NHK札幌放送局

ともに歩む隣島“礼文島”の魅力

ローカルフレンズ制作班

2022年5月26日(木)午後5時26分 更新

ディレクターの鈴木凌河です。 利尻島滞在3週目を迎えた今回・・・ なんと島を飛び出して、花の浮島として知られる“礼文島”を紹介します! 

利尻島と礼文島は、フェリーで45分のお隣さん。
お世話になっているローカルフレンズの梅村みゆきさんによると、
「二つの島はひとくくりされることが多いけど、礼文島には礼文島の魅力があるはず。利尻島を盛り上げる参考にしたいからぜひ魅力を探してみて!」とおすすめされたので、さっそくフェリーで旅立ちました。

こちらは梅村さんにご紹介いただいた、鈴川未来さん29歳。
福島県出身で大学中退後、21歳で三宅島の公務員として就職。
そのとき「ほかにも島を見てみたい」と、礼文島の地域おこし協力隊に応募、移住したんですって。
今年の4月から「移住定住コーディネーター」として、町からの委託を受けて働いています。

そんな地元に根ざした情報通の鈴川さんに、さっそく島の魅力について聞いてみたところ、出てきたのは泡盛!
ここで疑問が・・・「なぜ泡盛?泡盛といえば沖縄じゃないの?」。
素直にこの疑問をぶつけてみたところ「礼文島の魅力の一つである“おいしい水”を使った特産品ができないかと仲間に相談したら、2019年に礼文町が与那国町と友好交流都市関係を結んだことを教えてもらい『だったら泡盛じゃね?』と盛り上がったんです!」とのこと。

そこで与那国の酒造会社さんに礼文島のおいしい水を送ってお酒を仕込んでもらい、2021年に完成したんですって。

島の魅力は人

泡盛造りの中心人物がこの人、“島の自慢づくりプロジェクト”代表の柳谷裕司さん42歳。島の人からは「ゆーじさん」と呼ばれ、兄貴のように慕われています。
島生まれ島育ちで、現在は漁師をやりながら、ゲストハウスのオーナー、飲食店で働いています。

「島には海産物、花以外にも魅力があるんだ!」
それを広めたいという思いから仲間6人でプロジェクトを立ち上げたんだそうです。

柳谷さんの働くお店で礼文島の水を使った泡盛を飲ませてもらいました。
気になるお味はというと・・・「かぁ~!!きく~~!!」って感じです!
普段あまりお酒を飲まない私でもわかるほど口当たりはまろやかで、すっきりとした味わい。
「沖縄の水と比べて礼文の水は軟水だから、今までにない泡盛になっているんだ!」と自慢げに話してくれました。
アルコール度数は30度と43度があり、おすすめは43度。
飲み方も豪快にロック!!さすが漁師さんです・・・。

団体のメンバーは、漁師さん、飲食店経営、元地域おこし協力隊と様々なメンバーが集まっています。
この日はこれまでなかったHPを作り、より多くの人に飲んでいただくための販促会議でした。
このメンバーで泡盛以外のプロジェクトも計画しているそうですが、まだ秘密なんだとか。
柳谷兄貴たちが生み出す、礼文島の新たな特産品が楽しみです!

礼文島のシンボル、レブンアツモリソウ。

滞在18日目。
礼文島の花を取材しようと、高山植物園へ。
目的は「レブンアツモリソウ」。
鈴川さんに「まだ見ごろではないけれど、1輪だけ咲いているよ」と貴重な情報を教えていただいたので、さっそく見に行くことに。

そこで偶然出会ったのは、長野県から夫と二人で観光に来ていた橋本純子さん73歳。
25年前に初めて見た「レブンアツモリソウ」に感動し、再び見たいと訪れたそうです。
前回は8時間のトレッキングを楽しみましたが、
今は足の手術をして杖がないと歩けず、残念ながらトレッキングはできなかったんだとか。
そんな橋本さんに魅力を伺うと「したたかに下を向いていて、奇麗な色がなんとも言えないんだよね」。
目を細めながらそう教えてくれた言葉が印象的でした。

町のシンボルを守り続ける

こうしたファンの多いレブンアツモリソウですが、実は絶滅の危機に瀕しているんだそうです。
そんな状況に置かれている花を守っているのが、役場の産業課で働く村山誠治さん50歳。
村山さんは、レブンアツモリソウの保全管理や、倒木の調査、観光資源である自然を主に担当しています。

レブンアツモリソウは、育つのに5年~6年と時間のかかる植物。
さらに発芽しても途中で死んでしまうことも多く、なかなか思うように成長はしてくれないんだとか。
盗掘被害や、環境変化により数も年々減少していて絶滅危惧種にも指定されています。

そこで町では、レブンアツモリソウを守ろうと、培養を行い植物園で育てています。
成長に時間がかかるため、研究が進んでおらず、培養の精度も高くないのが現状だそうです。
「この花を求める人がいるから無くしたくない」と、村山さんは熱く語ってくれました。

日々、花と向き合っている村山さん。
レブンアツモリソウの魅力を聞いてみたところ「簡単に咲かないのは大変なんだけど、それはいいところなのかもしれない。苦労して苦労してやっと咲いて、特徴的な形をしているのはいいなと思う」。
この言葉を聞いたとき、村山さんもまた島のシンボルに魅せられている一人なんだと感じました。

実は礼文島上陸初日に、礼文島の郷土資料館に行きました。
北海道出身にもかかわらず、北海道を全く知らない私に対して、優しく案内してくれたのは高橋鵬成(たかはし・ともなり)さん。
大学で考古学を学び、卒業後礼文島に移住してきました。
高橋さんによると「礼文島は最高の島!」だといいます。
地層内に貝殻などが多く含まれていて、
その成分が出土品を守り骨などがきれいに残っていることが多いんだとか。
そのため礼文島は「研究の場」としても、最高の島なんですね。

ちなみに高橋さんの専門はオホーツク文化の研究です。礼文島ではオホーツク文化の出土品もきれいに残っていることが多いんです。自分の研究が存分に出来る礼文島が大好きなんだそうです。
こちら高橋さん自慢のイシイルカの骨。遺跡から出てきたものを集めて再現しました。
こうした展示品の収集は学芸員さんとは別の方がいると思っていたのですが、
実は学芸員の方もやっていると知り驚きました。
他にも、この資料館にはおすすめなものが沢山あるので、
礼文に行った際はぜひ立ち寄ってみてください。
礼文町の歴史を、よりわかりやすく教えていただけます!

最後に・・・
じつは梅村さんは、「この利尻と礼文ふたつの島が、いつか一緒に何かを行えば
もっと2島を盛り上げられるのではないか」と考えているそうです。
私も初めて礼文島を訪れてみて、花、海産物だけではなく人、ほかにもまだ知られてない魅力があるんだなと感じました。梅村さんや鈴川さん達のように、両島に住む島をよくしたいという思いの強い人がタッグを組めば、より多くの人に島の良さを発信していけるんじゃないかと感じました。

2022年5月26日


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