字は九州、東北を上回り、全国で最大。大型の原発、10基分を超えるだけの巨大な規模です。

2040年はまだまだ先のことではありますが、それだけ国は北海道に期待している証しでもあります。

ところが、秋田県や長崎県など先進的な県は去年の段階で、すでに発電事業者の募集が始まっているのに対して、道内ではまだ、具体的な動きはありません。

北海道は「電気の道」が細い

理由について、電力供給の仕組みに詳しい北海道大学大学院の北裕幸教授はこう指摘しました。

北海道大学大学院 北裕幸 教授
「課題の1つは、北海道の洋上風力発電の潜在的な発電量というのが、『送電容量』をはるかに超える大きさになると見込まれているということです」

「送電線」の容量不足、いわば電気が通る道路が細いことなんです。

北教授の指摘の内容を踏まえて、かみ砕いて説明します。

道内で風力発電に向いているのは、例えば檜山地方や後志地方などの主に日本海側で、大きな都市が少なく電気をあまり使わない地域です。

一方で、電気を多く使うのは、道内では札幌などの道央圏が中心なので、発電したらそこまで電気を送る必要があります。

しかし、電気を使う量が少ない地域では送電線の容量が小さく、たくさんの電気を送れないのです。
例えると「道路が整備されていないので、多くの車が札幌までたどり着けない」ということになります。

「では、道路を整備すれば良いのでは?」と思いますよね。でも、立派な道路を整備しようとすると、どうしても時間とお金がかかってしまいます。

新たに道路を作る必要がある上、広大な北海道では電気を届けるまでの距離も長いですから、余計にお金が必要になります。仮に整備したとすると、回り回って道民の電気代にはねかえる可能性もあります。

北教授はさらに別の問題も挙げました。

「もう1つの課題は、風力の発電量は気象条件に依存して、時々刻々と変化するので、北海道全体の需要と供給のバランスを取ることが難しくなる」

電気は発電する量と使う量が一致していないと、周波数が乱れて停電する可能性があります。発電する量が変動する洋上風力発電を大量に取り入れると、バランスがとれなくなって停電するリスクは増えるというのです。

国はどういった対策を?

国は洋上風力発電の導入を進めているのだから、何か対策を考えていないのでしょうか。北教授に聞くと、壮大な対策があると教えてくれました。

「北海道の洋上風力発電からの電力を首都圏など送電容量の大きい地域でも活用できるように直流の海底ケーブルによって本州まで直接送電することが検討されています」

「2050年のカーボンニュートラルの社会を実現していくには、北海道沿岸の洋上風力発電というのは貴重なグリーンエネルギーとなり得るものですので、日本全体で再エネを活用できるような方策を検討するということが重要です」

この「北海道と本州を結ぶ海底ケーブル」、例えて言うと海底を走る電気の「高速道路」のようなものと考えてください。

道央圏以上に電気を大量に使う、首都圏を目指して供給しようという計画です。

国の検討委員会は、8000億円以上かかると試算しているものの、北海道だけでなく全国で広く薄く負担することで、実現できないかを探っています。

ここまでしなければならないのか、正直、そうも感じましたが、北教授は次のように話しました。

「風力発電、再生可能エネルギーを大量に導入するということが脱炭素社会を実現するために我々に課せられた重要な課題だと思いますので、多少の負担はある程度はみんなで覚悟して、みんなでそこに向かって進んでいくことが重要なんだろうなと考えています」

負担、工夫、みんなで考えよう

その一方で、国は北海道と本州を結ぶ海底ケーブルのような、大規模なプランを模索しているだけではありません。送電線が今のままでも、効率よく利用することで、もっと多くの電気を送ることができないか、検討も進めています。

さらに、ことし5月、政府系研究機関の「地球環境戦略研究機関」が、送電線を増強することなしに、道内の再生可能エネルギーの割合を65%まで引き上げられるという調査結果も公表しました。

発電コストが安い風力などの再生可能エネルギーを優先的に使うよう、ルールを変えれば良いというのです。こうしたことを考えると、まだまだ工夫の余地があるかもしれません。

国は、近く中長期的なエネルギー政策の方針、「エネルギー基本計画」をまとめ、再生可能エネルギーの割合を引き上げる方向です。

そのためのコストをどう負担するか、あるいは、負担を避けるための工夫ができないか、電気を使う私たち、消費者も身近なこととして、議論を深めていく必要があるのではないでしょうか。

2021年6月14日

自然エネルギーについてのコンテンツはこちらにも

どうする 電気?
地熱発電についての取材をまとめたページです。

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