“♪~まんまる モフモフ シマエナガ 雪の妖精 シマエナガ”。
体長14センチの白い小鳥、シマエナガ。北海道だけに生息する鳥ですが、見た目のかわいさから、全国で人気が高まっています。このシマエナガをテーマにした歌が完成しました。曲に込められた思いとは。
※記事の最後には歌の一部の動画もあります。ぜひお聴き下さい。
(釧路局記者 島中俊輔)
かわいいだけじゃない魅力
釧路市の春採湖畔で開かれた野鳥観察会。集まった約70人のお目当ては“雪の妖精”とも呼ばれるシマエナガです。講師を務めたのは曲を監修した自然写真家の山本光一さん。シマエナガの写真を撮り続けていますが、その理由は見た目のかわいらしさだけではありません。
▼つがい以外の鳥が子育てをサポートする、仲間を大切にするシマエナガ
▼ほかの種類の小鳥たちと群れを作る、平和主義なシマエナガ
▼巣が壊れても何度も作り直す、あきらめないシマエナガ

こうした生態に魅了された山本さんはみずからを「シマエナガの伝道師」と称して魅力を伝えています。
観察を始めて約15分、「ジュリ…ジュリ…」と特徴的な鳴き声が聞こえてきました。見上げると木の上に5~6羽のシマエナガの姿がありました。小さな体をせわしなく動かしながら枝の間を素早く飛び回ります。参加者たちは歓声を上げて双眼鏡を向けたり、写真を撮ったりしていました。
自然写真家 山本光一さん
「こんなに簡単に見られるなんて、めちゃくちゃラッキーです。シマエナガはどこにでもいるけど、なかなか見られない鳥なんです。春採湖に来て探してみたら、この日が特別だったとわかりますよ」

作曲は元音楽教諭
シマエナガをテーマにした曲は去年10月に完成しました。
作曲したのは釧路市の元音楽教諭の木下玲二さん。作詞を担当したのはその教え子の上恵子さん。2人はこれまでもコンビを組んでさまざまな作曲活動を行ってきました。
木下さんは去年10月、シマエナガをテーマにした講演会に参加。山本さんの話を聴いてかわいらしさやたくましさに感銘を受けたと言います。「シマエナガの歌を作りたい」と思い立ち、すぐに山本さんに相談しました。シマエナガのグッズや絵本はすでに出ていますが、歌はこれまでありませんでした。「ぜひやりましょう!」山本さんとも意気投合し、一緒に曲作りを始めることになりました。
上さんは、山本さんの写真集を参考に歌詞を約1週間で書き上げました。懸命に子育てをするところや巣作りが上手なところなど生態を詳しく盛り込みました。曲のタイトルは「まんまるモフモフ」。シマエナガの見た目をストレートに表したこの言葉は、写真集の帯に書かれていた言葉からとりました。

作曲・木下玲二さん
「シマエナガってすごい鳥なんだな、と山本さんの講演を聞いて思いました。とにかく子どもが楽しく喜んで歌えるようなメロディーや曲調を考えました」
作詞・上恵子さん
「シマエナガはかわいいことは知っていましたが、その生態を知ると人間もまねしたくなるような優しさを持つ素晴らしい鳥だなと思いました。シマエナガの生態や環境をできるだけ多くの人に知ってもらって自然をずっと守っていきたいという思いで詞を書きました」

左から木下玲二さん、上恵子さん、山本光一さん
完成した曲を子どもたちに
出来上がった曲を子どもたちに歌ってもらいたい。
その思いに応えてくれたのが、北海道教育大学附属釧路義務教育学校の2年生の児童たちです。元音楽教諭の木下さんが現役時代に音楽を教えていた学校です。12月の学芸会で「まんまるモフモフ」を合唱してくれることになりました。
その前に、木下さんらは学校を訪問して、みずからタクトを振るいながら子どもたちに歌唱指導をしました。「かわいいシマエナガを頭に浮かべながら、優しい気持ちで歌ってください」。元気いっぱいに歌うよりも優しさを込めた声で歌うこと、シマエナガのように体を左右に揺らして楽しく歌うことなどをアドバイスしました。

シマエナガの気持ちを考えながら歌った子どもたち
そして迎えた本番の学芸会。子どもたちは木下さんのアドバイスを生かし、体を思い思いに揺らしながら歌いきりました。
まんまるモフモフを歌った子どもたち
「うまく歌えました」
「シマエナガの気持ちを考えながら歌えました」
歌を通してシマエナガの生態を学び、そこから命の大切さなどを学んでほしい。
山本さん、木下さん、上さん。3人の思いは子どもたちに届いたようです。
作曲 木下玲二さん
「子どもたちが歌ってくれて本当にうれしいです。シマエナガのかわいらしさ、たくましさ、優しさを感じてもらってシマエナガを大事にしていってもらいたい」
監修した自然写真家 山本光一さん
「歌詞に生態をきちんと織り込みながら、心に響く、聞いている人が感動するいい歌だと改めて思いました。僕もウルっときてしまった。人間社会ではいろんな問題がありますが、シマエナガの生態を通して、他を受け入れる、命を大切にすることに気づき、心にとめてくれるようになってほしいなと思います」

“まんまるモフモフ”
作詞/上恵子 作曲/木下玲二 監修/山本光一
1、
まんまる モフモフ シマエナガ
雪の妖精 シマエナガ
枯葉とコケと ふかふか羽毛
とっても ステキな 建築家
小首をかしげて 巣をつくる
柳の枝に マイホーム
2、
まんまる モフモフ シマエナガ
雪の妖精 シマエナガ
かわいいヒナに エサを運んで
とっても 忙しい 子だくさん
フンも 遠くへ すてに行く
若葉の枝に ヒナだんご
3、
まんまる モフモフ シマエナガ
雪の妖精 シマエナガ
コゲラやヒガラ キクイタダキと
とっても なかよし フレンドリー
つぶらな瞳で ごあいさつ
枯葉の枝に おしゃべりタイム
この林が 大好き
あの森も 谷をわたる この風も
この林が 大好き
あの森も 谷をわたる この風も


シマエナガ絵本に込めた思い
「シマエナガ」制作ウラ話 ~シマエナガに会うために一番大切なこと~