NHK札幌放送局

『当選確実』って? 衆議院選挙 NHK北海道はこう判断します

衆院選2021

2021年10月29日(金)午前11時06分 更新

“秋の政治決戦”衆議院選挙。投票日はいよいよ31日です。 その夜、NHKはテレビやラジオで開票速報番組をお伝えします。 この中では、候補者の「当選確実」を速報します。 この「当選確実」。よく耳にされると思いますが、わたしたちはこうやって判断しています。 

「トウカク」はこう判断する

「当選確実」は、選挙管理委員会の発表とは別に、NHKが独自に判断して放送するものです。その根拠にするのは、時系列で整理すると、①事前の情勢取材、②投票日当日の出口調査、③開票状況の取材です。このうち①と②は、後ほど詳しく解説します。③は、各自治体が投票日の夜、開票作業を行う「開票所」での取材です。どの候補者が優勢か、各自治体で開票状況を直接、取材しています。

こうした取材や調査の結果を総合的に分析して、「当選確実」を判断しています。このため、選挙管理委員会の公式発表がない段階や、開票作業が始まったばかりの開票率が低い段階でも、優勢と見極めがつく場合には「当選確実」と判断します。また、開票作業が始まる前であっても、分析の結果、大差をつけて当選することが確実だと判断できれば「当選確実」と判断します。

わたしたちは、少しでも疑義があれば、「当選確実」とは判断しません。「当選確実」は、その候補者が当選すると100%の確信を持てた段階で判断しています。

出口調査の舞台裏

「当選確実」を判断する根拠となる出口調査、その世界をご紹介します。出口調査は、報道機関が有権者の投票行動や政治に対する意識を探るために行っています。投票を終えた人に、▽どの候補者に投票したか、▽支持する政党、▽重視する政策などを投票所の「出口」で調査員が尋ねます。

あくまでも投票を終えた人が対象です。これから投票しようという人に聞くわけではありません。(これだと「入口調査」ですね…)
調査にはタブレット端末を使い、名前や住所を尋ねることはありません。また、個人の回答が外部に出ることもありません。もちろん、調査では新型コロナウイルスの感染対策も徹底します。安心して調査にご協力頂ければと思います。

投票日当日の出口調査では、その結果が投票者の“縮図”となるよう調査します。
具体的には、統計的手法で調査対象となる投票所を選び、その投票所では「○○人おき」のように、有権者数に基づいて調査間隔を決めています。時間帯で調査対象者が偏らないようにするためです。このため、各投票所では、それぞれ一定の間隔をあけて投票者に質問します。
インターネット上では、「NHKの調査員の前を通ったが、出口調査への協力を求められなかった。ほんとうにちゃんと調査しているの?」という反応を見かけますが、それはこういう事情があるのです。投票所から出てくる人すべてに質問していると、調査結果に偏りが生じないとも限りません。(※あくまでもNHKの手法です。ほかの報道機関はまた違ったノウハウを持っています)
 
調査結果は、投票が締め切られる31日午後8時をもってテレビやラジオ、そしてインターネットで報道を始めます。具体的には、午後8時ちょうどに出口調査に基づいて「@@党は●●議席から○○議席をとりそうだ」と議席予測を速報します。 
また、出口調査で有権者の投票行動を詳しく分析し、開票速報番組の中でお伝えします。
多くの有権者にご協力頂いた出口調査、貴重な調査結果は個々の候補者の「当選確実」の判断に使うだけではありません。有権者はどういう判断をしたのかー。出口調査を徹底的に分析して説得力のある選挙報道をお届けしたいと思います。
なお、過去の衆議院選挙の出口調査の分析は、「北海道の衆議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…」の記事をご覧ください。東京の選挙担当部署で長く出口調査を担当した選挙大好き、札幌放送局のSデスクがニッチに分析しています。

記者の取材現場では…

一方、「当選確実」の判断にあたり、出口調査と同様に大切にしているのが、記者の情勢取材です。これがなかなか大変なんです。

各候補者が開く集会や街頭演説にどのくらい有権者が集まっているのか。そのうち陣営がかけた動員ではない有権者はどのくらいなのか。演説の反応はどうか。演説を聞くのを途中でやめて帰る人はどのくらいいるのか・・・。
道内7つの放送局の記者たちが、地域地域で政党や候補者に密着しながら、ときには有権者の方々にも直接、話を聞きながら、日夜、情勢取材を重ねています。
それを踏まえて、わたしたちは事前に、各候補者がどのくらいの票を取りそうか、どの候補者が優勢か、当落線上にいる候補者は誰と誰なのか、など情勢分析をしています。
こうした“頭の体操”をしておくと、仮に投票日当日の出口調査がゆがんだ場合でも、慌てずに対応できます。もっといえば、先ほど示した①の情勢取材、②の出口調査、そして③の開票状況の取材がうまく一致してくれれば、「当選確実」の確信を持てるのです。

その昔は“組織型”の選挙が主流で、各政党や各候補者はもちろん、支援する業界団体、地域に詳しい自治体関係者、農協や漁協といった組織、などなど丁寧に取材していけば、かなり正確に情勢を把握できました。
「選挙取材は足で稼ぐ」は、昔、よく先輩記者から言われたものです。しかし、最近の選挙は、そうした“選挙の事情通=プロ”を取材するだけでは、なかなか情勢をつかみにくくなっています。政党への支持は、最近はかつてほど強固ではなく、その時々で投票先を変えるような“ふわっと”した支持が増えているとの指摘もあります。つまり、“非組織型”の有権者がどう動くかを把握する必要があるのです。その代表例が、とくに支持する政党のない支持なし層、いわゆる無党派層です。
出口調査の結果をみると、衆議院選挙は知事選挙や市長選挙といった地方選挙と違って政党対決色が強まる分、無党派層の割合は少なめですが、それでも最後は無党派層の動向で勝敗が決まるケースは少なくありません。この動向をいかに正確につかむかが、最近の情勢取材ではカギとなっています。
無党派層は投票に行かないケースが少なくありません。(こうした状況を“寝る”とも言います)一方、無党派層が特定の候補者に集中して投票することがあります。(こうした状況を“雪崩を打つ”と言っています)“寝た子が起きた”場合、つまり無党派層が動いた選挙では、投票率は跳ね上がります。投票率は重要な指標です。“風”を読んで投票率をいかに正確に予想するかは、情勢取材の確からしさにもかかわってきます。つまり、「当選確実」を判断する上で確信を持てるかどうかにも関わってきます。

世論は動く?動かない?

いかに“非組織型”の有権者の投票動向を把握するかー。

なかなか答えが見つからないのが現状ですが、1つの材料として世論調査があります。
NHKでも国政選挙の前は毎週、全国の有権者を対象に電話による世論調査を行い、結果はニュース7などで紹介しています。「選挙への関心度」「投票に行くかどうか」の設問は、投票率を推し量る材料になりえます。
一方、NHKは行っていませんが、報道各社の中には、世論調査の結果などをもとに個別の選挙区について情勢を報道しているところもあります。「□□氏安定、ほかを引き離す」「○○氏先行、●●氏が追い上げる」「△△氏、▽▽氏、☆☆氏の混戦模様」などという記事をご覧になった方も多いと思います。こうした報道を受けて、その後、情勢がどう変わっていくか、あるいは変わらないかも1つのポイントになります。

ここでよく言われるのが、「アナウンス効果」です。このうち、優勢とされた候補者がさらに支持を広げていく場合、「バンドワゴン効果」が言われます。“勝ち馬に乗る”心理のことです。逆に、劣勢とされた候補者が盛り返す場合、「アンダードッグ効果」が言われます。“判官びいき”の心理のことで、いわゆる同情票のケースもあります。
このほか、政党幹部のちょっとした発言で、反発から情勢が一変することもありえます。こうした状況を“潮目が変わる”と言います。こうした有権者心理も踏まえて“風”がどう吹くのか-。情勢取材でわたしたちは常に意識しています。

いよいよ31日は投票日です。わたしたちは今回も、正確性を最も大切にしながら、「当選確実」を判断します。
ぜひ、NHKの開票速報番組をご覧ください。

衆院選の準備にあたる記者たち

2021年10月29日

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