NHK札幌放送局

「吉野地区の斜面のそばで」早坂信一さん

いぶりDAYひだか

2020年9月24日(木)午前11時28分 更新

大規模な土砂崩れで19人が亡くなった厚真町の吉野地区。地震から2年がたち、再び崩れることがないよう補修工事が進む。この地区の工事は来年3月には終わる予定だが、すぐに吉野地区に戻り住宅を再建する予定の住民はいない。それでも吉野地区に通い続ける人がいる。

土砂崩れが起きた斜面のそばの水田で、早坂信一さん(55)が農作業で汗を流していた。地震で両親を亡くしている。地区で唯一生き残った現役の農家でもある。仲間の農地約12ヘクタールを預かり、米や大豆などを育てている。

全然知らない人に田んぼを任せるより、知っている人に借りてもらう方がみんなの気持ちが安らぐんじゃないか。遠い将来のことは分からないけど、今できることをやろうかなって

受け継いだハウス

地震の翌年の春、斜面のそばの農業用ハウスで一人、稲の苗を育てる早坂さんの姿があった。吉野地区では壊れた住宅の撤去が終わっていない時期だった。自分の農機具が土砂で流されてしまった早坂さんは、地震で亡くなった農家仲間の滝本卓也さんのハウスを修理して、コメ作りに向けた準備を進めていた。
土砂は水田にも流れ込み、田んぼに水を引くための用水路も使えなくなっていた。それでも「仮の用水路の建設が間に合えば少しのコメは作れる」と、作業を進めていたのだ。

仲間を思い出しちゃうと止まっちゃう気がする。忘れるわけじゃないんだけど、極力意識しないでいようと思っている。田んぼをとりあえず青くしたいな。秋にそれなりの収穫ができれば、みんなも見ててくれるかなって

次の世代につなぐ田んぼ

ことし8月28日、地震前に使われていた用水路に初めて水が通った。周辺の道路の工事の終了に伴い、遅れていた用水路の工事もようやく終わったのだ。地震の発生から2年がたとうとしていた。
この区域の用水組合の組合長を務める早坂さんは、適度な水の量が流れるかどうか、水路のそばを歩きながら丁寧に確認した。すべての用水路に水が行き渡り、吉野地区の30ヘクタールの全ての農地でコメ作りが再開できることになった。
用水組合の前の組合長は、富里地区の中村初雄さん。さらにその前は、早坂さんの父・清さんが務めている。2人とも地震による土砂崩れで亡くなっていた。

先代の組合長に対して、元に戻ったことを報告できるのがうれしい。みんなの田んぼで水田をつくれるようになり、亡くなった人たちの家族にも何年か後に稲が植えてある田んぼを見せられるようになった。用水路も田んぼも今、元に戻さないと後世に残らなくなってしまう。次の世代につないでいくこと。それが今の自分にできることだし、やらなければいけないことだと思う

吉野地区は少しずつ地震前の姿に戻りつつある。早坂さんは、亡くなった人たちから受け継いだ田んぼを後世につなぐため、きょうも吉野地区に足を運ぶ。

(2020年9月24日)

中尾絢一 苫小牧支局記者
2016年入局。釧路局~苫小牧支局。胆振東部地震の発生当初から被災地取材を続けている。

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