NHK札幌放送局

化学物質過敏症の人でも働けるお菓子屋さん

ほっとニュース ミニ

2019年12月6日(金)午後6時23分 更新

化学物質過敏症」をご存知でしょうか。身の回りのごくわずかな化学物質に反応してしまう病気で、柔軟剤や消臭スプレーなどの人工的な香りで体調不良を引き起こしてしまうこともあります。症状によっては外出することや働くことが難しく、社会とのつながりを絶たれてしまう人も少なくありません。そんな化学物質過敏症の人でも安心して働くことができるお菓子屋さんが北海道の倶知安町にあります。

「におい」で体調不良 働くのも困難

3年前に「化学物質過敏症」を発症した葛島 香陽子さん。

「マスクが二重じゃないと、においがきつくて外出が難しい」(葛島さん)

葛島さんにとって、外の世界は体調不良を引き起こす「におい」であふれています。例えば車が行き交う道路沿いを歩いていると…

「排気ガスがくると、めまい、立ちくらみみたいな感じで、ふらふらしちゃうんですよね」(葛島さん)

さまざまな商品が並ぶスーパーで買い物をするのも簡単ではありません。

「芳香剤とか洗濯用品とか、においが強すぎて通れない」(葛島さん)

すぐに気分が悪くなってしまうため、長い間外にいることができません。葛島さんはそれまで勤めていた職場も辞め、人とのつながりもどんどん薄れていったといいます。

「家族以外の人と会えないので、社会と隔絶されている感じはありました。気持ちが塞がっていく一方で」(葛島さん)

働けない人がいるなら雇えばいいじゃん

あるお店から“働かないか”と誘いを受けました。

声をかけてくれたのは、倶知安町にある老舗のお菓子屋さん。

このお菓子屋さんは一般の従業員だけでなく、北海道内外からやって来た化学物質過敏症の従業員を4人雇っています。全員、病気のため働いていた職場を辞めたり、就職活動を諦めたりした人たちです。

きっかけは、工場長の藤井 隆良さんが5年前に化学物質過敏症を発症したことでした。

「お店をしているからお客さんが来る。すると扉が開いて人が来るので、そのにおいで症状が悪化して」(藤井さん)

においを防ごうとさまざまなマスクを試したり、空気清浄機を設置するなどしましたが、症状は悪化する一方。従業員にも洗剤や柔軟剤を変えてもらうなどのお願いをしましたが、理解を得られませんでした。辞めていく従業員が後を絶たず、人が不足し経営も厳しくなっていきます。そんななか立ち上がったのが、隆良さんの妻でお菓子屋さんの社長・千晶さんでした。

「夫を診察する医師が“病院に来ている患者さんで退職せざるをえなかった人たち、働けなくなった人たち、働きたくても働けない人たちがたくさんいる”と言っていたので、そんなに働けない人がいるなら雇えばいいじゃん、と楽観的に思いついた」(千晶さん)

「来てよかった」 社会とのつながりを実感

千晶さんはクラウドファンディングで寄付を募り、化学物質過敏症の人でも安心して過ごせる工場と寮を建設しました。

化学物質をなるべく使わずに建てた新しい工場の中は、さまざまな工夫が施されています。

部屋の中に空気を滞留させないための装置を設置。

化学物質を部屋の外に効率よく逃すための通気口も作られました。

工場で使う手洗いせっけんや食器用の洗剤は無添加の品を使うなど、徹底されています。

岐阜県から倶知安町に移住し、お菓子屋さんで働き始めた葛島さん。化学物質過敏症に配慮した建物の中で過ごすことで、病気の症状も改善したと言います。

そして同じ職場で働く仲間との交流を通して、再び社会とのつながりを実感しました。

何より働けるというのは大きい。理解してくれる人もたくさんいますし。このお店に働きに来てよかったなと思います。めちゃめちゃ快適に仕事させてもらっています」(葛島さん)
「ただ症状について知っているだけで、多少なりとも寄りそい、改善できる。症状に配慮した職場づくり自体が、次の事業者さんがやる礎になればいいと思っています」(千晶さん)

化学物質過敏症に苦しむ人と社会をつなぐ、お菓子屋さん。その挑戦はまだ始まったばかりです。

2019年11月21日(木)放送
ほっとニュース北海道より

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