NHK札幌放送局

森と動物つなぐ循環 札幌で学ぶ

道央いぶりDAYひだか

2022年7月28日(木)午後4時21分 更新

こんにちは!「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」リポーターの坂井里紗です。道央・胆振日高70市町村の魅力をお伝えしている「ななまるMAP」、今回は札幌市です。身近な自然について考えてもらおうというイベントが開かれました。私も参加しましたよ!

まず訪れたのはNHK札幌放送局から20分ほど離れた西区にある小別沢です。弱い雨が降る中、親子連れなど20人余りが集まりました。長袖長ズボンにヘルメットをかぶって森林を進みます。その先で木こりの足立成亮さんが森の話をしてくれました。足立さんによると、この森は50年ほど前にすべて伐採されてしまい、それから長い年月をかけてようやく元の姿に戻ってきたそうです。

outwoods 代表 足立成亮さん
「森は雨が降って最初に山にあたってそれからゆっくり流れて川にいって、畑に水が行って、僕たち人間もそれを飲んで、海に流れていって魚たちがいる海の健康を守っている。最初に雨が降る『森』をしっかり守って健康な状態にしてあげることが僕たち人間だけじゃなくて動物たちの生活環境を守る、健康を守ることにつながると思っています。僕がやっている林業はその役割がすごくあるんだろうなって。環境がよくなった先に何があるのかな、環境が悪くなった先に何があるのかなってことはみんながそれぞれの考えとか耳とか目で感じてみたらいいんじゃないかなと思っています。ただ僕が思う環境を守った先の林業のゴールは何かというと、自分の生活と森が常に一緒になっているような世界が札幌の街にもあると、きっとゴールなんじゃないかなと思っています」

ここでは今、健やかな森に育てていくために間伐作業を行っています。お話のあと、子どもたちを中心に伐採する時に出る枝やささを拾いました。大きいものも協力しながら集めていきます。

みんなで作業した結果、トラック2台分もの間伐材が集まりました。

この間伐材の行き先は札幌の子どもたちに親しまれている円山動物園です。

園内では運び込んだ枝やささを子どもたちが自然に近い環境になるように置いていきました。この枝やささ、誰がどうするのかというと…

現れたのはゾウです!森で集めた枝やささは実はゾウの餌だったんです。ゾウたちは鼻や足を器用に使って、太い枝もポキッと簡単に折って食べていきます。

動物園のゾウはふだん、栄養価の高い乾牧草やバナナやリンゴなどの果物を食べていますが、野生のゾウは枝やささを食べていて、肥満防止などの“いい影響”があるんだそうです。ゾウに大変詳しい円山動物園の野村友美さんがその“いい影響”について教えてくれました。

円山動物園 動物専門員 野村友美さん
「ふだんあげている乾牧草はゾウにとってはちょっと栄養価が高すぎてしまうものなので、乾草ばかりあげてしまうと太ってしまう。もう1つはいろんな行動を引き出すことができるのもすごくいいところです。枝を食べようと思うと、長いものだったらバキッと折るとか、葉っぱだけ落として枝を食べるとか、樹皮をはぐとか。ふだんあげている乾草とか果物だけでは見ることができない行動を見ることができるのもすごく大事なことで、それによっていろんな筋肉を使ったり時間をかけて食べたりします。枝葉の量はできるだけ増やしたいし、これからも続けてあげていきたい思っています」

話はここで終わりではありません。円山動物園にはふんをたい肥にする施設があります。このあと活躍するのが『ゾウのふん』です。
訪れたのは小別沢にある「さとやま農園」です。ここでは小麦やライ麦など栽培しています。ゾウのたい肥は上質で土を豊かにするんだそうです。

参加した人たちは1日かけて地元の森と動物園、畑をつなぐ資源の循環を体感しました。感想を伺うと、「人間でも折れないような太い枝を食べているのがすごいと思った」「山で枝を取って、それをゾウにあげて、その餌が循環して戻ってくるというのはふだん体験できないことなので、いろんなお仕事があるんだなと感じながら参加させていただきました」といった声が聞かれました。

NPO法人あおいとり 永田勝之さん
「リアルな世界を直接感じてもらうことができたらよかったなと思います。セッティングされた動物園の画面を見るみたいに動物を見るのではなく、きょうは画面から手を突っ込んじゃったみたいな体験をみんなでできたかなと思います。直接木に触って汚れるのはなかなかこのご時世する機会がないですよね。ゾウがきっかけでこういうことができたんですけど、今後もやりたいなと思います」

森と動物園を通して環境に配慮した循環型の仕組みを考えてもらうイベントについては、きょう28日(木)午後6時40分からの「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」でお伝えする予定です。ぜひご覧ください!

取材後記

私も子どもたちと一緒に泥だらけになりながら枝を集めたり、動物園では枝葉を食べるゾウを鑑賞したりしました。私たちが拾った枝やささがまさかゾウの餌になるとは驚きでしたが、なにより私たちの足くらいの太さの木も簡単に折ってしまう姿にはびっくりでした。円山動物園の野村さんによると、ゾウたちは枝葉なら何でも食べるわけではなく、毒性があるものや人間のように嫌いなものもあると教えてくれました。意外とグルメなんですね。
私たちが拾った枝やささは、最終的に私たちの食を支える大事な『たい肥』になりました。札幌にも山や森はありますが、森と私たちの暮らしがこんなにも密接しているというのはこのイベントに参加しないと気が付かなかったと思います。まずは自分の意識から変えていけば、こういう活動が徐々に増えていけば、足立さんがおっしゃるようにいつか森と自分たちの生活が一緒になる世界が札幌にもやってくるかもしれません。

道央いぶりDAYひだか
坂井里紗
2022年7月28日

前回伺った共和町では「らいでんメロン」を使ったお酒が完成しました。メロンの風味をフワッと感じられる、とても飲みやすくおいしい酒でした。こちらも併せてどうぞ!
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