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優駿、一緒に育ててみませんか? ~日高地方・担い手育成の挑戦~

  • 2023年3月30日

競走馬といえば、北海道日高地方。全国の競走馬(軽種馬)生産の80%を占め、数多くの名馬を送り出してきました。最近は競走馬をモデルにしたゲーム・アニメの流行もあって、スターホースのふるさとに大勢のファンが訪れています。 しかし、競走馬の生産農家は過去20年ほど減少が続いています。日高地方でも、農家の7割に後継者がいない状況で、担い手の育成が大きな課題となっています。 未来のスターホースを生み出す人を増やしていく。新たな担い手を育成する現場を訪ねてみました。 (室蘭放送局・山本直広)

関連番組「優駿のふるさとは未来へ」が3月30日~放送!

番組動画はこちら(3月30日 午後4時から配信)

 

未経験者も、牧場の仕事を体験

日高町門別地域の高台に建つきゅう舎。「ひだか・ホース・フレンズ」という施設です。馬にまつわる文化の普及や担い手養成などをめざして、日高地方7つの町や農協などが作る協議会が運営しています。

ここでは牧場の1日の仕事を泊まり込みで体験することができます。最短2泊3日のコースから、就農をめざして知識や技術を習得する長期間のコースまで、研修生を「ひだか・ホース・フレンズ」ホームページで随時募集しています。2021年秋から受け入れを開始し、2022年末までに30人以上が参加。すでに日高地方の牧場に就農した人もいます。

私たちが訪問したこの日は、山梨県から来た研修生がきゅう舎の中で牧草(寝わら)の入れ替えに汗を流していました。全国各地から「夢」をめざす人が集まってきています。
 

研修生へ伝えたい思い

場長を務めている村上善己さん(62)。19歳から馬に乗り、競走馬の育成などにおよそ40年間携わってきた大ベテランです。馬の扱い方からきゅう舎での作業まで、牧場での仕事に必要な知識や技術を研修生に教えながら、自身が大切にしてきたホースマンとしての思いを伝えています。

村上善己さん
「よく、馬のこの仕事をするのに一番何が大事なんですかっていう質問を受けることが多いんですけれども、やっぱり根本にあるのは、馬の命を大事にする気持ちがあるかないか。その命を守ろうとする気持ちがあるかないかだと思います。技術を身につけてその命を守ってあげるっていうのが、ホースマンの基礎だと僕は今でも思ってます」

1頭の馬、1勝には、多くの「思い」が詰まっている

1頭の競走馬が生まれてレースを走るまでには、生産、育成、そして競走と、それぞれのステージごとに多くの人が関わっていきます。若い頃の村上さんは、毎日馬に乗って育成に取り組んでいましたが、馬にとって厳しすぎるのではないかと思い悩んだということです。しかし、その厳しいトレーニングを含む、多くの人の努力の積み重ねが、やがてレースでの1勝につながり、その馬を1日でも長く生かすことにつながると悟ったといいます。

村上善己さん
「ピックアップされるのはジョッキーだったり調教師だったりきゅう務員だったり、一部の方だとは思うんですけど。1頭の馬が1勝するためには何十人、何百人っていう人のいろんな思い、そしていろんな手がかかって、それが完成されての1勝なので、その重みをいろいろ感じていただきたいっていうか。その中の1人に入って、力になっていただければと思っています」

努力すれば、馬は応えてくれる

牧場の仕事は、馬の集牧や放牧、馬房の掃除や寝わらの交換、給餌、馬の健康状態の確認など、地道な作業の積み重ねです。ただ、一見単調に見える仕事も、生き物が相手。馬とコミュニケーションをとりながら、日々変化する状態に合わせて臨機応援に対応する難しさと、報われる瞬間があるといいます。

村上善己さん
「やってる本人は地味な仕事なので、報われないっていうふうに思いがちだと思うんですけども、自分の努力したことが必ず報われる世界だと思っています。努力すれば、必ず馬が応えてくれると」

「宝物」との出会い

大好きな馬の大切な命に毎日向き合い、いろいろな人に支えられながら歩んできたという村上さん。感謝の気持ちを抱きながら、キャリア集大成ともいえる49歳を迎えた時、当時1歳だった忘れられない「あの馬」と出会いました。

村上善己さん
「一番最後に乗った馬がゴールドシップで、その後、一度も馬に乗ってないんです。本当に僕の中では宝物ですね。ただ一生懸命頑張った結果、それがゴールドシップに出会えた運だと思っています。でも、運というのは、やっぱり努力した人にご褒美として、多分神様がくれたのかなと思って」

警察官から転身、馬と暮らす日々

村上さんが宝物と呼んだゴールドシップは、国内最高のGⅠレースの1つ、天皇賞(春)で優勝するなど、2015年まで活躍しました。現在は新冠町にあるビッグレッドファーム明和という牧場にいます。管理する馬は300頭以上、生産や育成を行う大規模な牧場です。
ここに、1年半ほど前から牧場の仕事に挑戦している若者がいました。
栗林雅諭さん(24)、以前は警察官でした。元々、馬との関わりは、「近所にあったばんえい競馬を見に行ったこと」くらいでしたが、ある時、乗馬クラブで馬に乗った体験が、転身を決めるきっかけになったということです。

栗林雅諭さん
「馬を見てやっぱり癒されながら楽しく仕事ができています。馬の走っている振動だったり、風の音だったり、風の切る感じだったり、そういうのがやっぱり乗ってて気持ちよくて、楽しいなと思います」

早くも味わったやりがい

競走馬のトレーニングでは、馬上でバランスを取りながらたづなを操るスキルはもちろん、その馬に指示を正しく受け入れてもらうことが重要となります。そのために、いま馬が何を考え、どのような状況にあるのかを理解する努力が求められるそうです。
栗林さんは、1年が経過し、馬の成長が見えてくるようになったことに喜びを感じています。そして早くも、大きなやりがいを感じる出来事がありました。

栗林雅諭さん
「今まで苦労して、あんまり上手に乗れていなかった馬も、今日はよく乗れたなっていうふうに思うことがあると、達成感ややりがいを感じます。去年、一回だけなんですけど、自分が仕上げていった馬がレースに出て、勝ってくれたことがあって。その経験がやっぱりとても嬉しかったので、もう一度味わいたいなと思います」

栗林雅諭さん
「将来は自分のことよりも馬のことを第一に考えて、馬のために何ができるかということを追求して、やってあげられるようなホースマンになりたいと思っています。騎乗者としては、人馬一体を目指して、究極は自分の手足のように扱えるようになりたいなと思っています」

馬を第一に考えられるホースマンに

「人馬一体」。栗林さんが語ったこの言葉には、大ベテランの村上さんのように、日々馬を観察してわずかな変化を汲み取り、その意味を理解して、何をしてあげるべきか自問自答を繰り返してきたホースマンたちの努力、思いが込められていると感じました。
多くの人を魅了してきた競走馬の世界。優駿のふるさとの未来に向けて、新たな担い手の存在は欠かせません。馬産地で続く人々の挑戦をこれからも見つめていきたいと思います。

室蘭放送局ホームページはこちら

 

 

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