NHK札幌放送局

エゾシロチョウが大量発生?北海道に生息する白いチョウの謎 シラベルカ#56

シラベルカ

2021年6月28日(月)午後5時18分 更新

皆さんは最近、たくさんの白いチョウが飛んでいるのを見たことはありませんか? 今回のシラベルカは、そのチョウの話題です。

投稿は札幌市の小学5年生、宇山響くんから。

「6月10日にエゾシロチョウが大量発生していました。なぜ大量発生したのか知りたいです」

響くんは、自他ともに認める昆虫博士。アゲハチョウを羽化させたこともあります。
家の近くの公園でたくさん飛んでいたことに驚いたといいますが、実はシラベルカには他にも同じような投稿が寄せられていました。

▼なぜ“大量発生”するのか

響くんが目撃したというエゾシロチョウ。ことしは各地で、特に“大量発生”しているのでしょうか?

同じように“大量発生”の目撃証言があった小樽市に向かい、昆虫に詳しい小樽市総合博物館の学芸員、山本亜生さんに尋ねました。

すると山本さんは、ことしは少し多いかな、と話した上で、こう述べました。

「多い年とか少ない年というのは毎年あるんですけど、特別大発生しているというわけではなくて、自然のサイクルの中での増減の範囲内かなと思います」

山本さんによりますと、エゾシロチョウは国内では北海道にしか生息していないチョウで、毎年6月中旬ごろに羽化します。

そして“大量発生”と感じる原因は、その生態にありました。

エゾシロチョウは桜やリンゴ、ナシといったバラ科の木の葉に100から200ほどの卵をまとめて産み付けます。卵からかえった幼虫は、集団で生活して大きくなります。

6月になると、さなぎから一斉に羽化して、飛び回ります。
その様子を目撃すると、“大量発生”しているように見えるといいます。

▼集団で生き延びる戦略

「でもなぜ、集団で成長するのだろう?」
投稿を寄せた響くんの疑問です。
私たち取材チームも、答えを知りたいと思うようになりました。

そこで北海道教育大学の非常勤講師で、図鑑『北海道の蝶』の監修もしている永盛俊行さんに伺うことにしました。

永盛さんは、3つの説を挙げました。

1つ目は、北海道の厳しい寒さを乗り越えるためです。
エゾシロチョウの幼虫は、木の枝についた、丸まった枯れ葉の中に集まって越冬します。密集することで互いの体温で寒さをしのぎ、さらに枯れ葉が枝から落ちないよう、みなで糸を吐いて、葉と枝を結びつけているというのです。

2つ目が、天敵のハチ対策です。
エゾシロチョウの天敵はコマユバチと呼ばれるハチで、チョウの幼虫の体内に卵を産みつけます。

卵を産みつけられたチョウは死にますが、たとえ何匹かがハチによって失われても、他の個体は生き延びられるよう、数多くの幼虫が集まって成長するのではないかといいます。

3つ目は、効率よく卵を産むためです。
エゾシロチョウが卵を産むのは木の葉です。一度、適した木を見つければ、葉はたくさんあるため、まとめて卵を産むことができます。
永盛さんは、母親が“面倒くさがって”、効率を重視して卵を産み付けているのではと説明してくれました。

「なかなかいい質問で、答えるのが難しいですね」
そう話した永盛さん。響くんも納得してくれたようでした。

宇山響くん
「詳しい説明でわかりやすかった。蝶が育つために工夫していることがいろいろあるんだなって知ることができた」

▼都市部に進出 

永盛さんはもう一つ、興味深い話をしてくれました。
エゾシロチョウを都市部で見る機会が多くなっている、というのです。

主に山に住むエゾシロチョウですが、1970年代ごろから徐々に街に降りてきて、生息域を広げてきました。
その原因が「餌」の変化です。山の中ではシュリザクラと呼ばれる桜の仲間の葉を主に食べていましたが、公園や街路樹に植えられている桜やリンゴなどの木を食べるようになってきたといいます。

その結果、エゾシロチョウも身近になり、見る機会が増えたというのです。

永盛さん
「生息する環境が悪くなって絶滅の危機に追いやられるチョウがいる一方で、エゾシロチョウのように人の生活圏にうまく適応して逆に勢力を伸ばすチョウもいるんですよね」

▼“毒”はない

でも、エゾシロチョウの幼虫は毛虫です。枝や葉に大量に集まっていることが多いので、見た目が気持ち悪いと感じる人もいます。しかし、毒は持っていないので、その点はご安心ください。

また、葉や花を大量に食べますが、木が枯れるほどは食べません。

そして発生を抑えたい場合は、冬に木の枝に残っている枯れ葉の中にエゾシロチョウの巣があるため、これを駆除してしまうのが効果的だということです。

▼身近な自然に目を向けよう

今回のシラベルカ、響くんの投稿があったからこそ始まった取材でした。

私たちも町なかで“大量発生”を見ていたのかもしれませんが、特に気にとめていませんでした。身近な木にも必死に生き延びようとするチョウがたくさんいるかもしれないことを学びました。
北海道の初夏の風物詩、エゾシロチョウ。来年以降、楽しみにしたいと思います。

取材チーム
NHK北見放送局 カメラマン 伊勢谷剛史
NHK札幌放送局 ディレクター 栁沼玲花


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また、北海道のほかの生き物についても取材しています。

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