NHK札幌放送局

また拡大か鳥インフルエンザ 北海道内でも警戒を

ほっとニュースweb

2021年11月16日(火)午後6時59分 更新

養鶏に関わっている人たちにとって、また、気が抜けない時期を迎えました。 

国内で今シーズン、初めてとなる鳥インフルエンザウイルスが、今月、秋田県で検出されました。致死率が高い「高病原性」のウイルスで、その後、鹿児島県でも見つかりました。

鳥インフルエンザは昨シーズン、西日本を中心に広がり、国内で過去最多となるおよそ987万羽の殺処分を余儀なくされました。

専門家は今シーズンも「静かな冬で終わらなさそうな予兆がある」として、全国的に拡大する懸念を指摘するとともに、道内でも感染が広がるおそれがあると警鐘を強く鳴らしています。

「静かな冬では終わらない」感染拡大の予兆が

ニワトリやアヒルなどの鳥に感染する、鳥インフルエンザ。このうち「高病原性」のウイルスは致死率が高く、感染の拡大を防ぐため、確認された農場の鳥は法律に基づいて殺処分されます。

この鳥インフルエンザ、去年の冬からことしの春にかけて国内で猛威を振るいました。西日本を中心にあわせて18の県で発生し、殺処分された鳥の数は過去最も多いおよそ987万羽に及びました。

今シーズンもやはり拡大の可能性はあるのか、鳥インフルエンザに詳しい北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授に聞くと、淡々とこう指摘しました。

北海道大学大学院獣医学研究院 迫田義博 教授
「残念ながらヨーロッパの最新の情報や韓国の情報を踏まえると、この冬、静かな平和な冬で終わらなさそうな、そういう予兆はあります」
北海道大学大学院獣医学研究院 迫田義博 教授

どういうことなのか。

ヨーロッパではことしまでの3年間、大規模な発生が続いているということです。このヨーロッパで渡り鳥がウイルスに感染。寒くなる冬が近づくこの時期、渡り鳥が大陸から日本に南下、国内に持ち込んだ可能性があるということです。

また、韓国でもことしすでに感染例が出ています。近い韓国からは渡り鳥が日本海を越えて直接、日本に南下してきます。こちらもウイルスを持ち込む可能性があります。

ただ、見つかったのは秋田県なのだから、渡り鳥は北海道を通り過ぎて、もう安心なのでは?と思う人もいるかもしれません。しかし、迫田教授はこう強調します。

北海道大学大学院獣医学研究院 迫田義博 教授
「秋田県で見つかったから、もうすでに北海道は渡り鳥が飛んじゃって安全ということではさらさらない。今でも感染した鳥からウイルスを検出できていないだけで、感染した鳥が道内にいる状況だと思う。気を緩めることはできない」

現実に2016年から17年のシーズンには、秋田県の動物園でウイルスが見つかったあとに十勝の清水町の養鶏場で発生し、およそ28万羽が処分されたケースもあります。

道内の養鶏場、高まる緊張感

こうした事態に道内の養鶏場はどう対応しているのでしょうか。

北広島市にある道内最大手の鶏卵会社「ホクリヨウ」の農場を訪ねました。

鳥インフルエンザは、白鳥やカモといった渡り鳥が直接、農場に入って感染させることはあまりなく、渡り鳥と同じ池などで水を飲んで感染したスズメなどの小鳥や周辺にあった渡り鳥のフンを付けたネズミなどの野生動物などが農場に入り込み、中にいる鳥にうつす場合が多いといいます。

このため、この会社では従来から鶏舎の出入口と周りに消石灰を散布したり、中に入る際はその都度、長靴を履き替えた上で消毒したりするなどの対策を講じていました。

渡り鳥が増えてリスクが高まる11月に入ってからは、野鳥や小動物などが鶏舎に入ることを防ぐネットの監視を強化し、毎日破れているところがないか点検しているということです。

鶏舎の周囲を案内してもらうと、細かい隙間にまでネットが張られていました。会社の担当者は「穴が開いていたり、壊れていたりすれば、その日のうちに修繕を確実に行うようにしている」と話していて、実際に修繕した跡も確認できました。

さらに秋田県での発生を受けて、今月10日からは会社が独自に定めている「警戒レベル」を養鶏場に誰でも入ることができる「レベル1」から、養鶏場の社員以外は入ることができない「レベル2」に引き上げ、さらに感染防止を徹底していると力を込めていました。

ホクリヨウ 松野慎太郎 生産本部長
「昨シーズンの発生を受けて、ことしはかなり気をつけていたと思うので発生したことは非常に残念だ。これから広がらないことを祈るばかり。これからが一番危険な時期で出してしまうと大変なので、緊張感を持ってきっちり対策に取り組む」
ホクリヨウ 松野慎太郎 生産本部長

感染拡大防止のために私たちができること

それでは、私たちが気をつけるべきことは何でしょうか。

迫田教授は、死亡した野鳥を見つけた場合は、決して触らずに道に届け出るよう求めています。ウイルスに感染して死んだおそれがあるためです。感染を広げる危険を避けるだけでなく、ウイルスの感染状況を知るために重要な情報にもなります。

一方で、気になるのはヒトへの感染です。これについて迫田教授は、日本のような衛生環境が整っている国では「過度に恐れる必要はない」としています。

最後に対策が必要な期間はどのくらいか、迫田教授に聞きました。

北海道大学大学院獣医学研究院 迫田義博 教授
「来年5月の大型連休のころ、渡り鳥が全部帰るまで、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染している可能性がある鳥たちが環境中にいるので、長い間気持ちを強く持って対策をしてもらうことが必要。北海道の家畜保健衛生所の獣医さんとも協力しながら1つずつチェックをして、抜け目のないような、ウイルスが入り混むような余地がないようなその対策を頑張ってもらう」

1000万羽近くの鳥が殺処分される昨シーズンのような事態になれば、経済的な打撃は言うまでもなく、生産者をはじめ、さまざま関係者に重い精神的な負担も生じます。来年5月まで道のりは長いですが、生産者、行政が一体となって、なんとかして感染拡大を防いでほしいと思います。

(札幌放送局 山口里奈)
2021年11月16日

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