ことし1月、北海道で発見された新種の鉱物が国際機関に登録されました。その名も「北海道石」(ほっかいどうせき)。
紫外線を当てると黄色や黄緑色に美しく輝くという特徴を持つこの石は、いまだ謎の多い石油ができる仕組みの解明にもつながる可能性も持っているといいます。一方で、盗掘による被害も懸念されています。 (NHK帯広放送局 嘉味田朝香)
北海道の鹿追町で公開された実物の「北海道石」の映像はこちらからご覧になれます。
新種の鉱物「北海道石」とは
5月29日から北海道の鹿追町で公開された「北海道石」です。自然光の下では淡い黄色の鉱物ですが、紫外線を当てると…。
鮮やかな黄緑色の蛍光を発します。
「北海道石」は炭素や水素などの生物が持つ元素でできた「有機鉱物」の一種です。これまでに北海道の愛別町と鹿追町の2か所で発見されています。
相模中央化学研究所や大阪大学などの研究グループが鉱物を分析したところ、石油などにごくわずかに含まれる「ベンゾペリレン」と呼ばれる物質で構成されていることが判明。新種の鉱物として国際機関「国際鉱物学連合」に申請し、ことしの1月には「北海道石」、学名「hokkaidoite」(ホッカイドウアイト)として登録されました。
「北海道石」は地層の中の生物の遺骸が火山の地熱を受けてできたものと推定されています。これは、地下の生物の遺骸が高い圧力や温度によって変質するという石油などができる過程にも似ていて、石油ができる仕組みの解明にもつながる可能性があるといいます。
産地で広がる喜び
産地の1つである鹿追町で見つかった「北海道石」は、オパールの中に含まれています。こちらの画像のオレンジ色の部分がオパールで、黄緑色に発光している部分が「北海道石」です。
鹿追町では以前から、紫外線を当てると蛍光を発するオパールの存在が知られていました。今回の研究によって、「光るオパール」の正体は「北海道石」などの蛍光を発する特徴がある鉱物によるものだったことが分かりました。
新種の鉱物として登録されたことを受けて、鹿追町では喜びの声が上がっています。「北海道石」を展示している「とかち鹿追ジオパーク」の担当者は「学術的にも価値が高いとされる鉱物がここで発見されたことは喜ばしい限りです。反響も大きく、公開初日のきょうは、ひっきりなしに見学者が訪れています」と話しています。
「地球の記憶」を守るために
一方で、盗掘への懸念も強まっています。
「北海道石」の産地では、過去にも盗掘の被害が起きています。インターネットオークションでの販売など、違法な採掘が行われていると考えられることから、産地の保全のために、「とかち鹿追ジオパーク」の推進協議会では産地の詳しい情報を伏せています。また、現地のパトロールなども行っています。
協議会によりますと、具体的な場所は明かせないものの、無許可での採掘は禁じられている場所にあり、過去にはその場所でオパールを盗掘した者が書類送検された事例もあるということです。
鹿追町役場ジオパーク推進課 大西潤係長
「鉱物に興味を持っていただくことは、大変ありがたく思っています。ただ、それを取る時は、取ってよい場所かをきちんと調べてほしい。また、許可を取ったとしても、取り過ぎないようにしていただきたいと思います。鉱物というのは、地球がどうやってできたかを示すものです。それが産地からなくなってしまうと、2度と取り返しのつかないことになってしまいます」
地球の変動を示す鉱物は、いわば「地球の記憶」ともいえます。次の世代に受け継いでいくためには、私たちのひとりひとりの意識も重要です。
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