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WEBニュース特集 センバツ中止 広がる球児へのエール

北海道WEBニュース特集

2020年3月19日(木)午前11時53分 更新

新型コロナウイルスの感染拡大で中止が決まったセンバツ高校野球。北海道から出場を予定していた十勝の2校、白樺学園と帯広農業の出場はかないませんでした。しかし、地元・十勝からは夏の大会に向け、選手たちにエールが広がっています。

横断幕で選手にエールを

センバツ高校野球の中止が決まった翌日の3月12日。帯広市役所に、ある横断幕が掲げられました。書かれていたのは「わたしたちは みなさんの栄光の軌跡を讃え続けます」という言葉。白樺学園と帯広農業の選手たちにエールを送っています。

帯広市スポーツ振興室 葛西克也室長
「2校がセンバツ出場校に選ばれたということは厳然たる事実ですので、選手たちには胸を張って新たな目標に向かって頑張ってほしいなと思っています」

横断幕を見た十勝の人たちも選手たちにエールを送っていました。


地域の応援の声が聞こえる中、白樺学園と帯広農業にこれまでに取材させていただいた内容をどうするか相談したところ、「頑張っている選手の姿をぜひ伝えて欲しい」と話していました。そこで、特集としてセンバツ出場を決めていた2校の冬をお伝えします。


「食」で強化 白樺学園

芽室町の白樺学園の持ち味はバッティングです。去年秋の北海道大会のチーム打率は4割を超え、「打ち勝つ野球」で初優勝を果たしました。

そのパワーの源になっているのが山盛りのごはんです。選手たちが暮らす寮の食堂の壁には「朝480グラム、夜980グラム以上」の文字。これは選手1人が毎日食べるごはんの量です。体を大きくするため、白樺学園では食事もトレーニングの一環と位置づけています。選手たちが食べる米は1日だけでなんと27キロにものぼります。

選手たちは夕食後に体重計に向かい、毎日、体重の変化を記録しています。「朝と比べたら体重が800グラム増えていました」という選手もいました。


エースは悔しさを胸に…

エースで4番の片山楽生投手は、寮の食事でこの冬10キロ体重が増え、持ち味のストレートの威力も増してきました。

片山楽生投手
「しっかりリズムを作っていい攻撃につなげられるようなピッチングが目標です」

寮にある片山投手の部屋には、去年夏の地区大会の新聞記事が貼られています。新聞記事が伝えているのは片山投手にとって忘れられない試合です。この試合で、自らのエラーをきっかけにチームが敗れたのです。片山投手は悔しさを糧に心を奮い立たせ、練習を積み重ねてきました。

片山楽生投手
「記事に載っているのは相手が勝っているシーンなんで自分の心が動くというか、こみ上げてくるものがあります。先輩たちの分もというのが自分の中にあるので、その分やらなきゃいけないなと思っています」


北海道から南国宮崎へ

芽室町にあるグラウンドは冬は雪に閉ざされてしまい、外で十分な練習ができません。そこで、ことし2月にチームが向かったのが九州・宮崎です。

南国の暖かな日ざしに選手たちの気分も高まる中、選手たちは待望の土のグラウンドで練習を行いました。白樺学園が掲げるのは「堅い守りから攻撃につなげる野球」です。選手たちは守備の連係を入念に確認。そして、エースの片山投手もこの冬初めて、マウンドで本格的な投げ込みを行いました。

片山楽生投手
「すごく暖かいので体が柔らかくなって動きやすくて投げやすかったです」
業天汰成主将
「久しぶりに土の上でやって少しは足もとられたりするんですけど、守備に関してはいい課題も出たのでしっかりやっていこうかなと思っています」


センバツ中止に…

センバツ中止が決まったあと、今の気持ちと今後に向けて、監督からコメントをいただきました。白樺学園、戸出直樹監督のコメントです。

「一冬越えて、多くの方々に支えられ、様々な環境の中で選手たちは柔軟に対応し、甲子園に向け万全の準備をしてきましたが、夢実現できず大変悔しい春になりました。嘆いていても仕方ありません。新しいスタートをきり、夏の甲子園出場を目指し、野球以外の大切なことも経験しながら立派な2020年のメンバーたちだったと言われるチーム白樺になってほしいと願います」


続いて紹介するのは帯広農業です。21世紀枠に選ばれたチームは独自の工夫と努力を積み重ねて、チーム強化を図っていました。


雪上で磨いた技術

帯広農業の練習は真冬も外で行われます。取材した2月11日も、雪に覆われたグラウンドでは実戦形式の練習が行われていました。雪によるイレギュラーバウンドでけがをするのを防ぐため、選手たちは顔にフェースガードをつけて練習に取り組んでいました。足場が悪い中でも、土の上と変わらない軽快な動きで打球をさばく選手たち。厳しい寒さと雪の中でプレーを磨いていました。

「21世紀枠」に選ばれた帯広農業。持ち味の強力打線で、去年秋の北海道大会で公立高校で唯一ベスト4に進出しました。


限られる練習時間

帯広農業の選手の多くは地元出身の農業後継者です。放課後には実習に参加する選手もいるため、チーム全員で練習できるのは週末だけです。酪農科学科でセカンドの江森誠祥選手は豚の飼育を担当しています。実習で練習時間が限られる環境も前向きにとらえているといいます。

江森誠祥選手
「時間がやっぱり無いのでほかの人と比べて自主練習の時間を有効に使ったり、全員でひとつになって練習をしっかりやろうと心がけています」

限られた練習時間で効果を高めようと、チームでは「野球ノート」をつける取り組みも行っています。気づいたことや目標を「言葉」にすることで、より集中して練習に取り組むためです。

井村塁主将
「目標を書くことによって目標を明確にして次の日の練習に備えたり、行動も変わってきたりしています」


“特製ドリンク”中身は…

チームでは農業高校ならではの強化にも取り組んでいます。選手たちが練習中に飲むのは牛乳ときなこで作った特製ドリンクです。牛乳は生徒たちが絞り、きなこは高校で収穫された大豆で作っています。また、練習の合間に食べる「補食」のシチューの材料も、高校で収穫された野菜を使っています。


目指せ“すず野球”

独自の工夫と努力でチーム強化を続ける帯広農業。目指す野球は「すず野球」です。十勝が舞台になったNHKの連続テレビ小説「なつぞら」のヒロイン、広瀬すずさんにちなんで名づけました。「すず野球」とはどんな野球なのか聞いてみると…。

「すず野球の『す』は▼スピード▼スマイル▼素直さ、『ず』は▼頭脳的▼ずば抜ける▼ゾーンに入るの意味です」
井村塁主将
「十勝や北海道の人たちの思いや感謝の気持ちを背負っていると感じています。十勝のすごさを全国に知らせたいと思っています」


センバツ中止に監督は…

帯広農業の前田康晴監督からもコメントをいただきました。

「今は練習ができないので、早く生徒の顔が見たいです。生徒ときちんと顔を合わせて今後について話し合いたいです。中止についてはとても残念で甲子園でプレーさせてあげたかったです。すべてが終わったわけではないので、夏に向けて練習を通して精進していきたいです」
帯広放送局 原祢秀平記者

取材後記
私は約半年間、白樺学園と帯広農業を取材し、夢に向かってひたむきに頑張っているチームの姿を見てきました。その姿はスポーツに打ち込んだ私の高校時代にも重なり、胸を打たれ、心の底から応援していました。彼らの甲子園での活躍を楽しみに取材してきただけに中止はとても残念です。
中止にはなりましたが、チームが一生懸命頑張っていたことは紛れもない事実です。チームの頑張りを多くの人に知っていただきたい。少しでもチームの後押しになればというエールの思いを放送に込めました。放送に賛同してくださった白樺学園と帯広農業の皆さんに感謝します。監督お二人からもコメントをいただきありがとうございました。
「十勝から2校が初選出」という歴史の1ページに立ち会えたことは私の財産になりました。これからも彼らを応援していきます。

(2020年3月17日放送)




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