NHK札幌放送局

北海道の遺跡「チャシ」とは。謎だらけな正体に迫る! シラベルカ#51

シラベルカ

2021年5月20日(木)午後6時49分 更新

皆さんの疑問に答えるNHK北海道の取材チーム「シラベルカ」

今回の投稿はこちら。 

「北海道にある遺跡、チャシについて調べてほしいです。何の目的で作られているのか分かりません」

チャシは道東に多く存在しているということで、今回は釧路放送局が調査しました。


謎の遺跡 チャシとは?

チャシとはいったいなんなのか。

文献を読むと、チャシとはアイヌ語で「柵」や「囲」を意味する言葉であることが分かりました。 道内には500か所以上ものチャシが存在していることも分かりました(地図の赤点)。 日高地方から東部の海沿いに多くが集中しています。

チャシはお城!

では、何に使われたのか。 実際に釧路市城山地区にある「モシリヤチャシ」を訪ねました。

「モシリヤチャシ」は釧路川に近い住宅地の中にあり、こんもりとした高台になっています。釧路市埋蔵文化財調査センターの高橋勇人さんに案内してもらいながら、特別に敷地に入らせてもらいました。

「ここは戦いに使われていたんです」

高橋さんによると、この「モシリヤチャシ」はアイヌの砦として使われていたそうです。

十勝や厚岸のアイヌとの戦いで使用されたとのこと。 チャシは主に16~18世紀ごろにつくられ、アイヌ同士だけでなく和人との戦いの拠点にもなっていました。

砦らしく入り口は急勾配の坂になっていて、敵の侵入を防ぐため、深さ1メートルほどの「壕」(ごう)と呼ばれる溝のあともありました。「壕」と「柵」がめぐらしてあるのがチャシの特徴です。

高さは18メートルで、頂上からは釧路市中心部を一望できました。釧路川の河口から船で攻め込んでくる敵を見張っていたとも考えられています。 ここの地名「城山」も、このチャシが由来だったんですね。

なるほど!「チャシは戦いに使われた砦」ということで今回の調査は解決。 と思ったら・・・

高橋勇人さん
「いやいや、チャシにはいろいろな目的があったと考えられています。規模の小さいものは見張り台としての役割があり、逆に大きいものはアイヌの交易の中継地点やアイヌの送りの儀式の場所だったとみられます」


目的はさまざま

チャシの目的は▼砦や城、▼見張り台、▼祭祀の場、▼狩猟の拠点など諸説あるそうです。目的がはっきりしているチャシはほんのわずかで、今も研究が進められています。

釧路市の「フシココタンチャシ」からは「ウミガメ」の骨が出土しました。海の神に祈りをささげるために埋葬されたと考えられていて、お祈りをする「祭祀の場」だったことを示す貴重な資料です。

陸別町の「ユクエピラチャシ」(国指定史跡)は、急峻な崖に面した高台にあり、道内でも最大級のチャシです。エゾシカの骨が多数出土しました。陸別町によると、砦としての性格のほかに、狩猟の拠点にもなっていたとみられています。「ユクエピラ」とはアイヌ語で「鹿・食べる・崖」という意味だそうです。


歴史マニアに人気

調べを進めると、チャシはわかっていることが少なく、「謎」めいた部分が多いことがわかりました。この謎が歴史ファンの間で人気を呼んでいます。全国600か所を超える歴史スポットをめぐってきた城マニアの「れきしクン」に魅力を聞きました。

「ミステリアスなところがお城好きにとって憧れですよね。根室半島のヲンネモトチャシに行ってきました。日本100名城のエントリーナンバー1がチャシなんです。アイヌの方々が自然と共に生活していたことを体感できる場所です。ぜひ行ってみてください!」

れきしクンおすすめの根室市「ヲンネモトチャシ」。24のチャシで構成された「根室半島チャシ跡群」(国指定史跡)の1つです。海に突き出した岬の上にあり、見張り台だったと考えられています。形が良好なまま保存され、人気の高いチャシです。頂上からは国後島や歯舞群島などが一望できます。

日本100名城の「1番目」に登録されていて、根室市観光協会はスタンプラリー台を用意するなど、観光資源として活用しています。コロナ前は年間3500人の観光客が訪れていたそうです。観光協会の担当者は「感染収束後、再び多くの人に訪れてもらいたい」と話していました。

◎今回の調査で分かったこと◎
・チャシとはアイヌの人たちが使用した「見晴らしのよい高台にある施設」であり、砦や祈りの場など目的はさまざまだった。
・歴史ファンなどから人気があり、観光資源としても注目されている。


取材後記

私は釧路に赴任して2年経ちますが、恥ずかしながら「チャシ」を知りませんでした。

こんなに身近にあることに驚きましたし、昔のアイヌの人の生活に思いをはせて、歴史のロマンを感じました。これを機に、道内のチャシめぐりをしてみたいと思いました。

チャシはアイヌの人たちにとって今も大切な場所となっています。
立ち入りが規制されているところもありますので、私もルールを守って見学したいと思います。

取材チーム
釧路放送局 記者   山川信彰
釧路放送局 映像編集 永井翔眞
札幌放送局ディレクター 板橋健次

【関連記事】
 #24 “アイヌ語の名前” について
アイヌ文化について理解を深めたい。シラベルカでは、今回のチャシ特集以外でも取材を行っています。アイヌ語の名前について調べてみました。歴史に隠された背景とは?

シラベルカ トップページはこちら

シラベルカへの投稿はこちらから


関連情報

水道民営化って何ですか? シラベルカ#25

シラベルカ

2020年10月9日(金)午後3時19分 更新

中標津に広がる巨大な碁盤の目の謎 シラベルカ#13

シラベルカ

2020年6月30日(火)午後0時52分 更新

大学は夏までオンライン授業。不安です!シラベルカ#12

シラベルカ

2020年6月19日(金)午後3時03分 更新

上に戻る