NHK札幌放送局

ポストコロナ、個人旅行者を獲得せよ!

ほっとニュース北海道

2021年3月26日(金)午後3時36分 更新

新型コロナに翻弄される観光地。なかでも、外国から日本を訪れるインバウンド観光への影響は深刻です。 コロナによってインバウンド観光はどのように変わるのか? その最前線を取材すると、インバウンドが消えたコロナ禍のいまも、観光地はアフターコロナを見すえて動き続けていました。

コロナ後のインバウンド

観光政策に詳しい北海道大学の石黒侑介准教授は、インバウンド旅行は、コロナ前から「団体旅行から個人旅行への転換」という傾向があったとしながらも、コロナで一度途絶えた後は、「個人旅行が一気に主流になるだろう」と予測しています。

1つ目の理由が、感染症への警戒です。団体旅行で利用する大型バスやビュッフェ形式の食事など、大勢で行動することに抵抗感が高まりました。
2つ目は、団体旅行を支える仕組みの問題です。団体旅行は、旅行会社や宿泊施設、移動手段といった複数のサービスが組み合わさって成り立っています。しかし、コロナによって、旅行会社の倒産や飛行機の減便などこの仕組みの一部がなくなりました。復旧させるには代わりのサービスを探さなければならず、団体旅行を受け入れられるようになるには時間がかかるというのです。

個人旅行が主流となるコロナ後のインバウンド。石黒准教授は、道内の観光地は、コロナ禍の今から個人旅行者にPRする必要がある、と指摘します。私は各地の取り組みを取材しました。

「濃いお客さん」にPR

今年1月、中国・上海で、中国ではちょっと珍しい「レース」が開かれました。走るのは、日本人にはおなじみの「ミニ四駆」。およそ60人の中国のミニ四駆ファンが集まり、高速で駆け抜ける小さな車体に「頑張れ!」「(コースを外れないように)気をつけて!」などと大きな声で声援を送っていました。

このレースを主催をしたのは、メーカーの本社がある静岡県です。中国のファンに「ものづくりの町・静岡」をPRするためです。
コロナが収束した後には、ミニ四駆の工場見学なども計画されており、個人の特定の趣味に訴えかけることで、コロナ後の観光誘致につなげる試みといえそうです。

大会を開いた静岡県上海事務所の浅原敏治所長が、ねらいを説明してくれました。 

「富士山を見たいという気持ちがある方は多いのですが、その地元の静岡は知名度が低い。まずは、ミニ四駆の生産地が静岡であることをファンに伝えることで静岡のファンにもなっていただき、コロナ後には工場見学ツアーなどで実際に旅行に来ていただきたいです」

北海道大学の石黒侑介准教授は、こうした静岡県の取り組みは、コロナ後のインバウンド観光に有効だといいます。

「ミニ四駆ファンのように「濃いお客さん」をどれだけ効率的に誘客できるのか、というのが、自治体にとって、ポストコロナの国際観光戦略の核になります。コロナ禍、そうした人にアプローチできるのは、戦略性として非常に高いのではないでしょうか。今後は、需要がより個人化・細分化・多様化してくるので、そうした個人のニーズに合った観光振興をどれだけ戦略的にできるのかが1つのポイントだと思います」

道内でも新たな試みが

道内でも、新しい旅行スタイルに対応した取り組みが始まりつつあります。
富良野市は、インターネットを利用する個人旅行者に向けて、地域の魅力を伝えようとしています。

「楽しかったです!」

中華圏を中心に85万人のフォロアーがいる北海道在住の中国人インフルエンサー・エイミーさん。富良野市の依頼で、熱気球やスノーシューを体験する動画を撮影しました。
一面の銀世界でウインタースポーツを楽しむエイミーさんの動画。SNSで公開したあと、一日で1300件近くの「いいね」がつき、多くの人が関心を寄せました。

動画の制作を依頼した富良野市商工観光課の鷲見悠太さんに話を聞きました。

「インターネットで自分で調べて旅行の行き先を決めるという動きが広がっていて、私たちも注目しています」

個人旅行者へのPRに力を入れる富良野市は、自治体としては世界で初めて、中国の大手IT企業テンセントとインバウンド観光について提携を結びました。

テンセントのアプリはアジアを中心に10億人以上が利用しています。富良野市はこのアプリを利用して、ホテルや各種チケットの予約、電子決済など、旅行を便利にするサービスを外国人向けに提供する仕組みを作ったのです。

たとえば、レストランでスマホを使って料理を注文するサービスでは、日本語が分からなくても中国語のメニューを見て注文でき、現金を使わず支払いまでできます。
富良野市は、誰でも不便なく旅行ができる環境を整え、外国からの個人旅行者を取り込もうとしています。

観光地と旅行者の「結び付き」を

観光地が頼る個人旅行者。石黒准教授は、大量にお金を使ってくれる団体旅行が期待できない今後は、観光地の側が、その土地の魅力を理解して長期滞在したり、リピーターになる個人を、積極的に探していく必要があるといいます。

「キーワードは『結び付き』です。自分の地域に当てはまるようなお客さんをいかに誘致できるのか、あるいは地域資源や地域住民と相性のいいお客さんをどれだけ戦略的にとってくるかということが、自治体や事業者の課題だと思います。来年再来年、あるいは3年後4年後を見すえてどれだけ早く動けるのか、ポストコロナ、ウィズコロナ時代になったときに大きな差を生むのではないかと考えています」

コロナに翻弄される観光地は、ただ収束を待っているだけではありませんでした。取材をした観光地は、いずれも逆境にあらがうように、アフターコロナの観光の姿を模索し、試行錯誤を重ねていました。いずれ、それぞれの土地が好きな人がそれぞれの土地を心おきなく楽しめる日が来ることを、願ってやみません。

取材担当:前川フランク光カメラマン(札幌放送局)

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