NHK札幌放送局

「ディープな信号機の世界にお連れします」シラベルカ#69

シラベルカ

2021年11月19日(金)午後3時30分 更新

町なかの信号機は道路交通システムを支える大切なインフラとして私たちの社会を支えてくれています。でも、信号機の色はよく見ていても、信号機の本体をじっくり観察することってあまりないですよね。今回はそんな知られざる信号機の世界を皆さんとともに見ていきたいと思います。

札幌市内に珍しい交差点が?

取材のきっかけを与えてくれたのは、札幌市に住む16歳の高校生からの質問でした。

「交差点に縦型と横型両方が1つの支柱についている信号機を見つけました。どうして縦型と横型の信号機が混在しているんでしょうか?」

北海道内では信号機に降り積もる雪の重さを軽減するため、縦型にして設置されるケースが多いことは結構、知られています。それなのに、縦と横が混在するって一体、どういうこと?さっそく投稿者と連絡を取り、その珍しい交差点とやらに行ってみることに。謎を解き明かしていった先には、新しい世界が広がっていましたよ!

投稿者は「大」の信号機ファン

現場の交差点で待ち合わせたのは16歳の植松琉以(るい)さん。植松さんは信号機と広島カープが大好きな高校2年生です。

「信号機には普通に見えて意外と不思議なところがある。いろんな種類があるところも好きです」

目を輝かせながら魅力を紹介してくれました。学校が休みの日は、信号機を見て回るのが楽しみの1つだとか。そんなときに、珍しい信号機を見つけたので投稿してくれたとのことでした。

それがこちら。札幌市西区西町にある交差点の信号機です。1つの支柱の片面に横型が、裏面には縦型が据え付けられています。

植松さんは「同じ支柱に縦・横、別々の信号機が付いているのはなぜか」と疑問を持ったと言います。たしかに言われてみれば、なぜ信号機の向きをそろえなかったのか不思議に感じてきました。植松さんの目の付けどころに感服です。
そもそも、どうしてここまで信号機にハマってしまったのか尋ねてみると、数年前に見たとあるテレビ番組がきっかけだったそうです。信号機に詳しい人物が魅力を紹介する内容で、その人物に憧れて自身も興味を持ったということです。

当時を振り返って熱く語る植松さんに、意味ありげに近づく男性が…。

「信号機」界のレジェンド参戦

突然、登場したのは丹羽拳士朗さん。知る人ぞ知る、信号機界のレジェンドともいわれる人です。実は植松さんがテレビ番組で見たという人物はこの丹羽さんのことで、今回はサプライズのご対面となりました。

丹羽さんは札幌市出身。4歳で信号機に興味を持ち、小学6年生の時にホームページを立ち上げて以来、47都道府県を回って各地の信号機を紹介することに情熱を注いできました。ふだんは道職員として仕事をしていますが、今も休暇などを利用して特色のある信号機を探し求めているのだそうです。

それでは改めて、なぜここの交差点の信号機は、縦型と横型が混在しているのか、レジェンド・丹羽さんに尋ねてみたところ…。

「信号機の手前に、案内標識があるからだと思います」

本州では横型の信号機が主流ですが、北海道内では雪が積もるのを防ぐために縦型の信号機が多く採用されています。

しかし、この交差点の手前には道路をまたぐ形で案内標識があります。丹羽さんは、この標識が邪魔をして信号機が見えにくくなるのを防ぐために、あえて横型にしたのではないかと指摘しました。

実際に過去の写真と見比べてみると、交差点に案内標識が設置される以前は縦型の信号機だったのに、標識の設置後は横型に変わっていたのです。

それでは、どうして裏側の信号機は縦型になっているのでしょうか。

丹羽さんはこう指摘します。

「通常であれば、裏側も横型でそろえるところですが、そちらには道路情報を流す電光掲示板が付いています。電光掲示板が横に長いので、そこに横型の信号機を付けてしまうと今度は信号機自体が目立ちにくくなる心配が出てきます。そういうわけで、電光掲示板とセットで設置するには、縦型の方が都合が良かったのだろうと思います」

信号機を設置した北海道警察本部に聞いたところ、はっきりした記録は残っていないとのことでしたが、丹羽さんが指摘した理由が考えられるとの回答を得ました。

丹羽さんは「あくまでも車用の信号機なので、ドライバーが信号の色をきちんと識別できるようにするにはどんな向きで設置すればいいのか考慮されているのでは」と話していました。

丹羽さんの説明によれば、1本の支柱に縦と横の信号機が付いているのは非常に珍しいということで、植松さんも納得したようにうなずきながら話を聞いていました。

珍しい信号機はほかにも

投稿した植松さんの疑問は一件落着、ほぼ解明することができましたが、私たち取材班の好奇心にも火がついてしまいました。ほかにも珍しい信号機が知りたい!

そうリクエストしたところ、2人が口をそろえて言ったのが「新千歳空港にあります」との答え。そうとなったら、この目で見たい。取材班は2人を伴い、空港へと向かったのでした。

到着して、まず植松さんがイチ押しだと紹介してくれたのがこちら。

「赤色の部分に付いたひさしが、黄色と青色のものと比べてずいぶんと大きいのが特徴です。雪と関係があると思っています」

信号機に採用されているLEDは発熱しにくいため雪がついても溶けず、色が見えづらくなることがあります。丹羽さんは、植松さんの予想したとおり雪対策として赤信号のひさしだけを試験的に長くしてみたのではないかと分析してくれました。こうした長いひさしと、短いひさしを組み合わせた信号機は「おそらく新千歳空港のここだけでしか見られない」という激レアなものなのだそうです。

丹羽さんもこの信号機をよく撮影しに来るということですが、その存在を知っていた植松さんに対して、レジェンドから「お目が高い」と、お褒めのことばが。やったね!植松さん!

雪国ならではの対策が次々と

続いては丹羽さんが、とても興味深い信号機を紹介してくれました。

一見、普通のものと変わりありませんが、近くで見てみるとLEDを覆うフィルターに線が2本入っています。これは電熱線で、ついた雪を溶かすためのものだそうです。

信号機には、厳しい気候の中でも私たちが安全を確保できるための工夫が詰まっているのだと改めて実感しました。

「もし信号機が見えなくなったら交通事故に直結してしまいます。LEDの信号機はどうしても雪がつきやすいので、従来の電球タイプの信号機の方が見やすいという話は結構よく聞きます。つまり、現状では雪対策の根本的な解決には至っていないので、画期的な信号機の開発が待たれると思います」(丹羽さん)

今回の取材を通して、何の変哲もないありふれた信号機にみえても、1つ1つが考え抜かれて設置されていることを知りました。何事も探究して見ていくとこんな世界が広がっているんですね。皆さんも外に出たら信号機の本体にも目を向けてみて下さい。新たな発見があるかも知れませんよ。

札幌局 ディレクター上村勇人/記者 関口祥子

2021年11月16日放送

北海道の交通についてシラベルカ!関連記事
#48 車がぐるぐる、旭川の名所ロータリー

シラベルカ トップページはこちら

シラベルカへの投稿はこちらから


関連情報

「前向き駐車」、実は危険って本当? シラベルカ#47

シラベルカ

2021年4月14日(水)午後4時08分 更新

「士別市は地震が少ないってホント?」 シラベルカ#85

シラベルカ

2022年4月11日(月)午後5時02分 更新

新千歳空港で北海道内179市町村の特産品全部そろうか?調べ…

シラベルカ

2021年7月6日(火)午後5時29分 更新

上に戻る