NHK札幌放送局

コロナ禍の国際結婚、家族でも入国できない理由 #41

シラベルカ

2021年3月1日(月)午後4時22分 更新

視聴者の疑問に答える「シラベルカ」。 今回は旭川に住む冨田雅史さんから質問をいただきました。

冨田雅史さん
「アメリカ在住の妻と日本で暮らしたいのに、コロナ禍で来日できない。
家族なのになぜ?」

大切な家族と会えない。
切実な現状を感じたシラベルカ班は、投稿者の富田さんに話を聞きに行きました。

――はやく会いたいね。
冨田雅史さんは、旭川市でオートバイのディーラーをしています。
去年12月、アメリカに住むケボニア・アントワネット・グラントさんと国際結婚をしました。

「ぼくは妻を『カイちゃん」と呼んでいますね。ぼくは『とみぞう』と呼ばれています」

ケボニアさんは、アメリカ陸軍のヘリコプターの整備士を経て、去年10月に航空機の整備士となるための学校を卒業しました。今はペンシルベニア州でアルバイトをしながら日本への渡航費用を貯めています。
アメリカでも猛威を振るう新型コロナウイルスの感染状況や、全米各地で拡大している人種差別の問題にも直面し、日本で冨田さんと安心して暮らせる日々を待ち望んでいます。


どうして会えないの?思わぬ『壁』

冨田さん
「明日は仕事?」
ケボニアさん
「うん、朝5時から」
冨田さん
「そっか…はやいね」
ケボニアさん
「今は気にしない。妻になるから」
冨田さん
「そうだね。がんばってね。無理しないでね」
ケボニアさん
「はやく会いたい。たのしみ」

一緒に暮らせる日に向けて、連絡を取り合う冨田さんとケボニアさん。
ところが、思わぬ壁が立ちはだかりました。ニューヨークの総領事館に問い合わせたところ、新型コロナの影響でビザが下りないというのです。

冨田さんは電話でグラントさんを励まします。

冨田さん
「書類ができれば日本に来られるからね」
ケボニアさん
「がんばる」
冨田さん
「がんばろうね」
冨田さん
「今のコロナ禍の状態で日本は緊急事態宣言が出ているので、ビザを申請をしても発給されない可能性が高いと領事館から聞いています」



コロナ禍の国際結婚、一体どんな『壁』が!?

ケボニアさんが来日して一緒に暮らすために必要な手続きがこちらです。

富田さんとケボニアさんは去年12月に結婚しました。
なので、一つ目の結婚証明書などはすでに提出し、二つ目の在留資格証明書も、申請から1か月半ほどが経ち、発行されました。

――『ビザの壁』
ところが、三つ目の配偶者ビザのところでストップしてしまいました。
なぜビザが下りないのか、ニューヨークの日本総領事館を取材したところ、メールで回答が送られてきました。

「緊急事態宣言に伴い、国際的な人の往来も制限する必要があるため、命に関わることなど緊急性がある場合を除いて、外国に住む家族を呼び寄せることはできない」

つまり、緊急事態宣言が出ているので、ビザは発給できないということなんです。


緊急事態宣言は一部地域だけなのに?
緊急事態宣言が出ているのは東京など限られた地域だけで、冨田さんの住む北海道は対象外です。
それでも日本のどこかで緊急事態宣言が出ている以上、たとえ行き先が北海道でも、日本へ入国するために必要となるビザをもらうことは難しいということです。このため、ケボニアさんが日本に来るには、緊急事態宣言の解除を待つほかありません。

――『第二の壁、自主隔離』
仮に宣言が解除されたとしても、もう一つ壁があります。
それは、日本へ入国した人が対象となる14日間の自主隔離期間です。本来ならば、指定された空港近くのホテルのほか、マイカーなど人と接触しない手段で自宅まで移動して自主隔離することもできます。


おもわぬ「落とし穴」
しかし、本州の空港から北海道に渡るには、飛行機や新幹線といった公共交通機関を使う必要があるので、移動することができません。

なんとか北海道に移動する手段はないか、取材班は知恵を絞りました。
「極端な話だけれど、マイカーで北海道の自宅まで運転することができるのでは?」
しかし、たとえマイカーでも、北海道に渡るには公共交通機関のフェリーを使わなければいけません。このため、マイカーの移動も不可能と分かりました。

このため、仮にケボニアさんが来日できたとしても、現実的には、自費で宿泊代を払って、到着した空港近くのホテルで自主隔離するしかありません。

日本での生活が初めてとなるケボニアさんの来日をサポートし、タクシー、隔離先の宿泊、食べ物の手配などを請け負う民間企業がありますが費用は14日間でおよそ10万円~20万円ほどとなり、経済的負担がかかってしまいます。

冨田雅史さん
「ホテルを14日間借りて過ごさなければいけない。その費用の負担も結構大変。日本で初めて生活を始める妻も心細いと思う」


――コロナ禍の国際結婚、一体どうすれば??
こうした悩み、国際結婚をした多くの人が直面しています。
中には、なんとか状況を変えられないかと活動を始めた人もいます。

東京在住の石井佳奈さんです。アメリカに住む男性と結婚しましたが、冨田さんと同様、一緒に生活できないままです。

石井さんは、インターネットを通じて3000を超える署名を集め、外国人の配偶者などに対する入国規制の緩和を国に求めています。

署名に応じた人たちからは、入国規制への不満や不安の声が多く寄せられています。これまで2000人、2500人、3000人と署名が集まる節目ごとに、政府関係機関に請願書を送ってきました。

石井佳奈さん
「1年たった今でもまだ先が見えない不安というのはみなさんあると思う。
お互い愛を持って寄り添うのが一番なんじゃないのかなって」

海外でもこうした当事者の声を受け、ヨーロッパではデンマークをはじめ、ノルウエー、オランダ、スイスなどが、パートナーに対する入国規制を緩和しました。

コロナ禍の夫婦の絆
お互いに会えない中でどうやって夫婦の絆を確かめればいいのか。
私たちは、石井さんに富田さんへのアドバイスをお願いしました。

石井さん
「日々の日常生活をできるだけ一緒にするということ、あとは共通の趣味とか一緒に料理します」
冨田さん
「あっ!そうなんですか!へーすごい!」
石井さん
「一緒に同じものを料理します。なので、私はブランチタイム、むこうは夕飯タイムとか」

コロナ禍で会えない日々が続く中、一緒に料理をしたり同じ映画を見たり、同じことをして時間を過ごすことを石井さんはおすすめしています。
どうしても電話するだけだと、話題や時差の違いなどからコミュニケーションが長続きしにくいこともあります。
強く意識することなく、つながっている感覚を持つ。
「なにげない日常をともにすごすこと」を、石井さんはアドバイスしました。


取材を終えて
国際結婚が増えている中で、こうした新型コロナの影響は見落とされがちかもしれません。
私たちも今回の取材で、支援のない状況を強いられている人が多くいることを初めて知りました。

――届かない支援、孤立する当事者たち
さらに石井さんは、周囲の人たちからの理解も得られにくいという問題もあると話します。

「周囲の人から理解されないっていう声はすごくよく聞きます。
 国際結婚、交際遠距離恋愛をしたのならば、これぐらい覚悟できないの?とか。
 けれど、突然訪れたコロナ禍を前に、1年も会えない覚悟なんて誰もできていないです」

石井さんは、コロナ禍のなかで、国際結婚や国際恋愛をしている当事者同士が気持ちを共有する大切さを訴えます。
入国制限がすぐ緩和される見通しがない中、石井さんは、SNS上で国際結婚をした当事者同士が気持ちを共有して支え合う場を作りました。

現在もラインやツイッター、クラブハウスなどでは、「#loveisnottourism」とか「#愛は観光ではない」といったハッシュタクでつながった当事者同士が、思いを伝え合っています。

「おんなじ人たち、おんなじ状況で苦しむ人たちがいるなか集まるだけで安心だと思う」


――You shall seek, you shall find.

強く願えば、きっと見つけることができる。私は日本に、愛する人のもとへきっと行く。

取材班にケボニアさんが語ってくれた言葉です。

愛する人に会えない日々が続く中、力を尽くしている方々を取材した日々でした。このコロナ禍において、家族と会えないつらさに共感できる人は多いと思います。支援や思いやりの輪が広がってほしいと感じました。

取材:札幌放送局・前川カメラマン/吉田ディレクター
2021年2月22日放送

英語版もあります↓

English article about internartional couples in this COVID-19 pandemic is also available !

International Couples got separated by COVID-19 in JAPAN

このお話の続きはこちら↓

「シラベルカ#41続報 コロナ禍の愛は国境を越えて」
今回取材をした冨田夫婦は再会を果たせるのか!?
半年にわたる取材の結末をまとめた記事はこちら!

シラベルカ トップページはこちら

シラベルカへの投稿はこちらから


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