NHK札幌放送局

シラベルカ#25 水道民営化 調べてみたら…

シラベルカ

2020年10月13日(火)午後4時35分 更新

みなさんからの疑問を調べる「シラベルカ」。
今回は、私たちの生活に欠かせない「水」がテーマです。

投稿者は、札幌市内に暮らす鈴木さん。ニュースで「水道民営化」という言葉を聞く度、疑問に思うことがあったそうです。

「料金が上がるのではないかとか、水道の質が悪くなるんじゃないかとか…」

そもそも、水道の民営化とは?そして道内の現状は?調べました!


水道民営化とは!?

水道民営化ということばを頻繁に耳にするようになったのはおととしのことでした。この年、水道法が改正され、水道料金の設定なども含めて水道事業全般を運営する権利を民間事業者に売却できるようになりました。
これがいわゆる「水道民営化」と呼ばれているものです。
人口の減少や施設の老朽化で水道事業のコストが上がる中、自治体の財政負担を軽減しようというのが目的です。いまのところ道内での実現例はありませんが、水道をめぐる現状を調査すべく、取材班はまず、全国の水道料金を調べてみました。


高い!北海道の水道料金

こちらは、3人世帯の平均的なひと月の水道料金です。全国トップ4位を道内の自治体が独占していることが分かります。専門家などにこのわけを取材したところ、北海道特有の事情があることが見えてきました。

①まず、北海道は寒冷地のため、水が凍らないように水道管を地中深くに通す必要があります。
②また、広大な土地に対して人が少なく、かつ点在しているため、長い水道管が必要です。
水道事業を維持をするのに莫大なコストがかかるという構造があるのです。


民間と交渉したものの・・・

こうした中、民間の参入を模索したものの実現しなかった羅臼町を取材しました。
知床半島の南北に60キロほど伸びる羅臼町では、およそ5000人が水道を利用しています。

羅臼町役場の技師・弓場俊希さんは、上司と二人で市内全域の水道施設の運営を担当しています。水源の清掃や水質管理のための移動だけで毎日2時間かかり、かつ、弓場さんが一人で行っているといいます。

羅臼町の技師・弓場俊希さん
「本来だったら水質担当、電気担当、機械担当と分かれるんですが、すべて担当しているのでギリギリです。カツカツの状態でやっていますね」。

法改正以前、町ではこうした水道事業を民間に委託できないか交渉したことがあります。しかし、話はまとまらなかったといいます。町の担当者に聞きました。

羅臼町建設水道課・平尾晃一係長
「日中の監視と夜間の監視も含めてお願いしたんですけど、とてもじゃない金額が出てきましたので、断念した経緯があります」


民営化どころでなく 深刻な現状

世界各地の水道事業に詳しい吉村和就さんは、北海道で水道事業を民営化する余地はほとんどないといいます。

世界各地の水道事業に詳しい吉村和就さん
「民間会社から見ると、北海道で興味があるのは札幌市だけなんですね。
つまり政令都市だけなんです。ここではやり方次第によって利益を生む可能性はあるんですけど、ほかはなかなか難しいですね」

水道民営化の法改正は、自治体の財政負担の軽減を目的に行われましたが、そもそも、民営化の余地はほとんど無いのが北海道の現実だったということが見えてきました。私たちの生活を支える水道は今後、どうなってしまうんでしょうか。

世界各地の水道事業に詳しい吉村和就さん
「これはもう本当に、あす水道事業がパンクしてもおかしくないという状況になっているわけですね。大変なんです、人は少なくなる、お金は入ってこない、老朽化したものはそのまま残っているということですから」

吉村さんは、引き続き自治体が水道事業を担っても民間事業者に託したとしても、今後、水道料金は2倍にはなってしまうだろうと見ています。

続いて取材班は、全国で水道料金がもっと高い夕張市に向かいました。実は、夕張市は、水道事業を民間事業者に委託しているんです。


民間に頼らざるを得ない

夕張市の浄水施設を訪ねました。この施設は4年前から民間企業が運営しています。最新機器を導入し、社員が、水質などを1つの画面ですべてモニタリング。
異常があれば遠隔で操作することもできます。

2006年に財政破綻した夕張市では、町単独で水道事業を維持できなくなり、民間企業に頼らざるを得なかったと言います。

夕張市土木水道課・松永和敬主幹
「財政破綻以降、職員の方が大量に辞めました。技術を持った現場の方も退職していて、ただ水道事業は継続していかなければいけないとなった時に、民間の力を活用しながら水道事業を維持していこうと判断したというところです」


水道をめぐる議論待ったなしの状況

道内ではこれまでのところ、自治体の水道事業が民営化されたケースはないので、どのような影響が出るかまでは、分かりませんでした。
ただ、取材を通して痛感したのは、北海道の場合、運営の主体が官であれ民であれ、そもそも水道網自体を維持できるのかという待ったなしの状況であるということでした。
シラベルカへの投稿によってもっとも身近なインフラが危機に瀕している実態が見えてきました。
この問題については、引き続き取材しますので、番組HPやFAXで情報やご意見を引き続き募集します。

札幌局大隅亮ディレクター 札幌局兼清光太郎記者

放送の動画はこちら↓


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