行方不明者の捜索や事件の捜査で大切な役目を担う警察犬。道内では現在、59頭の警察犬が活動していますが、オホーツク地方にいるのは人間なら70代にあたるシェパードの「ジョン」1頭だけです。年老いた体をケアしながら活動を続けていて、今月には7年目の任期が始まりました。
なぜオホーツクの警察犬は大ベテランの「ジョン」しかいないのか。そこには増やしたくても増やせない切実な事情があります。
(取材 北見放送局 新島俊輝)
オホーツクを担うベテラン犬「ジョン」
遠軽町で暮らしているシェパードのジョン。
10月で10歳、人間なら70代にあたる大ベテランです。
9月5日、オホーツク地方で1頭だけの警察犬の嘱託書が交付され、7年目の任期が始まりました。

ジョンの飼い主 菅生尚寿さん
「だいぶ年を取ってきているが、まだもう少し頑張ってくれそうなので、また1年、嘱託警察犬として頑張っていきたい」

ジョンは、ことしの警察の審査会でも確かな能力を見せました。
これまでも行方不明者の捜索や強盗事件の犯人の追跡などで力を発揮し、警察官は信頼を寄せています。
道警北見方面本部鑑識課 吉谷実波主任
「地面にある匂いをたどって追求していくが、姿勢を低くして匂いをとぎらせずに確実に追っていく姿勢が見えたので、そこが印象に残っている。ジョンがいれば心強い部分もあるし、一緒に行方不明者を発見できればと思う」

負担増もジョンに頼る その事情は…
ただ、ジョンも年齢的な衰えが現れています。
自宅では足跡をたどるトレーニングを続けていますが、最近は集中力が続かなかったり、後ろ足の力が弱くなったりしていて、ケアをしながら体力を維持していると言います。

オホーツク唯一の警察犬として役目を果たそうと頑張っていますが、夜間や早朝に出動を求められることもあり、ジョンや菅生さんの負担は大きくなっています。
ジョンの飼い主 菅生尚寿さん
「ほかの仕事を持ちながら嘱託警察犬をやっているので、時間がなかなか合わない。えさを食べてすぐ車に乗せるのもあまりよくないと聞くので、いつ出動が来るか分からないのは、犬にとっても負担がかかる」
オホーツクの警察犬はなぜ、1頭しかいないのか。
実は警察が飼育する「直轄警察犬」がいるのは札幌だけで、ほかの地域はジョンと同じく一般の人が飼う「嘱託警察犬」で広大な北海道をカバーしています。

しかし、オホーツクでは担い手を探すのが難しく、ピーク時に8頭いた警察犬は4年前から1頭だけになってしまいました。
菅生さんは警察犬のイメージも影響していると言います。
ジョンの飼い主 菅生尚寿さん
「よくテレビで見る腕にかみつく警察犬のシーンとか、あれが皆さん印象に残っていて、『おっかないからできない』という人が結構いる。でも実際、警察犬の活動は捜索が主で、その辺もちょっと分かってもらえたら」

ジョンだけに頼らない態勢づくりを
警察もこの状況を打開しようと動き始めています。
新たな担い手として着目しているのは、犬のしつけや育成を仕事にしている「訓練士」です。
来年の警察犬の審査会に向けて案内を送ったり、説明会を開いてPRしたりして、ジョンだけに頼らない態勢づくりを目指しています。
道警北見方面本部 佐藤敦次席
「事件発生、要請から1時間以内に現場に到着して活動できるような状態を作っていきたいと思っている」

道内5つの警察の方面本部で警察犬が1頭しかいないのはオホーツクだけで、それだけジョンと菅生さんの負担も大きくなっています。
菅生さんはオホーツクの警察犬は行方不明者の捜索がほとんどなので、難しく考えすぎずにぜひ仲間に加わってほしいと話しています。
高齢になってもオホーツクを守り続けているジョン。安心して役目を終えられる日が待ち望まれています。

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