NHK札幌放送局

サウナの後は灯台へ 函館 恵山岬灯台から活性化を

道南web

2023年1月16日(月)午後6時09分 更新

函館市東部にある恵山岬灯台。その足元に小さな黒いテントが設置されました。ポンチョをはおった人たちが寒さに震えながら、次々と入っていきます。実はこれ野外でも楽しめる「テントサウナ」なんです。灯台とサウナを組み合わせて「ととのう」一風変わったイベントを取材しました。

「サウナー」たちが体験

「ばっちりととのいました!」

笑顔で話してくれたのは、イベントに参加したサウナ愛好家「サウナー」たちです。
観光の閑散期である冬に観光客誘致につなげようと試験的に開かれたこのイベント。野外に設置したテントサウナで温まったあと、外気浴として灯台にのぼって体を冷まして、心身ともにすっきり「ととのう」という内容です。

水着やポンチョ、サウナハットなどを身につけたサウナーたち。この日の気温は5度以下で、寒さに震えながら、恵山岬灯台のすぐそばに設けられたテントサウナに足早に入っていきます。最高で90度まで上がるというこのサウナ。最初は低めの温度でしたが、入っているうちにどんどん温度が上がっていきます。

思い思いに温まって汗をかいたら外へ。体からは湯気がたちのぼり、なんとも温かそう。そのまま高さ15メートルほどの場所にある恵山岬灯台のバルコニーまで登ります。

この日は時折、雨が降ったり強い風が吹いたりするあいにくの天候でしたが、海を眺めながら体を冷まし「ととのった」様子の皆さん。感想は?

「ちょっと寒い(笑)。でも景色がめちゃくちゃいいですね。風が強いけど。でもこんな経験できないので貴重です」

「初めての体験です。普通のサウナでは経験できない、俗世から離れたような経験ができました。ここは北海道の中でも端っこでなかなか来る機会がない場所ですが、こうしたイベントがあると行くきっかけになるし、すごく素敵な思い出になるんじゃないかなと思いました」

「灯台だけに風が強くてそこがオリジナルで可能性はあるんじゃないかな。北海道ならでは、恵山ならではと思って楽しみました。ここでしかできないので最高ですね」

灯台の価値を見直して活性化へ

そもそも、なぜ灯台とサウナを組み合わせることになったのでしょうか?
きっかけは、恵山岬灯台の魅力を生かして地域の活性化につなげようという動きです。
そのためには灯台の価値を見直すことが重要だと、函館市や市内の企業でつくる「恵山岬灯台活用協議会」が去年6月に発足し、活動を続けてきました。

恵山岬灯台に光がともったのは、1890年(明治23年)。津軽海峡の出入り口を示す灯台で、太平洋戦争時には空襲の被害にあい建て直されたものの、海の難所である恵山岬沖の船の安全な航行を守り支えてきました。
しかし、最近ではGPSの発達などによって灯台が担ってきた航路標識の役割が低下。現代では文化財や観光資源としての可能性も含め、あらためてその価値を見直すことが問われています。
こうしたなか協議会はこれまでにも、恵山岬灯台の周辺を散策しながら、岬や灯台について紹介する「ガイドウオーク」を開くなどしてきました。そして今回、「ほかにない何かユニークなイベントができないか?」と考えていたところ、メンバーにサウナ好きがいたことに加えて最近ではサウナ人気が高まっていることも後押しして、灯台とサウナを組み合わせるアイデアが生まれたそうです。

サウナ飯も楽しんで

サウナと灯台について理解を深め、実際に体験した皆さん。最後に待っていたのはサウナの後に食べる「サウナ飯(めし)」です。

サウナ文化で知られるフィンランドの料理「サーモンクリームスープ」や、貝殻が灯台に似ていることから「灯台つぶ」と呼ばれるつぶ貝の料理がふるまわれました。

参加者
「ととのっておいしいもご飯食べられて最高です。サウナが好きな人は増えているのでどんどん人気の出るイベントだと思う。サウナのイベント自体が少ないのでまた参加したいと思います」

ここでしかできない体験を

主催した協議会は、参加者からの感想や意見をもとに内容を改善するため、アンケートを実施。後日、寄せられた意見を協議会の方から教えていただきました。

・絶景を眺められ開放感が最高、屋内のサウナでは体験できない
・移動の時など冬の開催で少し寒かった
・風が強かったので風よけや休憩室があると助かる
・遠出することになるので大人数ではなく少人数での体験の方がプレミアム感があってよいのではないか
・灯台について事前に伝わっていると参加する人がより増えると思う
・夜は星がきれいなので夜に開催してみるのはどうか

参加者全員が海や灯台への関心が高まったと答え、開催されたらまた参加したいと回答しました。
こうした意見をふまえたうえで、次回は規模をもう少し大きくして一般客が楽しめる同様のサウナイベントを今年中に開きたいということです。

恵山岬灯台活用協議会 品川真一郎事務局長
「今回は天気が悪かったですが、参加した方の反応を見て今後に向けた手応えを感じました。どうしても天候に左右されるところはありますが、海の見える灯台のバルコニーでととのう体験はなかなかできないですし、ここでしか体験できないことを提供していきたいです」

「アツイ」サウナの力とあわせて恵山岬灯台の魅力を発信し、活性化につなげられるか。
今後の盛り上がりに期待です。

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