NHK札幌放送局

北海道のエンタメをけん引して30年、鈴井貴之さん

ほっとニュースweb

2022年8月5日(金)午後1時23分 更新

タレント、俳優、映画監督など多彩に活躍する、赤平市出身の鈴井貴之さん。札幌に活動の拠点を構える決断をしてから、ことしで30年の節目を迎えました。

 「芸能人が活躍できるのは、東京以外にない!」

 そんな芸能界の常識と闘ってきたと話す鈴井さん。北海道発のエンターテインメントにかける思いに迫りました。 (札幌放送局・飯嶋千尋)

「水曜どうでしょう」など、人気番組のレギュラーを務め、その活動が全国的に知られている鈴井貴之さん。ちょうど30年前、北海道に拠点を構える決断をしました。当時、劇団の主催も務めていたこともあり、劇団員たちの仕事として成り立たせることができるような「地盤」を作りたいという思いからでした。しかし、周りからは「無駄だ」「無理だ」とあきれられたといいます。

「まず、『何を無駄なことをやるんだ』と言われましたね。当時、日本の中では東京や大阪がエンターテインメントの中心であって、北海道で芸能プロダクションみたいなことをやっても、まず仕事はないし、そんなもの作っても意味がないと。さらに、民放さんの当時のテレビ局の偉い方に、『お前たちがいくら頑張っても、ローカルでは局アナがトップなんだ。タレントはその下で、まあリポーター的な仕事でどっかの中継先に行くっていうのが関の山だ。お前たちが画面の中央に座ったり立ったりして、メインの番組というようなものは、もう将来的にも持てる可能性がないのだから、それを分かっててやるのか』という感じのことは言われました。
それを聞いて、奥歯かみしめながら『それでも頑張ります』と言いつつ、頭下げながら『いつか見てろよ』って思っていました。根っからのあまのじゃくなので、『無理だ』『ダメだ』と言われると、絶対にそれをやってやる、打破してやるという気持ちの方が、高まってしまうんです。それで30年間ずるずると、やらせていただいているのかなと思います」

『芸能人はローカルでも活躍できるはずだ』。
そんな思いで鈴井さんが心がけたのは、「マルチ」であることです。俳優だけやりたいと思っても、マーケットは狭い。ならば、タレントも、レポーターも、ラジオパーソナリティーも、時にはイベントの司会も、なんなら歌も歌える。何でもできることを売りにすればいいと割り切りました。

「自己演出できないとローカルタレントっていうのは成立しない。でもそれができると、僕は『潰しがきく』というふうに思ってるんです。まあ節操がないと言えば節操がない。でもそれがいいところでもあり、ローカルで生き抜いていく秘訣かなと思っています。ただ、北海道民なのでやっぱり北海道を愛していますし、僕らは『ローカルタレント』というふうにくくられてることは多いですけど、それを誇りに思ってます」

『ローカルタレント』という新たなジャンルを開拓した、鈴井さん。30年の闘いを、1つの歌に込めることにしました。曲名は「風に乗せて」。「風は向かい風のときもあれば追い風に変わることもあるし、自分で風を起こすこともできる、そんな風をテーマにした」と鈴井さんはいいます。

先月、札幌市で開かれたライブイベントで、大泉洋さんをはじめとした「TEAM NACS」のメンバーたちとともに、歌が披露されました。

作曲を手がけたのは、Official髭男dismやJUJU、それに、ゆず、back numbreなど、数々の人気アーティストを手がける、蔦谷好位置さんです。札幌市出身の蔦谷さんは、鈴井さんとは出身大学も一緒という縁がありました。

「自分の表現、自分のやりたいことっていうのもありますが、やり方は違えど、人を幸せにするとか、その表現によっていろんな人を笑顔にできる仕事を、北海道を拠点に最前線でやられているという意味では、鈴井さんは本当にレジェンドの1人だと思うんですよ。
そういった方と一緒に仕事ができるというのは、自分のキャリアにとっても絶対プラスになるし、オファーをいただいてめちゃくちゃうれしかったですね」

歌には、印象に残る一節があります。

「瞳は色を宿し 空は青く広い 眩い思い抱え 歩む道は続く」

周りがどれほど無理だといっても、地元を大切に、そして自分を信じて歩みを止めなければ、必ず道はひらける。そんなメッセージを、2人は込めていました。

「今は本当にインターネットやSNSが成熟していて、どこにいようが関係なく、世界中どこからでもスターが生まれる可能性があるので、北海道の魅力や北海道らしさというのをもった活動がいろいろできると思っています。ただ、別に無理やり“地元意識で”と思って肩ひじ張ってやる必要はなくて、発信した結果、その人が住んでいるのがたまたま北海道でしたということでも、北海道は盛り上がるはず。“自分の表現”を追求した北海道の若者がどんどん増えていけば、その結果、北海道が盛り上がっていくと思うので、そういうところに僕も何か力をお貸しできるところがあればって思っています」。
「北海道ではね、失敗できるんですよ。経験値もないし、人材も、ましてや財力もない。
だから多く失敗するんです。だから、“北の外れにいるものだから、中央でももまれてないし、そんなん分かんねえんだもん”って平気で言えるし、それでいいじゃないって思っていますし、そこから、突然変異的に世の中を変えていくのかもしれないなと、信じています。だからこそ、北海道在住の若手の人たちには、地方だからこそ型破りになって、チャレンジしてもらいたいなと思いますね」

先月開かれたライブイベントで鈴井さんは、猿の着ぐるみで登場したり、若手のボーイズグループと激しいダンスに挑戦したりする姿を見せていて、還暦を迎えても「マルチであること」を体現していました。“生涯現役”を貫き、北海道のエンターテインメントを変わらずけん引してほしい。そんな思いが生まれたインタビューでした。

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