NHK札幌放送局

滞在1週目 宗谷のアナザーストーリー

ローカルフレンズ制作班

2021年4月13日(火)午後0時13分 更新

ディレクターが地域に滞在して「宝」を探す新番組「ローカルフレンズ滞在記」。第一弾の舞台は、宗谷地方です。滞在1週目には、スノーボードチームを支えるお坊さんや、地域にダンスを根付かせたパイオニア、ロボット研究者との出会いがありました。(越村D)

スノーボードとお坊さん

期待と不安を抱きながらはじまった宗谷での滞在。初日から、スノボードショップの経営者であり、スノーボードチームの代表でもある木村亘さんとアツい出会いがありました。(詳細はこちら

実はそのあと、もうひとつ素敵な出会いがあったんです。それは、木村さんに、チームのトレーニング内容を聞いているときのこと。木村さんがさらっとこんなことを言いました。

木村さん「メンタルトレーニングをお坊さんがやってくれているんだよ」

予想外の展開に耳を疑いました。なんでも、稚内にあるお寺のお坊さんが、チームに所属する子どもたちを相手に、定期的に“話”をしているそうです。さっそく、木村さんに連絡をお願いし、お坊さんに会えることになりました。

井上耕心さん(43)
稚内出身 浄土宗霊明山大林寺 5代目住職

井上さんは、明治18年にできたお寺の住職。住職になる前は、道外でスキーのコーチとして働いていた経歴をもっています。稚内に戻ったあと木村さんと出会い、まちでウィンタースポーツを盛り上げようという考えにすぐ賛同したといいます。井上さんのお寺にお邪魔して、どんなことを子どもたちに伝えているのか聞きました。

井上さんは、スノーボードがオフのシーズンに、月1回のペースに仏教の教えをかみ砕いて伝えています。内容は、努力をこつこつと続けるための考え方や、落ち込んだ時のモチベーションの保ち方といった、スノーボードで勝つための話だけにとどまりません。井上さんは、挨拶の大切さや他人の話に耳を傾けることの大切さも説いているといいます。一見、スノーボードと関係のないことに思えますが、どういうことなのでしょうか。

井上さん「みんな競技を頑張っています。だけど、スノーボーダーというだけで“チャラく”見られがち。だからこそ、応援してもらえる選手になってほしいんです」

「やってみて子どもたちの反応が悪ければやめよう」と井上さんと木村さんで話し合ってはじめた取り組みでしたが、気づけば50回ほどを開催する恒例行事となっています。

スノーボードに打ち込む子どもたちを、お坊さんが支える。それは稚内だからできたことかもしれないと井上さんは語ります。

井上さん「前例がないなら、自分たちがモデルケースになる。それは小さい町のほうがやりやすいと個人的には思います」

首都圏のベッドタウンで生まれ育った僕は、学校や親以外の誰かから何かを教わる経験がありません。木村さんと井上さんの取り組みや、その前提となる二人のつながりはとても新鮮に思えました。

ダンスと水産 二足のわらじ

まだまだ素敵な出会いは続きます。スノーボードを稚内に根付かせようと励む木村さんや井上さんとの出会いを、尾崎さんに報告した時のことです。

尾崎さん「ダンスを稚内で根付かせた人もいるよ」

さっそく、尾崎さんを通して取材を申し込みました。

小笠原雄輝さん(35)/吉田信久さん(35)
道北地区のストリートダンスを普及する「宗谷DANCE PROJECT」を立ち上げ、子どもから大人まで幅広い年代にダンスのレッスンを行う

小笠原さんには滞在2日目に、吉田さんには滞在3日目に、尾崎さんのゲストハウスにお越しいただき、お話を聞くことができました。2人が取り組むのは、子どもから大人まで幅広い年代を対象に行う、ストリートダンスのレッスン。稚内にとどまらず、猿払や豊富にまで赴き、体育館などをかりて教えているといいます。

小笠原さんが始めたきっかけは、「稚内ではダンスできない」という言葉への違和感でした。都市部にでていく人も少なくない現状はあるものの、地域がネガティブな言い方をされるのは嫌だったといいます。小笠原さんと吉田さんは、10年前にプロジェクトを設立。2人ともダンスは全くの未経験でしたが、札幌で活動するダンサーに稚内まで来てもらって学ぶなど、ゼロから技術の習得にはげみました。プロジェクトの構想を練り始めた時から2人が相談していたのが、今回のローカルフレンズである尾崎さんでした。そんな2人の本業は、なんと水産業。小笠原さんは、水産加工工場で働き、吉田さんはタコなどをとる漁師をしています。ダンスのレッスンは仕事終わりの夕方からなので、体力的にきつくないのか聞いてみました。

小笠原さん「子どもたちも楽しみにしているんで、やらなきゃだめって思いがあります」
吉田さん「自分が踊っているのも楽しいから、疲れはあまり気にならないですね」

まちに対する思いで動く小笠原さんと、純粋な楽しみで動く吉田さんは、とてもよいコンビに見えます。

ゼロから始めた2人の取り組みが10年続いたことを尾崎さんも感心していました。

尾崎さん「行動力はもともとあったから、俺が2人にやったのはアドバイス程度。10年続いているていうのがすごいよね」

稚内がロボットのまちに!?

滞在6日目も、ゲストハウスで素敵な出会いがありました。突然、尾崎さんからこんなことを言われました。

尾崎さん「今日宿泊する方で面白い人がいるから紹介するね」
三河正彦さん(52)
筑波大学 図書館情報メディア系 准教授

三河さんは、茨城県にある筑波大学でロボットを研究しているそう。なぜ稚内にいらっしゃるのか聞いたところ、これまた意外な答えが返ってきました。

三河さん「実は、稚内はロボットの研究にむいているんです」

いま三河さんは、まちづくり稚内、稚内北星学園大学、中部大学と共同で、稚内をフィールドに研究を進めています。
三河さんの研究課題はずばり三つ。
①雪道でも問題なく移動できる
②人に親しみを持ってもらえる
③遠隔操作を安定してできる
です。

一つ目については、雪道でロボットが問題なく走行できるようにするための研究ですが、稚内は雪の量が「多すぎず、少なすぎない」環境だといいます。二つ目は、ロボット研究のなかでもっとも大きな課題です。どういうことか、2018年に稚内の商店街で、三河さんたちが行った実証実験をご覧下さい。

雪だるまのような見た目をしたロボットが、商店街にであるき、みためや動きがどうあれば人に怖がられないかを探る実験です。こうした実験は、人が多く行き交う都市部ではハードルが高いですが、稚内では比較的理解が得られやすいといいます。そして三つ目については、今年新たな取り組みが始まろうとしています。それが、稚内の駅ビルに遠隔操作できるロボットを設置するというもの。世界中の誰でもアクセスできるようにし、駅ビルから数百メートルの範囲でまちなかを移動できるように設計。稚内のまちなみを遠隔で楽しんでもらおうという試みです。コロナ禍で、以前と同じような旅行が難しいなかで、稚内を広く知ってもらうきっかけになればと考えているそうです。

滞在一週間、本当にいろんな方と出会うことができました。そして、どなたも“稚内だからこそ”の思いや理由を持っていました。地域で生きるとはどういうことなのか、これからの滞在でも考えつづけていきます。

2021年4月6日

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