NHK札幌放送局

シラベルカ#23 テーマパークには思い出が詰まっていた!

シラベルカ

2020年9月29日(火)午後3時46分 更新

みなさんの疑問に答えるNHK北海道の取材チーム「シラベルカ」。今回は十勝地方の40代男性からいただいた投稿です。

男性(40代)
「帯広空港近くにあるグリュック王国は長年放置されているようです。何かに有効活用できないか、誰の所有なのか、問題があるとしたら何か?もったいないなぁ」

取材した帯広放送局の三藤紫乃記者の結果報告です。


空から見えるあの建物は?

早速、調査にとりかかった取材チーム。まずは投稿してくれた男性に電話で話を聞きました。男性は実は航空大学校帯広分校の教官とのこと。職場から長年使われていないテーマパーク“グリュック王国”が見え、気になっていたとのことです。
ただし、顔出しの取材は恥ずかしいとNG!
航空大学校を訪れた取材チームを出迎えてくれたのは、教え子の学生たちです。

3人はパイロットを目指し、訓練に励んでいます。日々、上空から眺める十勝の景色。
「僕たちも上空から見えるものが気になっていました」そう言って学校の管制塔に案内してくれました。

見えるのは何やらお城のようにも見える建物。
これが投稿にあったグリュック王国の建物だといいます。

航空大学校の学生
「空港のまわりを飛んでいるときに旋回の目印として上から見えてます。駐車場や観覧車が見えるけど、森が生い茂ってていったい何だろう?っていう感じですね」

施設はどうなっているのか。取材チームは近くまで行ってみることにしました。


現在のグリュック王国は

車で近づくと、前方に広がる林の上に観覧車や建物の一部が見えてきました。

かつてグリュック王国の入り口があったと思われる場所は、立ち入り禁止となっていました。
案内板のようなものは残されているものの、緑が深く生い茂り、ここにテーマパークがあったという雰囲気はほとんど感じることはできません。

テーマパーク跡地の付近で1人の男性に出会いました。開園前から近くに住んでいるということで、当時の園内の様子について話してくれました。

近所の人
「ドイツには行ったことがないけど、(当時の園内の雰囲気は)ドイツだったよ。ひととおりの遊具は全部あったね。メリーゴーラウンドから何から何まで。(当時と比べて)ここから見える風景も変わったね。木は倍くらいになっているし、建物が見えなくなった」


グリュック王国とは

グリュック王国は日本がバブル景気真っ只中の1989年(平成元年)、帯広市の郊外にオープンしました。
建設したのは帯広市の民間企業です。
現地から建築の職人を招くなどして、広大な土地に忠実に中世ドイツの町並みを再現しました。
帯広にいながらドイツの雰囲気を味わえると人気の観光施設となり、ピーク時の入場者は年間90万人あまりにのぼりました。
当時、施設で働いていたオーストリア人のエアシュニッグ・ゲルハルドさんに話を聞くことができました。

施設内にあったソーセージ店で働いていたエアシュニッグさん。
エアシュニッグさんだけでなく、ほかにもドイツやオーストリアから来た人たちが働いていたといいます。

エアシュニッグさん
「まるでドイツでした。ドイツそのもの。音楽を演奏する人とかいっぱいドイツ人がいましたから。8月の休みにはいっぱいお客さんが入ってきて忙しかったです」

しかし、施設はバブル崩壊とともに入場者数の減少が続き資金繰りが悪化。
2003年(平成15年)に閉園を余儀なくされました。

エアシュニッグさんは、同じく施設内で働いていた帯広出身のさおりさんと出会い結婚。今は娘とともにオーストリアで暮らしています。
2人は思い出が詰まった施設の閉園を残念に思っています。

エアシュニッグさん
「パパとママがどこで知り合ったのかって見せられない。(帯広に帰るときに)いつも飛行機から見えるんですけど。娘にグリュック王国を見せられなくて少し残念ですね」


現在の状況は…

閉園から17年。これまで土地や建物が競売にかけられたこともありましたが、買い手はつかず施設が再び利用されることはありませんでした。
関係者によりますと10年ほど前には外国人投資家がホテルとして再開発するという構想も浮上したということですがリーマンショックの影響で立ち消えになったということです。
また、別の関係者への取材で施設の土地や建物は現在、民間の企業が保有し、今のところ活用の予定はないこともわかりました。


跡地活用は全国的課題

観光政策に詳しい専門家はバブル期に建てられたテーマパークの跡地の活用は全国的な課題だと指摘します。

北海道大学公共政策大学院 小磯修二 客員教授
「テーマパークを保有する所有者の権利が強く守られている日本の制度のもとで、民間の所有地、施設になかなか行政が手が出せないというところがひとつの問題だと思います。また、規模が大きいために施設の維持管理は大変大きなコストを伴うということで結果的に運営主体が見つからず放置されてしまっているのが現在の状況だと思います」

一度閉園したテーマパークの再利用はなかなか難しい・・・。
頭を抱える取材チームに新たな情報が入ってきました。
なんと道内のテーマパークの中には閉園の危機に直面しながらも市民の力で運営を続ける施設があるというのです。


閉園の危機を市民の力で

市民の力で運営を続けるテーマパークとはどんなところなのか。取材チームは早速、現地へと向かいました。

たどり着いたのは芦別市にあるカナディアンワールドです。
名前のとおり園内はカナダの風景が再現されています。
1990年(平成2年)にオープンし、「赤毛のアン」の世界観を再現した施設が人気を集めましたが、その後入場者は減少し、運営会社は経営破綻しました。
市が運営を引き継ぎましたが、施設の老朽化や入場者の減少に歯止めがかからず、去年限りでの閉園がいったん決まっていました。

しかし、思い出の場所をなくしたくないと、市民やテナントの入居者が存続を求めてグループを結成。
市から土地と建物を無償で借り、運営を続け、閉園を免れたのです。

カナディアンワールド振興会 俵政美会長
「このカナディアンワールドが本当に好きなので、閉園はものすごくつらいことなんですね。みんなの情熱で市を動かしたということですね」


運営費用も市民が集める!

いま、施設の運営は市民がボランティアであたっています。
電気代だけでも半年でおよそ100万円かかりますが、その費用も市民の力で賄なっています。
活用したのはインターネットのクラウドファンディングです。
寄付を呼びかけると全国のファンから目標額を大きく超える250万円あまりが集まりました。
今シーズンは土日と祝日を中心に開園していますが、取材した日も家族連れなどが途切れることなく訪れていました。

芦別出身の来場者
「『赤毛のアン』の本も読んだりしていたので、その世界が自分の町にできて、当時は夢の世界に入ったような気持ちを味わえた思い出があります。少しでも残していけたらいいんじゃないかなと思う」
カナディアンワールド振興会 俵政美会長
「1年目としては非常に上出来だと思っています。派手じゃないけれどもいつもここはいろんな人が来て何かにぎわいのある場所にしていきたいです。それが私の目標ですね」

カナディアンワールドでは、市民みずから建物の補修を行ったり、遠くは北見市からボランティアにかけつけたりする人もいるということです。
こうした努力の結果、今シーズンは去年よりも訪れる人が増えているということです。
振興会では来年度も運営する方向で考えています。
今回の取材で感じたのはテーマパークという場所で過ごした時間が多くの人にとって人生の大切な思い出になっているということでした。
その場所を残したいと奮闘する振興会の活動、みなさんにも応援してほしいと感じました。

【取材担当】
記者・三藤紫乃
ディレクター・伊澤光之輔

放送の動画はこちら↓


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