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この団地でこれからも 釧路市 美原団地

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2022年8月30日(火)午後4時25分 更新

北海道東部の釧路市にある「美原団地」は およそ50年がたち団地内のスーパーが閉店しました。 活力を失いつつある団地に、地元の漁業者が元気を届けました。 (釧路放送局 川畑直也) 

釧路市の北部、昭和40年ごろの航空写真です。
建物はなく釧路湿原が広がるのみです。

現在の同じ場所を見ると、中心部に台形のような形をした住宅地、「美原団地」が広がります。広さは札幌ドーム25個ほど。
釧路市の発展に伴い、昭和49年から造成が始まりました。

現在の美原団地の人口はピーク時のおよそ半分、6千5百人ほどです。
半数近くが65歳以上となりました。

美原団地に暮らす、風間幸子(かざま・さちこ)さんを訪ねました。
風間さんは昭和60年から、夫と子ども2人の家族4人で住み始めました。
きっかけは3DKの新築市営住宅の抽せんに当選したことです。

風間さんは「広くてそれこそ運動会出来るくらい広くて、うれしくてもう本当に今でも忘れません」と当時の喜びを教えてくれました。

美原団地は住宅、学校それに金融機関などが機能的に配置された街です。
その中心にはスーパーがあり、にぎわいました。
スーパーの前で毎年開かれた夏祭りには、多いときには約1万人が参加しました。

しかし、今年(2022)2月、スーパーは閉店しました。
お年寄りが多い中、買い物が難しくなりました。


美原団地では住民それぞれの人生の歩みがあります。

昭和53年に住み始めた伊藤良博さん家族の記念写真です。

現在子どもは独立し、良博さんは1人で暮しています。

勝呂博さんの家族です。妻・夏子さんと美原団地に夢のマイホームを建てました。

ことし(2022年)5月病気で他界した妻は、病院での闘病中も帰宅を望んでいました。

街と共に住人たちも年を重ねてきました。

太平洋に面した釧路市は、かつて日本一の漁獲量を誇った漁業の町です。
買い物に困る住民に地元の魚を食べて欲しいと、くしろ市東部(とうぶ)漁協の漁業者が販売会を立ち上げました。

販売会は、ことし(2022年)6月から月に2回行われています。
ホッケ、アイナメ、花咲ガニなど20種類をこえる新鮮な魚介類を販売。価格もスーパーより2割ほど安く、飛ぶように売れます。この日は約70人の買い物客が訪れました。
買い物客からは「安くて、生きのいい魚を食べられる」、「車を運転できず、足も悪いから助かります」と評判も上々です。

販売会の中心を担う くしろ市東部漁協・漁業者の司口圭哉さんは、
「これまで地域の方にいろんなところで魚を買っていただいて支えてもらったので恩返しの意味も込めて安く新鮮なものを提供できたらと思います」と意義を語ります。

車を運転しない風間さんは、歩いて販売会へ訪れました。
きょうのお目当ては、今が旬の花咲ガニです。
司口さんに調理のしかたを聞き、生きた花咲ガニ2ハイを購入しました。
花咲ガニは、風間さんの子どもたちの大好物です。

自宅に戻った風間さん。生きたままのカニを調理するのは30年ぶりです。
きょうは、団地を訪れた子どもの尚美(なおみ)さんと一緒に味わいます。
鮮度抜群のカニは、甘くておいしく、自然と笑顔があふれます。
「家族団らんの時に必ず魚がありました。こどもも魚好きでしたね」
風間さんは、団地に住み始めのころ、家族で食卓を囲んだことを思い出しました。
そして、「今でもここに住んでいて、このあと美原以外どこにも行きたくないです」と話し、今後も釧路の海の幸を楽しみながら、2人暮らしの夫とこの地で新しい思い出をつくっていきたいと考えています。

長年住み慣れた思い出の詰まった街に住み続けたい。
住民たちの当たり前の希望は難しいのでしょうか?
少子高齢化が進み元気がなくなっていく街が多い中、漁業者の住民をサポートする試みはとても心強く感じました。

くしろ市東部漁協では魚の販売会を希望があれば、別の場所で開くことも検討したいということです。

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