NHK札幌放送局

凪良ゆうさんトーク全文公開~前編~

NHK高校放送部

2021年7月8日(木)午前10時53分 更新

タテ(家族や先生)でもヨコ(友達)でもない“ナナメの関係”で悩みや夢を語り合う「ラジオ #ナナメの場 」、ゲストには作家の凪良ゆうさんをお招きしました。MCの水野莉穂さん(ずーちゃん)・まえだゆりなさんと凪良ゆうさんとのトークを、ラジオ未放送分も含めて全文公開します!
前編は「小説を書いている時が一番楽しい」と語る凪良さんに“好きなことを続ける”のがどういうことなのか聞いてみました。
(#ナナメの場 ホームページはこちら)

【ゲスト】
凪良ゆうさん(作家)

<プロフィール>
1973年生まれ。2007年に長編デビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には非BL作品『神さまのビオトープ』を発表、作風を広げた。20年、『流浪の月』で第17回本屋大賞を受賞。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。おもな著作に『美しい彼』『すみれ荘ファミリア』『わたしの美しい庭』『滅びの前のシャングリラ』がある。

ずーちゃん:凪良さんの小説には、家族や友達、恋人という言葉では形容できないような“ナナメの関係”がたくさん出てくるなと思っています。どうして小説を書き始めたんですか?

凪良さん:昔からものを書くのが好きだったんですけど、もともとは小説家志望ではなくて漫画家の方を志望していて。でもそちらではあまり芽が出なかったので早々に諦めに入ってしまって。その後は創作から10年以上遠ざかっていたんですけど、ある日久しぶりに最後にハマった作品の情報をインターネットで見つけたときにすごく懐かしくなっちゃって、もう一回何か書きたいなという思いが高まったのがきっかけですね。

ずーちゃん:漫画と小説って似てるようだけど全然違うところがあって、漫画はすごく言葉が少なく心理描写があまりできないイメージがあるんですけれど、それは漫画を書いていたときにはやっていなかったことですよね?

凪良さん:漫画だと、心理描写はキャラクターの表情とかコマとコマとの間とかで伝えるものだと思うんですけど、小説だと全部文字にしないといけないので。でも意外と私は書き始めたらすんなりと小説のほうに入れたので。ちょっとびっくりするくらい「これ楽しいな」と思って。

ずーちゃん:もともと言葉を出すのは好きだったんですか?

凪良さん:本を読むのは好きだったんですけど、小説を書いたのはその時が初めてで。でも書き始めてすぐに、これは本当に楽しいな、馴染むなという感じで一日中ずっと書くようになっちゃいましたね。相性がよかったんですね。

ゆりなさん:小説家として10年くらい表現活動をされていなかった後に動き出して、実際今小説家というのが職業になっているのって、なかなか全ての人が望んでできることじゃないなと感じていて。こういうことをやってみたいし好きだけど実際に叶えられるのかなとか、葛藤の中で日々過ごしている人がたくさんいると思うし、私自身もそうなんですけれども、凪良さんが小説を書き続けている事のパワーの源というか、どういう部分が楽しいと感じるのか聞けたら嬉しいです。

凪良さん:多分ものを作っている方ってみんな思いがあると思うんですけど、楽しいよりもやっぱり苦しいときの方が多くて、それも含めて楽しいなと言っているんですけど。書いているとやっぱりしんどいことの方が多いし、でもそのしんどさも含めて好きになれる人が、その職業に就くじゃないですけど。就こうと思って就ける職業ではないというのはやっぱりわかるので。でもそれでも自分がこれをやらずにはいられないという、内からつきあがるような情熱のようなものでしょうか。プロになれるからやるじゃなくて、プロにならなくてもやらざるを得ないくらいこれが好きなんだという気持ちが全てじゃないですかね。

ゆりなさん:私自身も励まされた気持ちになってるんですけど、苦しみも含めて楽しまざるを得ないと言うのはすごくわかるなと思いました。何か夢中になって頑張っている人にも届いたらいいなと。

ずーちゃん:そこで「自分に合っていないのかな」という気持ちも出てくるけど、それも含めて楽しみなんだよと言われたら前に向ける気がします。

凪良さん:自分の周りにいる作家さんの話を聞いていても、プロになっていらっしゃる方もアマチュアのまま小説を書いていらっしゃる方も、どちらも「どれだけ嫌になっても結局何日が経っちゃうとまた書き出してる」「勝手に書き出しちゃう」「書かずにいられない」という人が多いんです。病気だねって話していて。

ずーちゃん:そこまで好きなことが凪良さんにとって小説だったように、好きなことにどうしたら出会えるのかなと。学生さんたちってやりたいことを見つけられないって悩むと思うんですよね。こういうことをしていたら出会えるかもとか、こういう考え方がいいかもと思う事はあったりしますか?

凪良さん:とても良いことを言いたいんですけど、私自身が小説を書き始めたのが34~35歳の時なんです。学生さんというとまだ20代の方が多いじゃないですか。私のように34~35歳になってから小説を書く楽しさに目覚めて運良くプロになれたような人間もいるので、いうほど焦らなくていいと思うんです。全然遅くない。

ゆりなさん:学生さんに限らずだと思うんですけど、こういうことやりたいなと思っている時って、周りの普通っていうレールから外れた生き方になってきたりしちゃうと思うんですよね。でも凪良さんの小説に出てくる登場人物たちはみんな普通の一歩外側にいる人たちがたくさん出てくるなと思っていて、そういう人たちの気持ちの救い方がすごく素敵だなと思っていて。こういう人たちもいるんだよと説得するわけでも同情させるわけでもなく、すっとすくいあげてその場にポンと置いといてくれるような表現力が私はたまらなく大好きなんですけど。そういう人たちの気持ちを想像で書いているのかなと思うんですけれど、どうやってそういうのを想像したり主人公たちに心を吹き込ませているのかなというのがすごく気になっていました。

凪良さん:私自身が創作から離れていた10年の間、自分自身がちゃんとした就職もしていなかったし、転々とアルバイトばかり繰り返して、私は将来どうなるんだろうと。浮き草のような10年間をずっとふらふらと過ごしてきたので、自分自身があまり普通のコース、きちっと就職したりするようなコースを歩んでこなかったので、もしかしたらその時の苦しかった自分を救ってあげるために書いているのかもしれないですね。他人事じゃなくて自分のことだから全然責めない。そういう自分勝手な小説を書いているのかもしれないです。別にでも、普通のコースから外れて全然いいじゃないですか。

ずーちゃん:それが心強くなる作品がたくさんだなと思っていて。登場人物たちの優しさはどこから来るんだろうといつも思っていて。キャラクターがみんな優しいなと思って。
そういうブランクがあった時とかに、早く大人になりたいなと思ったこととか、大人になりたくないなって思う気持ちって両極端だけど出てくると思うんですけど、そういうことってありましたか?

凪良さん:どっちもありました。やっぱり10代の頃は早く大人になりたいなと。親とか周りの人じゃなくて全部自分で自分のことを決められる大人になりたいなと思って10代の頃を過ごしていて。でも逆に20代になると今度は、大人はそんなに自由じゃないんだということがわかってきたので、もう一回子どもに戻りたいと思ったり。

ずーちゃん:今はどうですか?大人になってみて。

凪良さん:今は自分の好きなことをやれて、それでご飯を食べていけるというのは、とても幸せなことだと思っていて。私は一生作家のまま生きていきたいと思っているので、この幸せをなくさないために毎日朝から晩まで机にかじりついています。

ずーちゃん:学生さんって特に、あまり大人になりたくないなと思うと思うんですけど、そういう学生さんたちに何か伝えてあげるとしたら、どういう言葉をかけてあげますか?

凪良さん:私が今の学生さんの年齢の時と、今の学生さんと、社会情勢とか何もかもみんな変わっていると思うんです。私の時は就職氷河期で、友達も就職に苦労していて。今はどちらかというと逆に人手不足。でもその割に派遣とかで暮らしている方たちの数もすごく多くなっているし、生き方とか働き方とかが私の時とは比べ物にならないくらい多様化しているので、一概に自分の考えでこうすればと言えるほど単純な時代を、今の学生さんたちは生きていないと思うので、本当に大変だと思う。本当に自分だけの判断で渡って行かなくちゃいけないことが本当に多いから。しんどいだろうなと。

ずーちゃん:凪良さんの小説を読んでいると、たくさんヒントがあると思います。普通と違う道を歩んでいてもそれでもいいじゃんみたいな。本人たちがそれで良くて周りに特に迷惑をかけていないんだったら大丈夫だよって。秘密は誰でも持っているものだよっていう。それがすごく勇気をくれるし、ヒントがたくさんばらまかれているなって思います。

凪良さん:そういうふうに読んでいただけていたら嬉しいなと思います。

ゆりなさん:小説を読んで改めて「ナナメの場」について考えたとき、小説を読むと言うのも小説と私の間でのナナメの場なんだなと思って。こうして凪良さんの話を聞くのもそうなんですけど、本というのは会わなくても本屋さんに行って買ったり図書館に行って借りたりすれば、たくさんのナナメの世界とつながれるのがすごく良いところだなと思っていて。若い時にもっとたくさん小説を読んでいたら、くすぶっていた時に勇気づけられただろうなと、流浪の月を読んで感じました。

凪良さん:ありがとうございます。10代の頃に読んだ本って、ずっと大人になって歳をとった時にもどこか自分の中に残っているものがあると思うんですよね。だから時間があったら本を読んでくれると嬉しいなって私は思います。

ずーちゃん:私は小説って何よりも心理学の教科書だなと思っていて。小説をひとつ読むだけで主人公目線のことも見えれば、それを受けている相手側、そして第三者の人、すべての気持ちだったりとか、このセリフの本当の裏側の気持ちだったりとかが全部書いてあるから、私はそれですごく人の心をたくさん覚えたりとか、想像できるようになったなぁって感じます。

凪良さん:それはあると思います。自分以外の人間の人生をちょっと覗き見できるって楽しいし良いですよね。

ずーちゃん:キャラクターごとに音楽があると聞いたんですけど、毎回テーマソングがあるんですか?

凪良さん:その人物の中に入るための扉みたいな形で、私は音楽の力をすごく借ります。その人物になりきって書くタイプなので。『流浪の月』だと更紗のことを書くときは更紗の気持ちになりやすいような音楽を聞いて、更紗になれるように頑張る。更紗は笹川美和さんの『紫陽花』っていう歌でしたね。文は七尾旅人の『八月』。

ずーちゃん:凪良ゆうさんご本人のテーマソングってありますか?

凪良さん:好きな曲はありすぎてひとつに絞れないです。

ずーちゃん:音楽が本当に好きな人の答えですね…。小説書いているときはいつも音楽聴きながらなんですか?

凪良さん:そうですね。でも最終的には小説の中に没頭してしまうので、鳴っていても聞こえない状態にもなります。

ずーちゃん:そこまで没頭できるくらい好きな時間という事なんですね。だからあんなに伝わってくるんですね。

音声はこちら↓

※2ヶ月間の限定公開です。

後半は凪良さんが思う「ナナメの場」について詳しく聞きます!
後編はこちら

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