NHK札幌放送局

縄文体験・真冬の竪穴住居に泊まってみた 後編

番組スタッフ

2021年5月12日(水)午後4時45分 更新

2021年、北海道・青森県・岩手県・秋田県の17の遺跡から構成される「北海道・北東北縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録が期待されています。豊かな自然の恵みを受けながら、1万年以上にわたり採集・漁労・狩猟により定住した縄文時代の人々。実際に縄文の人々はどんな生活をしていたのか? “実験考古学”という実験を通してその謎をひもとき、縄文人の心に迫りたいと思います。

実験考古学って?
石器や土器、住居などを復元し、実際に使ってみることにより使用目的や使用方法を実証的に解き明かす方法論です。本来の考古学は出土したものから言えることを積み上げていきますが、出土するものが少ないと研究がなかなか進まないという限界があります。そこで、遺跡などから得られた手がかりをもとに、考えられる可能性を体当たりで確かめていこうというのが実験考古学です。

真冬の竪穴住居、道具は?どこで寝る?

前編に引き続き、寒さの厳しい北日本の冬を縄文人はどのように過ごしていたのかという「謎」に迫っていきます。前編では料理などの実験を通し縄文時代の謎に迫りましたが、後編ではその続き、いよいよ真冬の宿泊実験に挑みます。今回も実験するのは私、NHK盛岡アナウンサー・佐藤龍文です。

この厳しい冬。乗り越えなければならないのは人も道具も一緒。まずは「縄文土器」の保管方法を探ります。厳しい寒さは土器にどのような変化をもたらしたのか、実験して調べてみましょう。

実験①「縄文土器」を住居の中、外、雪の下に一晩置いて、状態の変化を調べてみよう!

土器を竪穴住居の中と外、そして雪の下の3か所に置いてどのような変化があるのか調べてみました。
まず、家の中は柱の下にします。寒い外は丸太の上に。そしてもうひとつ雪の中ということでしたが、このまま置くと雪が入るので逆さにし、そこに雪をかぶせました。ひと晩置いて検証します。

結果は後ほど。
日も暮れ、そろそろ眠くなってくる時間になりました。さて、縄文人は住居内のどこで寝ていたのでしょうか。

実験②縄文人は住居のどこで寝ていたのか?

実験の様子は別の場所から学芸員の中市日女子(なかいち・ひめこ)さんに見守ってもらいます。

まず選んだのは、温かい炉のすぐそば。火をたくと室温が10℃ほどに上がることは前回の実験で分かりました。足は残り火で温かい。足を温めると眠れるというので、ここでちょっと横になってみます。

う~ん、なんかひんやりします・・・
床が冷たく、寝心地がよくありませんでした。では、温かい場所はどこなのか?温度によって色が変化するサーモカメラで見てみました。
すると・・・
床よりも天井に近いほうが赤色で、温度が高いことが分かります。

早速、上を目指しますが・・・

中市「上に行きましたが、大丈夫かな?」
龍文「下からの煙がどんどん上がってきます!」

上に行くほど煙が多く、とても寝られそうにありません。

次は、床と天井の間をとってみることに。ベッドのように少し高くなっている場所を選んでみました。ここは火から適度な距離があり、冷たい床からも離れているため、そこまで冷えていません。実は下が土で背中が温かいんです。
中市さん、「この場所は背中が温かいっていうのは、やってみないと分からないですよね」とちょっと驚いた様子。

  • 検証結果:地面より少し高くなっている場所の方が温かく寝られた

と、うとうとしかけたところで、中市さんから心配する声が。

中市さん
「(火が)消えかかったら、ちょっとやっぱりダメですよね。危険かもしれないですよね、寒くなって」

このまま朝まで寝てしまうと、火が消えた後に温度が下がって危険だと判断。寝る実験はここでギブアップ!

せめて、室内の温度変化だけでも検証しようと、スタッフが夜通し実験を続けました。

実験③住居内の温度はどう変化するのか?

夜11時、気温は9℃。
まきをくべたあと30分後には12度まで上昇しました。その後も30分おきに室温を計測しましたが、まきを追加しないとだんだんと室温が下がり、3時間後の午前2時には、火は完全に消え室温は氷点下になってしまいました。火が保たれたのは2時間程度でした。

では、縄文人はどうやって寝ていたのでしょうか?

中市さん
「家族で役割というわけじゃないですけれども、順番に誰かが薪を足していたのかなと考えられますよね。なので、ひとりで生活するには厳しいのかなと思いますよね」

縄文人は交代で火を絶やさないようにして寝ていたのではないか?というのが御所野の学芸員のみなさんの考えです。

冬のあいだ、どのくらいの燃料が必要だったのでしょうか。過去に御所野遺跡で実験した結果です。

1時間あたりに必要な薪の量      2.22キロ
24時間燃やし続ける        53.28キロ
冬の4か月間燃やし続ける    6446.88キロ 
(コナラの木に換算すると、約18本用意する必要があると考えられる)

実験①の土器はどうなった?

厳しい冬でも、必ずやってくる朝。
一晩置いていた土器がどうなっているのか?およそ10時間経った土器の状態を確認すると・・・

住居の中と、雪の中に埋めたものは変化がありませんでした。しかし、外に置いた土器の数か所にヒビが入ってしまいました。人の暮らしだけではなく、道具にも変化がある厳しい状況と言えます。

外に置いた土器にはヒビが・・・
古市さん
「雪の中は一定の温度が保たれるのがよかったのかなと思いますよね。外だと温度の差がどんどん違っていくからそれで割れたのかな。ただ縄文人は、土器が割れたとかヒビが入ったからといってすぐに捨てるわけではなく、結構、補修してまた再利用しています。道具を大事にしていたのは分かっているんです」

御所野で発掘された土器の中には、修復された跡が残るものもあります。割れた部分を、縄を通してつなげて使っていたのではないかと考えられています。

今回の実験はここまで。古市さんによると、私が竪穴住居で寝たときは、小さい”いびき”をかくくらいまでいったようです。大寒の日のロケで、体力を消耗していたのもあったかもしれません。しかし縄文人、真冬は寝るにもひと苦労とは・・・

御所野遺跡は川沿いの高台にある村で、山での暮らしがうかがえる貴重な場所です。今回のぞいてみた縄文の扉の先には、豊かで厳しい自然と向き合いながら暮らしていた縄文人の知恵と工夫がありました。

縄文体験・真冬の竪穴住居に泊まってみた 前編 はこちら

動画でもご覧いただけます。

縄文の扉(NHK盛岡放送局)

「北海道・北東北縄文遺跡群」に注目!

2021年、世界文化遺産への登録を目指している「北海道・北東北縄文遺跡群」は、北海道・青森県・岩手県・秋田県に点在する17の遺跡から構成されています。NHKでは、札幌・室蘭・函館・青森・盛岡・秋田の6局が総力を挙げてこの縄文の魅力を掘り起こし、さまざまな形で発信しています。

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