帯広のデパート「藤丸」が、今年1月末、120年あまりの歴史に幕を下ろしました。大きく影響を受けると考えられるのが、藤丸周辺の中心市街地。空洞化に拍車がかかることが懸念されています。
その中心街の活性化に取り組んでいる、地元の高校生がいます。藤丸閉店を受け、どう考え、どう取り組んでいくのか、取材しました。
(NHK帯広放送局 嘉味田朝香・笹峻平)
藤丸が閉店…地元を元気にしたい
閉店2日前に藤丸を訪れた、帯広市内の高校に通う森陽香(もり・はるか)さん。
藤丸の一番の思い出は、幼いころ家族と乗った、エレベーターだといいます。
森陽香さん
エレベーターのガラスにくっついて、目的の階がくるまで、お母さんとかお父さんに呼ばれるまでずっと景色を見ていました。

長年、帯広の中心市街地の核として親しまれてきた、藤丸の閉店。
中心街の空洞化に拍車がかかる懸念は、高校生の森さんも感じています。
森さん
中心部に人が流れ込まなくなるというか、郊外に人が流れていっちゃうんじゃないかなという影響があると思います。
去年夏から、森さんは友達に誘われ、十勝のまちづくりに取り組む団体に参加しています。
市内3つの高校の生徒19人が集まり、地元を活性化するにはどうすれば良いか話しています。

この冬、帯広駅前のイルミネーションに、SNS映えがするものを提案するなど、少しずつアイデアを形にしてきました。
活動を続ける中で、森さんが気になりはじめたのが、藤丸に隣り合う商店街の一帯です。
森さん
やっぱりシャッターが閉じているお店が多くて、ちょっと暗いなって思います。

かつては多くの店が軒を連ねていた広小路商店街ですが、いまは空き店舗や空き地が目立ち、人通りはまばらです。ふだん訪れることが少ない商店街を、どうしたら高校生の集まる場にできるか考えています。
森さん
広小路に来る高校生はいないと思います。自分たちが目的としているお店がなかったり、こんな感じで暗いから、あまり通ることがないと思います。
商店街の歩みを知って“にぎわいづくり”考える
1月、森さんは、商店街が主催したイベントに参加しました。高校生など若い世代にも、中心街の歴史や成り立ちを知ってもらい、関心を持ってもらおうというものです。
地元の歴史に詳しい専門家が、かつてのまちの様子を説明します。
帯広百年記念館 大和田努さん
お祝いの何かがあったみたいで、人出がたくさんにぎわっているのですが、いずれにしても町の中にたくさん人がいるのがわかりますね。で、ここに建っているのが初代藤丸デパートの建物です。デパートとしての初代ですね。

森さんにとって、にぎわっている商店街の様子を見るのは、初めてのことでした。
さらに、実際に商店街一帯を歩いて、時代による移り変わりの様子を確かめます。
大和田さん
ここはコロナの検査場になっていた場所なんですが、元々は呉服屋さん、うす井さんというところの名残なんですね。看板だけ残っていますけど。

一方で、昔からある古いものをうまく生かし、にぎわいを取り戻そうとしている場所もありました。
およそ110年前に建てられた、かつて金物店だったレンガ造りの建物。
今は、外観はそのままに、中はイベントなど人が集まれる場所として再活用されています。

実は、森さんたちは以前のまちづくり活動で、商店街に流行りの韓国屋台を呼び込んで、人を集めようとしたことがありました。
しかし、そうした新しいものばかりでなく、いまあるものを生かしていくことの大切さに、気づかされました。
森さん
今韓国が流行っていても、流行りも一過性というのもあるし、広小路の歴史を踏まえてより地元のお店に携わりたいと思いました。昔栄えていたからこそ、もっと未来によりよく、にぎやかな形を戻して、つなげたいなと思いました。
高校生目線いかし若者が集まるまちに
店主たちは何を求めているのか。森さんは、仲間と商店街を回ることにしました。
まず訪れたのは、長年にわたって営業を続けるCDショップ。100年以上続く店ですが、2人とも入ったことは一度もありません。
自分たちも聴く、はやりの曲も取り揃えていました。
店主
時代の流れに合わせてさ、いろんなものを扱っていかなきゃないかなと思っているけどね。
松本優さん(CAN-PASS代表)
いろいろ見ていても、CDもすごく古いものから新しいものまであるなと思って、ちょっとほしいのもさっき見つけちゃったので、友達とかとも来たいと思います。

一方で、商店街の中に新しいものを取り入れる動きも見つけました。
去年の末にオープンした美容室。高校生や若い世代にも好かれるレイアウトです。
森さん かわいい
松本さん 夜光るのかな?
森さん 原宿っていうか、ここだけ異世界っていうか

店を回る中で最も印象的だったのは、自分たち若者との接点や、そこから生まれるアイデアに、期待する声でした。
洋服店 店主
高校生ならではの発想で、これから流行りそうなもの、今実際に皆さんが興味あるもの、もしくは流行っているものを、声に出してあげてほしいと思います。

カフェバー 店主
アイデアとか、自分たちのこうしてみたいやってみたい、ワクワクすることをどんどん出していってほしいなと思います。それを思い切りオープンにどんどん伝えてもらって、私も高校生のアイデアから「なるほどね」ってアイデアとかヒントもらうこといっぱいあると思うので。

中心街の核がなくなった今、自分たちが果たす役割は大きい。取り組みの輪をさらに広げていこうと、森さんは考えています。
森さん
自分たち以外の世代の人たちで成り立っているんじゃなくて、高校生が関わっても良いというか、関わることができるというのを教えるっていうか、発信することができたら良いなって思いました。経営者で、高校生目線で知りたいって言ってくれた部分もあるので、そういう点を教えて、どんどん若者が集まるところにしたいと思いました。

NHKでは3月9日、そうした地域の人たちとともにこれからの“まち”について語り合うトーク番組を生放送!
「まちなかがこんなふうになったらいいな」、「こんなまちになったらもっと楽しく暮らせそう」という思い・アイデアを募集します。帯広に限らず、みなさんが住む自分たちのまちをこんなふうにしたい!という思いもぜひお寄せください。

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