NHK札幌放送局

なぜ北海道で赤潮が 道東太平洋沿岸で深刻な漁業被害

ほっとニュースweb

2021年10月11日(月)午後3時59分 更新

太平洋沿岸で、秋サケやウニなどが死ぬ被害が相次いでいます。その原因とみられているのが赤潮です。赤潮といえば、起きるのは西日本が中心で北海道ではほとんどみられたことがありません。

「生きているウニがいない...」えりも町

えりも町東洋地区の沿岸で、10月7日、漁業者3人が海に潜りました。ウニの漁場を調査するためです。

水中調査を行った漁業者 下山さん
「ウニは全くおらず、全滅したと思った。元に戻るにはかなり長い時間がかかると思う。小さいウニを放して何年もかけて徐々に育てていくしかないと思う」

水深3メートルから12メートルのあわせて6か所の漁場を調べた結果、生きているエゾバフンウニは確認できなかったということです。

えりも漁協によりますと、9月20日ごろから、えりも町の海岸で死んだエゾバフンウニが大量に打ち上げられて見つかりました。道によると、えりも町のウニの被害は少なくともおよそ10トンに上るということです。

「自然相手で何もできない」豊頃町

漁獲した秋サケが大量に死ぬ被害が確認されている豊頃町の漁業者は、NHKの取材に、被害の現状や赤潮が発生している海域の状況を証言しました。

大津漁協 中村組合長
「秋サケに死ぬ被害が出始めたのは9月22日か23日ごろで、被害が一番大きかったのは25日だった。沖に仕掛けた定置網では秋サケが死んで浮いている状況で、漁獲したものの半分ぐらいは死んでいるのではないかと思う。秋サケがこれだけ死んでいるのは初めてのことだ」

赤潮が発生している海域では、海が茶褐色になっていて、大雨が降って川の水が出た時とか、沼から海に水が出た時に近い色になっていたといいます。

中村組合長
「海の水を入れ替えることもできず、自然相手なので何もできない。赤潮が早く過ぎ去ってくれて、いつもの海に戻ってもらいたい」

過去最大の赤潮被害

道によりますと、赤潮は9月17日に釧路市の桂恋漁港で確認されました。その後、根室市から様似町沖合にかけての太平洋側の広い範囲で発生しているのが確認されました。
関係者によりますと、道のまとめでは、10月6日までに確認された赤潮の影響とみられる漁業被害は、秋サケがおよそ2万匹、サクラマスがおよそ2000匹となっています。

ウニの被害は深刻で、釧路市や釧路町では放流したうちのおよそ9割が死に、厚岸町で8割、浜中町で5割が死んでいました。
根室市の歯舞漁協によりますと、10月5日と6日、根室半島周辺の6か所で海中の調査を行ったところ、半島の北側、根室海峡側にある温根元地区の沿岸でも採取したウニの2割から3割ほどが死んでいたということです。根室市では、根室海峡側で被害が確認されたのは初めてです。

北海道のウニ漁は小さなウニを海に放流して成長させてから3、4年後に水揚げするため、来年以降の水揚げにも影響するとみられます。

温暖化だけでは説明できない

道立総合研究機構の調査で今回、道東沖で赤潮を引き起こしたプランクトンの種類がわかってきました。
このうち「カレニア・ミキモトイ」は、主に西日本で漁業被害をもたらしてきたプランクトンです。気候変動にともなう海水温の上昇で道東沖まで北上し、赤潮につながったとみられています。
「カレニア・セリフォルミス」という種類も見つかりました。2020年9月から10月にロシアのカムチャツカ半島沿岸で発生した赤潮の原因とされています。日本で赤潮を発生させたのは初めてだということです。

今回、赤潮被害が出た道東沖の海では「カレニア・ミキモトイ」よりも「カレニア・セリフォルミス」のほうが多く検出されています。
複数の研究者は「カレニア・セリフォルミス」が北方の冷たい海から南下してきた可能性を指摘していて、今回の赤潮は温暖化だけではない原因が考えられるとしています。

専門家も驚く「北海道の赤潮」

プランクトンに詳しい北海道大学の今井名誉教授は「日本中の赤潮を見ているが、北海道でここまでの赤潮が発生するのは本当に驚いている」と話しています。

「カレニア・セリフォルミス」について —

「ニュージーランドやチュニジアなど世界各地で確認されているが、私自身は日本で赤潮を発生させるプランクトンという認識はなかった。北海道でも海の状況が整えば赤潮になるということが実現してしまったのは恐ろしいことだ」

今後の見通しについては、「海水温が10度以下に下がって冬の季節風が吹いてくれば赤潮は解消されると考えている」としたものの、カレニア・セリフォルミスの低水温への耐性がよく分かっていないことから、「北海道周辺で越冬ができるのか調査することが喫緊の課題だ」と指摘しています。

海の『激甚災害』

沿岸の16自治体のトップは10月7日、そろって道庁を訪れ、鈴木知事に要望書を手渡しました。
個々の漁業者の経営努力や関係する市と町の支援だけでは地域漁業の存続も危うくなるとして、赤潮発生の原因究明と漁業者への経済的な支援を求めています。

鈴木知事は「一刻も早い漁業生産の回復に向け、道庁を挙げて対応していきたい」と述べ、金子農林水産大臣に対して支援を求める考えを示しました。

白糠町 棚野町長
「漁業者にとっては、秋サケを含めて一番のかき入れ時にこういうことが起きた。近年、海水温の上昇などいろんな心配がある中で赤潮が発生し、大変なダメージを精神的にも経済的にも受けている」
白糠町 棚野町長
「我々は『激甚災害』に匹敵すると思っている。思いをしっかりと知事に共有していただいたので一緒になって解決に向けて進んでいきたい」

海の異変については、こちらの記事も
釧路にマンボウ!? 海洋熱波が変える漁業 web

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