NHK札幌放送局

コロナ禍の愛は国境を越えて シラベルカ#41続報

シラベルカ

2021年6月7日(月)午後3時51分 更新

「アメリカ在住の妻と日本で暮らしたいのに、コロナ禍で来日できない。家族なのになぜ?」 

愛する人と会うことさえ「不要不急」とされてしまうのか?シラベルカに寄せられた1通の投稿をきっかけに国際結婚をした夫婦の半年にわたる取材が始まりました。ビザが発給されずに離ればなれになっていた二人は5月、ついに再会を果たしました。見えてきたのは試練を乗り越えようと励まし合う夫婦の「深い絆」。会いたい人に会えない今の時代、夫婦はコロナ禍を生きるわたしたちに大切なヒントを残してくれました。

自分と愛する人を信じ抜く 
同じように困難に直面している人を想う
そして、ともに歩んでいくこと

取材・撮影:前川フランク光カメラマン(札幌放送局)

前回のシラベルカ 

旭川市に住む冨田雅史(とみた・まさし)さんとアメリカに住むケボニア・アントワネット・グラントさんは日米両国で結婚が認められました。来日に必要となる書類や資格も取得していたのに、NYの日本総領事館から「緊急事態宣言中はビザの発給はできない」と判断されてしまい、ケボニアさんは冨田さんの待つ旭川に行くことが出来ませんでした。

「配偶者ビザの発行を待つしかない」と我慢の日々を夫婦は過ごしていました。

詳しくはこちら→シラベルカ#41 家族でも入国できないって?!

他人事ではない

「家族に会えない」という冨田さんの訴えは、私には他人事とは思えませんでした。

カナダ人の父と日本人の母の間に生まれた私も、このコロナ禍でカナダに住む父とは2年近く会えていません。

仕事や持病の関係で父は日本に来ることができません。また、私がカナダを訪れたとしても日本に再入国するには2週間の自主隔離が必要だからです。

冨田さんが抱える問題は、自分や多くの国際結婚をした家族たちに起きていることの延長線上ではないか

そう考えた私は2月の放送後も取材を継続しました。

ビザを阻んでいた緊急事態宣言が解除 しかし新たな壁が

3月下旬、状況が大きく動き始めました。

2度目の緊急事態宣言が解除され、ケボニアさんが来日するために必要なビザが発給されることとなりました。

しかし、具体的な来日の予定は立たないままで、冨田さんも複雑な心境を語ります。

冨田さん
「ほっとしたのが正直なところ。ただ、『実際に入国できるのはいつ』というのが、まだ見えていないので、彼女も困っている状態です。」

アメリカから日本まで、長く遠い道のり

結婚から4ヶ月あまり、ようやくビザがおりたケボニアさん。

アメリカでの住まいを引き払い、航空券を予約しましたが、ここでも新たな問題に直面しました。

海外から日本へ来る人には出発までの72時間以内にPCR検査をする事が求められています。そして日本へのフライトに乗るためには検査後に発効される「陰性証明書」を提出する必要があります。

ケボニアさん
「さっそくPCR検査を受けて、オンラインでは陰性証明をもらえたのですが、正式な書類の発行に3日間かかってしまい、フライトを乗るための72時間以内の陰性証明ができなくなってしまいました。そのため予約していたフライトもキャンセルし、日本へ到着する日も先延ばしになってしまいました。」

その後、ケボニアさんは家から車で3時間かけ、日系のクリニックでPCR検査を受け、陰性証明を改めて取得しました。

こうしたことからケボニアさんの出国は1ヶ月近く遅れてしまいました。

日本に着いたものの、自主隔離の壁

結婚から5ヶ月。ケボニアさんはようやく日本へたどり着きました。

ここから長い「自主隔離」が始まりました。

アメリカから羽田空港に到着するケボニアさんが北海道へ渡る前には14日間の自主隔離期間が必要です。この期間は、指定された空港近くの宿泊施設のほか、マイカーなどで自宅まで移動して自主隔離をすることが認められています。

しかし、冨田さんのいる北海道に車で渡るためのフェリーは、新幹線や飛行機と同様に公共交通機関に該当するため、利用することができません。

このため、ケボニアさんは10万円あまりを自己負担し、羽田空港近くのホテルで1人過ごすことになりました。

同じ日本にいても会えない2週間。2人は電話やメッセージを交わし続けました。

冨田さん
「妻も心細いところがあると思います。できれば2人でその2週間を過ごしたかったです。ただ、今は厳しい状況にあるのですけれども、逆にこれを乗り越えていけば、お互いにすごく結びつきは強くなると信じています。」

再会の日

取材をはじめておよそ半年が経った5月中旬。

北海道の長い冬もようやく終わり、旭川の街は穏やかな春の日差しに包まれていました。

ついに夫婦が再会を果たす日がやってきました。

私は小さなビデオカメラを片手に、妻と再会するために空港へ向かう冨田さんの車に乗せていただきました。

冨田さん
「結婚の手続きをはじめてからだともう1年弱になるのかな。入籍してからはざっと5ヶ月ですかね。本当は雪がある時期にこっちに来れる予定でずっと組んでいたので、時間がやっぱりかかったな。っていうのが正直な感想ですね。もう少し来日がはやければ、桜がきれいだったんですけれどね。 彼女もそれを見たがっていて、それが少し残念ですね。」

コロナ禍の国際結婚。夫婦で歩んできた道のりは平坦なものではありませんでした。

5月18日13時、羽田からケボニアさんを乗せた飛行機が旭川空港に到着しました。

冨田さんは到着した飛行機をじっと見つめていました。

冨田さん
「やっとっていう感じですね。無事についたっていうのが一番ですね。」

続々と飛行機からお客さんが到着ロビーへ降りてきます。

冨田さんは静かに、けれども、どこか落ち着かない様子でケボニアさんを待ちます。

そして再会の瞬間。

冨田さん
「やっとついた、やっとこれた。」
ケボニアさん
「はい」

1年以上、長い困難のなか夫婦が求め続けた瞬間でした。

ケボニアさん
「たしかに日本に来るまでに時間がかかりました。
でも毎日彼のことを考えて、頑張るよと思っていました。
本当に最高の気分です。ここで私の人生が始まるんだと感じています。」

求めよ さらば与えられん

25組に1組。

日本で結婚するカップルは年間50万組ほどで、そのうち2万組以上は国際結婚に該当するとされています。冨田さんとケボニアさんのような家族の形はけっして珍しいものではありません。

現在、日本政府は「特段の事情」として日本人や永住権を持つ人に対して、ビザの申請を認めています。一方で、結婚を前提とした交際をしている国際カップルも多くいますが、有効な支援は見いだせていません。また、仕事や研究などで日本に長期滞在している外国人が家族を呼ぶことは原則として不可能なままです。

コロナ禍で大切な人と会えないまま、苦しい時を過ごしている人がまだ多い現状が課題として残されています。

今回の取材では、このコロナ禍において支援のない状況を余儀なくされている方が多くいることがわかりました。家族や大切な人と会えない寂しさや辛さは、きっとこの時代に多くの人が感じていることなのではないでしょうか。

取材をした冨田夫妻や石井さんのほかにも、日本や世界で遠く離れた大切な人と再会を果たそうと力を尽くしている人が多くいます。

ケボニアさんは同じ境遇にある人に向け、こうメッセージを寄せてくれました。

「愛する人がいるのに、決して会うことができない。これは言葉に言い表せない辛さです。私たちにできることは自分を信じること。そして家族の無事を信じることです。」

取材を通して、いま思うこと

先行きが見えず、不安な時代に生きているからこそ、信じ抜くこと。

ささくれた気持ちに心が飲み込まれてしまいそうになるけれど、そんなときこそ愛する人や困難に直面している人を思い、ともに歩むこと。

コロナ禍を生きる夫婦の歩みから、大切なメッセージを受け取った取材でした。

取材・撮影:前川フランク光カメラマン(札幌放送局)
2021年6月7日

英語版もあります。
English article about internartional couples in this COVID-19 pandemic is also available !

Love and Marriage in the Time of Coronavirus #41


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シラベルカ#41家族でも入国できないって!?

前回までの取材記はこちら。国際結婚した2人の前に立ちはだかる壁とは?世界中に広がる#LoveIsNotTourism運動で悩みを共有しました。ぜひご覧ください!

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