NHK札幌放送局

道北オホーツク地域の課題 「鉄道・交通インフラ」をどうする

道北チャンネル

2022年10月28日(金)午後0時00分 更新

ことしは日本に鉄道が開通してちょうど150年。鉄道は北海道の発展に貢献しましたが、いま人口が減り続け、マイカーが増え、高速道路などが整備され、取り巻く状況は厳しさを増しています。道北オホーツク地域の鉄道、公共交通をこれからどうすべきか。道北オホーツク地域の課題を議論する「ほっとフォーラム道北オホーツク・鉄道を考える」で、自治体、道、専門家の皆さんとともに考えました。( 放送:2022年10月 道北オホーツクエリアで10月29日(土)午前9時から再放送の予定) 


こちらが道北オホーツクの鉄道地図。

2つの路線が中心です。まず旭川から名寄を経由して稚内へつなぐ、いわば「北海道の背骨」宗谷線。そして上川から網走に伸び、収穫したタマネギを運ぶ通称「タマネギ列車」と呼ばれる貨物列車が運行されている、石北線。それぞれ200キロメートルを超える距離を走ります。宗谷線は全線開通して今年で96年。そして石北線は全線開通から今年でちょうど90年になります。

北海道が公表している昨年度の線区別の収支です。営業損失は赤字額。輸送密度は1日に平均何人を運んだかを示します。旧国鉄の民営化の際には輸送密度「1日4000人未満」がバス転換の目安の1つとされました。2つの路線を見ると…
・宗谷線、名寄から稚内:営業損失およそ28億円、輸送密度、1日あたり174人
・宗谷線、旭川から名寄:営業損失およそ32億円、輸送密度、1日あたり845人
・石北線、上川から網走:営業損失およそ37億円、輸送密度、1日あたり420人
JR北海道は「新型コロナウイルス感染症の影響を引き続き受けて厳しい状況になっている」としています。

議論に参加される皆さんには事前に「道北オホーツクの鉄道の今の危機的ともいえる状況をどう考えているか」お話をうかがっています。
まず道北・名寄市長の加藤剛士さんです。

【名寄市長・加藤剛士さん】宗谷本線は沿線が12の自治体で構成されておりますけども、宗谷本線を維持存続する、さらには活性化させるための広域の協議会がございまして、こちらは沿線以外も含めて26の自治体が参画をしていただいています。沿線だけでなくて道北みんなの総意で、この宗谷本線は残していかなければならないという思いで様々な運動を展開しているところです。

オホーツク・遠軽町長の佐々木修一さんです。

【遠軽町長・佐々木修一さん】遠軽町の役割は、オホーツク地域の約半分を占める遠軽・紋別地方の医療ですとか教育・商業の中心としての役割が一つございます。その駅前のやはり中心市街地の活性化というのは非常に重要なことになっておりまして、それにやはり石北線の存続が必須であると考えています。

次に北海道の交通企画監、宇野稔弘さんです。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】ロシア国境に接する宗谷線、それからタマネギ列車のお話もありましたけれども農産物を輸送する貨物を担っている石北線。この両線につきましては、地元の方と連携して利用促進のための取り組み、観光列車の取り組み、それから車内販売など、多岐にわたる取り組みをしておりますし、JR北海道それから自治体の皆さんともアクションプランを個別に作成して、利用に向けた取り組みを一層進めているところでございます。JRの魅力を絶対に守るのだと、地域の皆様の熱い声を踏まえながら、いま一生懸命取り組んでいるところでございます。

地域振興や地方鉄道に詳しい、日本総研・主席研究員の藻谷浩介さんです。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】札幌近郊区間も廃止にするのか、ましてやその北海道新幹線が大赤字で、新しい線として押し付けられてきてるわけですから、それも廃止にするのかということになります。でもその前に、そもそも旭川から遠軽に行っている高規格道路、あるいは今途中ですけども旭川から士別まで行っている高規格道路、あれは大赤字ですよ。廃止したらどうでしょうか?赤字だと廃止するのか、黒字じゃないと残さないっていうと、道路は全部廃止になってしまいますよ。学校もついでに、小学校も全部赤字ですから、廃止するのですかね。つまり交通というすごく基本的なことについて、赤字か黒字かで、民間企業が見られないなら廃止というのはおかしいでしょって。これは道ではなく国の責任であるというのが私の見解です。

国の検討会「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」座長で東京女子大学教授の竹内健蔵さんです。

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】危機というよりはむしろその自分たちにとって望ましい公共交通を考えるための絶好の機会であると、むしろ前向きに捉えてもらいたいと思っています。今は非常にIT技術の進展などもあり、非常に多様な選択肢があるわけですから、そういう中で一番その地域にとって望ましいものが何かっていうことを皆さんに考えていただく。その時に国も一生懸命応援をしてそういうものを見つけ出すために一緒に考えていきましょうということだと思いますから、そのようにして国も応援していってくれるのではないかなと考えております。


こうした地方の鉄道の厳しい状況は、北海道だけの問題ではありません。竹内さんを座長とする国の検討会が、この夏、提言をまとめました。「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言~地域戦略の中でどう活かしどう刷新するか」というタイトルでまとめられています。
検討会はまず国鉄改革から35年が経過して次のように「状況が大きく変わっている」としています。

人口減少やマイカー利用の増加で鉄道の利用客が大幅に減り、大量輸送機関としての鉄道の特性が十分に発揮できない状況になっている。
そして、鉄道の減便や投資抑制などで公共交通としての利便性が大きく低下し、更なる利用者の逸走を招くという負のスパイラルになっている。
また、アフターコロナにおいてもコロナ以前の鉄道利用者数まで回復することが見通せず、事業構造の変化が必要になっている。

検討会の資料で、北海道の鉄道を取り巻く全体状況を見てみます。

国鉄がJRになった1987年度と、2020年度を比べると、人口は566万から521万とおよそ8%減っています。
自動車の保有台数は163万から286万とおよそ1.8倍に増えています。
また高速道路や自動車専用道路など高規格幹線道路は、167キロメートルから1183キロメートルとおよそ7倍に増えています。

取り巻く状況が変化する中で、北海道の鉄道は大きく変わりました。「路線図どう変わった?」というNHKのサイト。こちらのサイトではこの40年間ほどの北海道の鉄道の「路線図」の変化をみなさんが体感できるようになっています。国鉄時代に北海道の隅々まで走っていた鉄道は、この40年で次々と廃止、バスに転換されています。

検討会は提言がこちら。

提言では「目安として輸送密度が1000人未満の区間を対象に、国が中心となって沿線の自治体や鉄道事業者などが参加する新たな協議会を設置すべきだ」としています。
協議会での議論は路線の「存続」や「廃止」を前提とはしないものの、利便性や持続可能性の向上が見込まれる場合には、廃線によるバスやBRTなどへの転換や、自治体が線路や駅を保有し、鉄道会社が運行を担う「上下分離方式」など、運営方式の見直しも含めて検討するよう求めています。
一方、特急列車が都道府県庁所在地など拠点都市をつなぐ区間や、貨物列車が重要な役割を果たす区間は対象としないということです。
輸送密度「1000人未満」となると、宗谷線、石北線とも全線含まれますが、両線とも特急列車が走っていて、貨物輸送を行っている区間もあります。

国の検討会座長の竹内さんにお越しいただいていますが、提言としては個別の線区を示していませんが、宗谷線、石北線は「国が中心となって沿線の自治体や鉄道事業者などが参加する新たな協議会を設置すべき」対象なのでしょうか?

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】そこが非常に誤解を招きやすいところなのですね。その1000人っていうのはあくまで目安であって、基準とか境界値ではないということを明確にしておきたい。つまり1000人という境界値を超えているから、もううちの路線は安心だ、と、もうこれで何もしなくても存続するよと思われてしまうのも困りますし、また逆に1000人を下回っているから廃止反対運動しなきゃいけない、というものではないというわけ。むしろ1000人という数字を超えていても、本当に今の状況で自分たちが一番いいことなのだろうか?もっといろんなやり方あるのじゃないかっていうことを考えるような地元の方がいらっしゃれば、どんどんそれは協議をしていって、より良い輸送のモードや色んなそのモデルを選択していけばいいというふうに考えているわけなのです。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】この提言と我々の考え方は同じ方向性を向いているなという風に理解しています。北海道の状況を見てみますと、JR北海道の単独では維持困難な線区ということで、すでにJRの経営問題というのは6年前から色々議論されておりまして、その中で既に国の方から経営改善に向けた監督命令というものが発出されております。こうしたことから私どもとしては既に全国よりも厳しい状況の中で沿線自治体の皆さんの協力を得ながら、経営改善に向けた取り組みを共に行っているという風に思っておりまして、今後とも引き続き検討していく、利用促進に取り組んでいくという姿勢には変わりございません。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】この有識者会議のご提言は非常にリーズナブルで、ちゃんと考えましょうということでいいのですが、一点だけ私が引っ掛かっているのは、そもそもJRを分割民営化した時に、北海道と四国は成り立たないということは明らかであったために、「三島基金」というものを作り、その運用益で支援するという、つまり国が責任を持って赤字を補填しますという仕組みでスタートしていることなんですね。その点が他の地域のローカル線と違いまして。ところがゼロ金利政策の結果、三島基金の運用益はありませんのでJR北海道を助けてくれる人はいない。だったら自治体と道と市町村とJRさんで話し合いなさいって。これはよく考えてみると、行ってらっしゃいと言っていてあとは知らないよっていうことになりますでしょ。こと北海道というロシアに面した地域において、国はそれでいいのですか?有識者会議の話は妥当なのだけど、それと別に大きな問題としてあると思います。


鉄道をめぐる状況が厳しさを増すなかで、自治体や道は様々な取り組みを行っています。まずは名寄市の取り組みについてご紹介します。名寄市が、市の負担でJRの駅を移設しました。

こちら名寄市の名寄高校は最寄り駅の「東風連駅」とおよそ1.6キロ、1600メートルほど離れていました。

そこで市は、通学する生徒の利便性向上のため、ことし3月、市のお金で、駅を名寄高校の校門のすぐそばに移設しました。駅から高校までの距離はおよそ200mになりました。駅名は「名寄高校」駅になりました。

名寄市では「名寄高校駅」が親しみをもって利用されるよう市内の中学・高校に通学する生徒を対象に愛称を募集しました。愛称は高校生の発案で、こちら「Nステ」に決定しました。国の検討会でも「生活路線としての機能を向上させて地域住民の利便性を確保している例」として紹介されています。

【名寄市長・加藤剛士さん】名寄高校の南1.6キロに東風連駅がありました。で北に行くと2キロ先が名寄駅ということで、その間ということだったのですけども、特に冬が大変厳しくて、吹雪とかだと本当に子供達が可哀想で。結構道路も交通量が多いものですから危険性も指摘をされていたところであります。名寄高校に駅を東風連から移すという案が持ち上がって、まずは子供達に全校調査アンケートを取りました。その結果、東風連から名寄高校の前に移設すれば相当数乗降客が増えるということがある程度分かりましたのでJR北海道さんにこのプランを相談させていただきましたが、JR北海道さんも非常に前向きに、かなりあのスピード感を持って対応して頂きました。ただなかなか経営状況が厳しいということでありますので、移設費用は我々が、そして今回は北海道さんにも実は一部ご理解をいただいてご負担もいただいて、約6千万の移設費用を自治体で捻出。ただダイヤを変えるってことはかなりJRさんも費用がけっこうかかるのですね。システムだとかいろんなダイヤの調整だとか。そこはそうは言っても前向きにやりましょうということで開業しました。もともと旧東風連駅は1日8本の列車しか乗降していなかったのですけど、JR北海道さんのお計らいもあって、快速列車もすべて新設の名寄高校駅に停めましょうと、1日24本の列車が停まる。この4月から旧東風連駅時代と比べると乗降客数は6倍に増えたということであります。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】これぞまさに有識者会議で皆さんがおっしゃっていたことの非常にいいモデルですよね。この駅が作られたのが戦前ですから、現状の中心と全くズレてるという場所、今私がぱっと思い付くだけでも、苫小牧の沼ノ端のところとか、ショッピングセンターの真横に鉄道が通っているのに駅がない。病院の真横に通っているのに駅がないという例が多いわけです。非常にもったいないのでございまして。これは全国の鉄道がとっくに見直さなくてはいけない部分。よくぞ名寄市と北海道も汗をかいていただいたし、道内にもまだ何十か所もこういう場所はあるのではないでしょうか。

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】鉄道をどうこう考える前に、まずどのようなまちづくりをするのかということが一番大事なことなのですよね。名寄高校駅の取り組みというのは、その高校生にとっても望ましい通学のあり方、移動のあり方が何であるかということを考えること、それが目的であって、その手段として鉄道がどう使えるかということを、ちゃんと手順を踏んで考える非常に良い事例だと思うわけです。ですから、このように鉄道を残すという手段を目的化しない、あくまで自分たちのいい移動の手段は何かを考える上で、鉄道をどう使うかを考えていることが大事だと、そういうことが分かる良い例だと思っています。


続いて遠軽町の取り組みについてご紹介します。

遠軽町では鉄道利用促進のための助成金を出しています。まず「町民の団体」に対して。町民5人以上のグループで鉄道を利用する場合、1グループ3万円を上限に鉄道利用額の半額を助成します。
そして「町民以外のかた」に対しても。石北本線を利用して遠軽町に来町し、町内のホテル・旅館等に宿泊した方に対し、往復なら4000円、片道なら2000円助成します。

そして、ことし8月にはJR遠軽駅の駅前に「芸術文化交流プラザ・メトロプラザ」を作りました。吹奏楽が盛んで「吹奏楽の街」と呼ばれる遠軽町の新たな拠点。遠軽駅から雨や雪に濡れずに直接アクセスできるようになっています。ご覧のように、芸術文化交流プラザ・メトロプラザは線路のすぐとなり、遠軽駅とつながっているような場所に作られています。

【遠軽町長・佐々木修一さん】利用助成の補助金の方は、石北線沿線の各町さん様々なことをやっております。またみんなで協力して車内販売。これは北海道庁さんも入って、それから北見市とか遠軽町だとか美幌町、女満別、網走市とかが日にちを決めて各町村アイデアを出して、またみんなで連携してやったりしているのが一つ。それから遠軽町は吹奏楽が盛んで、つい先日、札幌の全道大会で、野球で言えば甲子園ですね。そこに遠軽高校が道内2校中、10回目になる全国大会出場を決めました。市民ホールなどを作る時に、やっぱり用地の選定で様々な議論がありました。もうちょっと広いところがいいのではないかと、敷地のですね。だけど私の方はやはり駅と直結して、中心市街地の活性化もあって、そういったところに音楽ホールを。ホールは吹奏楽に振ったホールを作ろうということで決断をしました。これからさらに、そこからバスターミナルまで結構距離があるのですが、駅前をまた再開発しまして、バスが直接乗り入れられるというような形にして、駅をまた中心としたまちづくりを復活させたいなと思っているところです。さらに吹奏楽は、例えば北見や近隣の街からもこのホールで一緒にうちの高校生とかも石北線に乗って、そしてその日で帰ることもできますので、そういった利用もどうだいということで、実は遠軽町外のまちからも今お話をいただいたりしておりますので、非常にこれからまた利用が増えればいいなと思っております。


続いて道の取り組みを見てみます。

北海道では公共交通の利用を促進するためのキャンペーンを行っています。北海道が補助金を出し、交通事業者が鉄道やバス、タクシー、フェリー、飛行機の割引乗車券などを、通常よりも「最大で50%」割引して販売。たとえばJR北海道の在来線の特急や普通列車、JR北海道バスが6日間乗り降り自由なきっぷ、周遊パスが12000円で購入できます。(※割引乗車券の内容や販売状況は交通事業者の販売窓口やホームページなどでご確認ください)

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】長引く新型コロナウイルス感染症の影響があり、JRのみならず、全ての交通事業者さんが非常に厳しい中で何とか公共交通の利用促進を少しでも戻したいという思いで始めた取り組みで、公共交通へのいざないという意味でも非常に効果的な政策になっており、非常に今人気があって売れております。


加えて事例で言いますと、オホーツク管内で、いま乗合バスが非常に厳しいということもあり、夏休みの期間16日間、お子さんと大人が一緒になれば乗り放題にする「ちびっこフリーパス」というのをやりました。これは大きな予算を使った訳ではありませんが、アイデアを凝らして地域のバス事業者さん全ての方にお話をして参加していただいたもので…

ここで宇野さんがお話されたのは、この夏、オホーツク管内に住む小学生以下のかたと、一緒に乗る大人・中学生以上のかたに限って販売されたフリーパス。乗合バスの路線などが500円で16日間乗り放題です。路線には、木の遊園地、交通記念館、おもちゃワールド、ふれあい牧場などがあり、車に乗らないおじいさんおばあさんが孫を連れていくのにちょうどいいのではと企画されました。ソフトクリームなどもフリーパスで割引購入できます。この取り組みは3年前の2019年に始まり、おととし、去年はコロナで中止され、ことしが2回目でした。前回2019年の利用者アンケートによると、およそ9割のかたは、普段はバスを利用しない、いわば「新規の顧客」だったそうです。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】これはほとんどお金がかかっておりませんので。つまりパスを買っていただいて、それでバス会社が普通に運行しているだけのことなので、やる気とアイデアがあればまだまだいろんな地域でやれる可能性があると思います。


今後を考えるために、現状をあらためて整理します。

北海道の鉄道を取り巻く状況で「人口」は減少し「自動車の保有台数」は増え「高速道路や自動車専用道路など高規格幹線道路」が増えてきたことをお伝えしました。
このうち高規格幹線道路は今後どうなるのか。

こちらは鉄道の地図です。ここに道北オホーツク地域の「高規格幹線道路」と「地域高規格道路」の整備状況を重ねます。

点線の部分は事業中や計画中です。稚内や網走まで、鉄道にほぼ沿うように整備が進んでいる状況です。

高規格道路の整備で、鉄道とバスの所要時間の差がすでに縮まっています。

稚内・札幌間では、鉄道の特急列車とバスの所要時間の差は現在およそ40分間です。本数はバスが多く、往復料金ではバスがおよそ2000円から3000円安くなっています。

そして名寄・札幌間では、所要時間の差はおよそ1時間。今後、高規格幹線道路がさらに整備されれば、所要時間の差もさらに縮まる可能性があります。
今後、高規格幹線道路が整備され、バスの利便性が高まると、あらためて鉄道とバスをどう考えるかということにもなってくるのでしょうか?

【名寄市長・加藤剛士さん】まず留意しなきゃならないのが、先ほど稚内・札幌もありましたけども、稚内と札幌は直通です。どこもとまらないですね。しかも留萌回りなのですけどね、バスは。例えば鉄道は名寄も士別も旭川もとまります。そしてこの所要時間なので。まず乗降客数からいっても全然比較にならないので、単純な比較はちょっとできないのかな。その上で稚内と札幌の間での利便性はどうかを考えると、やっぱり鉄道も直通は1本しかないっていうことなので、利便性としてはどうなのか。かつてはずっと4本の特急が直通で往復していましたが、3本になり、2017年、平成29年のダイヤ改正の時に3本のうちの2本が旭川から乗り換えになった。ひとえにやはりJR北海道の経営が厳しいという状況の中で、なかなか保線の問題とかもあり、こういう事態になったということであります。高速大量輸送の鉄道なのですけれど、こう利便性が損なわれていくと、どんどん乗降客数も減っていくという悪循環になっているなと思っていて、ここは高速化も含めて改めて特急本数を元に戻してほしいと。今1本ですけど3本に直通を増やしてほしいということと、最近冬もよく止まることがあるのですけども、保線とかもしっかりしていただくように、強く今協議会の中でもJR北海道はもちろんですけども、関係各所に要望しているところです。やはり鉄道でしかできない大量輸送というのがありますので、鉄道の意義はこれからも重要だと思っています。

網走と遠軽の事例をご紹介します。

網走・札幌間です。所要時間の差はおよそ40分間。本数はバスが倍以上あり、往復料金はおよそ5000円安くなっています。

遠軽・札幌間は所要時間の差はおよそ13分間。時間的には大きな差がなくなっています。

【遠軽町長・佐々木修一さん】まずこの問題については、私どもの地域に限っては役割が全く違うということです。これは高規格道路については「命の道路」ということで位置づけして整備をお願いしているわけです。命の道路は何かと申しますと、遠軽の厚生病院があり、ここは遠軽から紋別市、オホーツクの半分は遠軽・紋別地方ですね。ここの拠点病院として脳梗塞、脳疾患などそういったものも以前は遠軽で全部手術をしておりました。それが今は常勤医がいないということで、北見に運ばなければならない。時間は全く逆転します。車の方が当然早いので、JRでは全然これはもう救急には対応できません。これが一つですね。JRの役割というのは高速大量輸送で、北見の玉ねぎをはじめとする輸送という意味で全く違うものとして役割があると位置づけております。

では札幌・遠軽間の所要時間が鉄道とバスでほぼ変わらないと言ってもいいような状況にはなっているけれども、そこが議論ではないと?

【遠軽町長・佐々木修一さん】そうです。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】この議論からやっぱり大きな不利になっているのは旭川ですよね。つまり札幌に直行するバスって旭川はとまりませんので。かつて旭川が北海道の北半分の拠点だったわけですけれども、どんどん通過してパスされていく。同じく名寄も名寄以北の拠点だったのですけども、名寄を通らずに高速で移動してしまう。便利なように見えてバスって飛行機みたいなのですね。始点と終点しかなくて、間の、人が動いていくメリットが考えられていない。鉄道は(メリットが)少ないようでいて意外に特急に乗ってみますと、稚内、名寄、旭川とか、士別から深川に行くとか、そういうような移動が自由にできるところに実は大きなメリットがある。と同時に、そういうことがあるために旭川の拠点性もあります。それを全部、はるか6時間離れた札幌に直結すればいいという考えは、北海道全体の発展としては決して望ましくありません。
話の根本に戻ると、バスは道路、高規格道路の上を走っています。これは多大な税金を使って命の道路として守られている道路なので、バスはそれを無料で使っているわけです。鉄道は自分の路盤整備を自社負担でやっているわけですから、これは同じ土俵の比較になっていない。この表は実はインチキなのです。でもその割に料金があんまり違わないのは驚きですけどね。道路はタダで走れているわけだから、もっと違ってもいいはずなのですね。
北海道よりももっと人口密度の低い、例えばイギリス、あるいはデンマークはもっと低いのですが、そういう所で幹線鉄道が廃止せずに走っています。理由は、鉄道と道路は同じように国の税金で整備する。税を使って整備をしておいて、その上を運行する部分はバスにしろ、鉄道にしろ、民間で、補助金もあるかもしれないけども基本的に頑張って採算を取ってくださいというスキームになっています。上下分離ですね。このやり方をきちんとすることでこの競争をもっとフェアになるし、稚内とか名寄の途中に寄る人の利便もたった鉄道とバスのすみ分け、自家用車とのすみ分けはできるはずなのですね。

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】都市間の拠点輸送はもう皆さんおっしゃったことでいいと思うのですが、いま見落とされているのは生活路線でのバスと鉄道の関係っていうところもですね、そこも話しておきたいと思うのです。昔はバスと鉄道は、そこそこ、人口が多かったわけですから競合関係、競争関係にあった。ところが今これだけ人口減少してきてしまうと、もう連携していかなきゃいけない時期になっているわけですよね。事例としては例えば、JR四国の牟岐線と、徳島バスっていうバス会社があって、今はダイヤ編成と運賃が共通で行っているところがあるのですよね。昔なら競争関係で競争を大事にする独占禁止法で違法行為になるのですが、特例として認められていると。そのように環境が変わってきているわけですよね。バスと鉄道という同じようなものを、両方二つを組み合わせることによって、より良い交通のその手段を見つけ出す、今そういうアイデアも出てきていますから、参考にしてどれがいいのかを考えていったらいいと思います。


ここで一歩引いた目からヒントを探せないかと思います。「忘れていませんか?道北オホーツクの鉄道の可能性」。
きょうお集まりのみなさんの中にも、鉄道に乗ること自体が好きとか、オホーツクのこの場所の車窓の景色がお気に入りとか、論理や理屈ではない感情の部分から、あまり注目されていない、気づかれていない、道北オホーツクの鉄道の魅力や利便性があるのではないでしょうか?
まず竹内さん、「学生時代に当時の国鉄全線に乗車した」そうですね。

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】そうですね、まだ北海道の路線が網の目のようにあった時、それを全部乗ったことになるのですけれども。私自身、記憶にあるとすれば、石北本線の場合ですと「常紋越え」という、当時の常紋信号所の周辺で、いわば秘境の駅に近いと思うのですよね。四国には「坪尻」という有名な秘境駅があるのですけども、それに勝るとも劣らないような好きな情景でした。あと宗谷本線ですと、抜海、南稚内の辺りの利尻富士が見える光景とか、天気が良くなければしょうがないですが、それからあとは、湧網線から見るサロマ湖の美しさ。それから興浜北線・南線って昔あったのです、北見枝幸の方にありましたけど、あの辺のオホーツクが見える光景。あとは、鉄道が好きな人の感動だと思うのですが、中湧別から湧別方面に行くのと、網走方面と興部方面に行く線路がきれいに3つに分かれるのですよ、あの光景がすごくは印象に残っていまして、鉄道好きにしか分からないことかもしれませんが。でもいま鉄道の好きな人って結構大きい需要がありますから、そういうものをうまく取り込んでいけば、すごく観光資源になると思います。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】私は旅行ファンなので、鉄道以外にも車も乗りますし、北海道は7~8割自転車でも走っています。同じ景色をどれで見ると一番感動的か、抜海のところはもちろん車でも行けて利尻山が見えるのですけど、やっぱり鉄道で通った時に、たまに何回かに一回利尻山が見えた感動が、なぜか明らかに大きいのですよね。これ僕だけかなと思ったのですけど、世界中でその遊覧鉄道・観光鉄道って走っていまして、ニュージーランドとか色んな国で乗ったのですが、やっぱり面白いもので、同じ景色を電車から見ると感動するのはどうも世界共通のようですね。どうしても鉄道の方が古いので、今では作らないような海岸沿いだとか山奥に線路が通っているために、景色が鉄道の方が道路よりもきれい。高速道路よりもずっときれいという場所が大変に多い。鉄道沿いって本当にその地域の古いものが見えてしまうので、発見するとこれは素晴らしいねという人は、むしろ若い人に多い。同じように外国人に多い。台湾の方とか、むしろ日本人よりも北海道の鉄道に詳しかったりします。そういう新しく生まれてきた人の意見って大事ではないでしょうか。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】JRに乗って蛇行する美しい天塩川を見ながら稚内に着いて、次の日は(バスで)美しいオロロンラインを下ってくる。行きはJRに乗って帰りは逆に日本海側回って雄大なオロロンラインを走るというような取り組みをやったことがあります。その時に「見える風景がまったく違う。双方の雄大な風景を楽しめた」とのご意見がありました。交通モード間の連携という中で、もっともっと魅力を発信できる地域っていうのがあるのではないかなと思っております。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】稚内から遠軽までのバスも素晴らしそうですけどね。オホーツク海沿いの景色と。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】オホーツク海側も本当に綺麗なラインになっていますので、今そこをどういう風にうまくつなげるかによって可能性は十分に広がると思います。

そのオホーツク海側の町長の佐々木さんは、お父さんが上湧別町長で、当時、名寄線存続を訴える姿を間近で見てきたそうですね。
佐々木さんも鉄道に縁は感じますか?

【遠軽町長・佐々木修一さん】私、先ほどの話にも出ましたが、中湧別の駅から遠軽駅まで汽車通学生でした、高校のとき。結局なくなっちゃったのですけどね。
うちの親父がハチマキ巻いて、名寄本線存続という写真を、実は石北線の問題が出た時に町の人が持ってきてくれた。

【遠軽町長・佐々木修一さん】いやあ、まさか親子二代で国鉄・JRの問題に取り組むようになるとは全く思っていませんでした。やはりどんどんまた人口が減っていく、人口が減るからコストが合わないのでなくしていく、この繰り返し。私たち北海道のような各町村間、市町村間がえらい距離が離れていて、本州とか都心部と違って、そういう所で一緒に競争して頑張れと言われても、本当に難しい話で。うちの親父もそういう意味で、名寄本線、その前に湧網線もなくなったのですけど、悔しかったのだろうと思う。絶対石北本線は残すということで、頑張りたいと思います。

【名寄市長・加藤剛士さん】今もラッセル車が走っていまして、名寄のある地点ではラッセル車が豪快に雪をかき分けるところを見られるスポットがあります。前の日に雪が降って、次の日に晴れたりするととんでもない数の人が集まるわけですよ。排雪一つにしてもこれは魅力的な観光コンテンツにひょっとしたらなるのかもしれない。名寄は本当に雪深くて、雪質日本一を売りにしているところであり、鉄道と冬のあり方というもので、何か大きなつながりができれば面白いかと。


最後に、今後の議論で何が重要かを考えていきます。皆さんには事前に「道北オホーツクの鉄道をはじめ地域の公共交通を育て生かしていくために何が最も大切か」お話をうかがっています。
名寄市長の加藤さんです。

【名寄市長・加藤剛士さん】例えば名寄から公共交通機関を使って旭川空港に行くとすると、まず旭川駅までJRで行きますね。概ね1時間から1時間半ぐらいかかります。待ち合わせがあってそこからバスなのですね。バスは市内を通って空港まで行くバスで約40分かかります。すごい時間がかかってしまうわけですね。これがもし空港までJR直結で行けると、少なくとも30分かそれよりも早いくらいの時間の短縮になる。これはもうJR宗谷本線の意味そのものが変わるぐらいのインパクトがあるのでないかと思っていて、ビジネスユースはもちろん、観光の面でも様々な可能性が広がってくるのでは。これは宗谷線だけでなく石北線にも同じことが言えるのではないかと思っていて、この鉄路乗り入れはぜひ、お金がかかることではありますけども、地域としても要望の声を強くあげていきたいなと考えます。

遠軽町長の佐々木さんです。

【遠軽町長・佐々木修一さん】広大な面積を持っている北海道に人口が点在しているから一次産業で日本に貢献していると私は考えております。そこを全て、コストだけで考えて切っていくのなら、これは果たしてそういう日本でいいのかということを、まずそこからしっかりと考えていかなければ、この問題だけJRの問題だけでなんとか取り繕っても対症療法ばっかりで根本的な問題解決にはならないのではと思っています。人口が減ったからインフラがなくなってきますよ、それでどんどん地方が寂れていって、しまいに一次産業も作れなくなってしまうということを非常に恐れております。

北海道の交通企画監、宇野さんです。

【北海道交通企画監・宇野稔弘さん】我々行政側がいろんなアイデアを考えても、事業者さんがいなくなっては交通行政そのものが成り立ちませんので、事業者さんをいかに守って成果を出すかということが頭の中にあります。道内の空港をいかに活用して、二次交通である鉄道やバスに促していくか。双方が協力し合わなければ成り立たない政策はいっぱいありますし、今インバウンドの方も非常に明るいデータが出始めています。こういった取り組みをぜひ二次交通であるJRやバスにうまく繋げて利用促進をしていきたい。

日本総研主席研究員の藻谷さんです。

【日本総研主席研究員・藻谷浩介さん】非常に生臭いことを申し上げて申し訳ありません。交通と教育と、あるいは病院といったものは地域が努力するのは当然として、国全体として国税を使って整備する、これは世界の常識。150年かけて、こうやって作り上げてきた北海道は、日本国全体の財産であると同時に宝ですので、当然道民の皆さんだけではなく、道民じゃない人間も自分たちの税金が使われるということについてもっと意識を持つべきだ。道内だけで議論するべきものと、国全体で考えるべき話がちゃんと一緒になって議論されていないところにこのJR北海道の問題があるということを私はぜひ申し上げておきたい。北海道は日本の宝だし、アジアの宝です。

国の検討会座長で東京女子大学教授の竹内さんです。

【東京女子大学教授・竹内健蔵さん】その地域で、例えば観光資源がどういうものがあるか、それがあるかないかとか、通学輸送の規模がどのくらいあるか、その財政余力が実際どれだけあるか。豪雪地帯であるかどうか。そういう地理的な状況ですね。そういうものに加えて何よりも一番大事なのが地元の方々がどういう移動の手段、モビリティを求めているのかが一番大事であって、これは本当にバラバラであって、道北オホーツク地域の中でも違うのが普通ではないかと思うわけです。そういういろんな状況がある中で、様々なその制約条件があって、自分たちに何ができて何ができないのかってことをしっかりと整理をするということですよね。様々な制約条件の中で、これはできる、あれはできないっていろいろ考えた中で、一番自分たちがほしい移動の手段って何だろうってことを考えてもらうということだと思うわけです。

道北オホーツク地域の課題をみなさんと考える「ほっとフォーラム道北オホーツク」。きょうは皆さん、どうもありがとうございました。

(進行:堀 若菜キャスター)
(データプレゼン:工藤恵里奈キャスター)

NHKでは、高齢化や人口減のなか、交通基盤や医療体制などをどう整備すべきかなど、道北オホーツク地域の課題の解決に向けたヒントを探る記事を掲載しています。

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NHK旭川では、道北オホーツク地方に関連する番組のご紹介はもちろん、道北オホーツクの廃線になった鉄道を振り返る「懐かしの鉄路」、自治体の広報担当者が自ら撮影した地域の旬の話題「ふるさと自慢」、地域でがんばる事業者を応援するプロジェクト「コロナに負けない」、プロバレーボールチーム・ヴォレアス北海道の選手たちの素顔に迫る「推しヴォレ」、家族で楽しめるさまざまなスポットを紹介する「キッズとおでかけ」、地域の課題の解決に向けたヒントを探る「地域の課題」などのコンテンツを発信しています。
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