NHK札幌放送局

シラベルカ#22 外国出身の子どもたち 日本語教育にハードルが

シラベルカ

2020年9月16日(水)午後4時33分 更新

国際化や観光業の発展で道内でも増える外国人。家族で来日し、暮らしている子どもたちの 日本語教育はどうなっているのか、調べてみると地域によっての違いや学年が進むことによるハードルなど課題が見えてきました。

みなさんからの疑問に答えるNHK北海道の取材チーム「シラベルカ」。
今回は、10代の女性からいただいた投稿です。

女性(10代)
「北海道には観光だけでなく仕事で長期に滞在している、あるいは住んでいる外国人の方がいます。来日した子どもたちの中には日本の小中学校に通う子どもも増えてきているのです。そうした子どもたちの日本語教育の現状が気になります」


取材した札幌放送局の藤井凱大記者の結果報告です。


日本語指導が必要な児童生徒は学校にどれくらいいるの?

今回は公立の学校の現状を探ってみることにしました。指導が必要な児童生徒はどれくらいいるのか。

▼札幌市 小学校50人 中学校13人 高校生21人 
▼そのほか40市町村 129人    (H30年度)

ことしの調査結果はまだ出ていないので、2018年(平成30年)の調査です。愛知県など数の多い自治体に比べると少ないですが、毎年増加傾向にあります。また、道教育委員会や札幌市教育委員会によりますと、ことしも増加傾向は続いているということです。


実際にどうやって日本語を学んでいるのか 札幌市の小学校へ

北海道大学が近く、海外からの研究者など多くの外国人が暮らす地域にある札幌市立九条小学校では毎年、日本語指導が必要な児童を受け入れています。日本語指導の担当教諭によって週に1回以上、日本語を学ぶ専門の時間を設けています。

この日、教室にいたのは、モンゴルから半年前に来たトゥグルドゥル君と、1年半前にインドから来たタンヴィさん。2人とも2年生です。「日本語のいろんな言葉が好き、でも難しい」タンヴィさんが上手な日本語で話してくれました。

この学校に通う日本語指導が必要な児童は9人。子どもたちが授業で孤立しないように、国の予算で日本語指導に対応するための教諭が配置されています。


教諭が配置されないケースも・・・

しかし、すべての学校でこうした指導ができているわけではありません。札幌市にいる日本語指導の教諭は北九条小学校も含めわずか4人。多くの市町村の学校では今いる人員で対応するしかないのです。
教諭配置の基準は、政令市の札幌市の場合、日本語指導が必要な子ども18人に対して教諭1人、それ以外の自治体は4人に1人、もしくは母語が2カ国語以上の児童がいるのが条件です。この基準におおむね該当すれば国などの予算が付き専門の教諭を配置することができます。
広い北海道では子どもたちが点在する形で暮らしていて基準に達しない自治体もあるほか、日本語指導のスキルやノウハウを持つ教諭が少ないという現実もあります。

北九条小学校の照井史絵先生
「子どもたちが日本語を話せるようになってくれるのはうれしい。日本語指導は週1回でも本当は足りないが、教える人材も多くないのが現状。日本語指導の仕事に関わる人材が少しでも多くなれば、もっと、もっと子どもたちに、いい関わりができると思う」


中学校ではさらなるハードルが・・・

さらに、中学生になると新たな問題があります。それは高校受験です。
取材で知り合った、エクアドル出身の中学生の女の子に話を聞いてみることにしました。

倶知安町の倶知安中学校に通うエクアドル出身のネリーさん。中学2年生です。父親の仕事で小学6年生の時に来日しました。ネリーさんの母語はスペイン語で、英語も堪能です。
当初は、日本語をまったく話せませんでしたが、3年ほどで日常会話はマスターし、公立高校への進学も考えています。しかし、受験には不安を感じています。

ネリーさん(中学2年生)
「高校受験を考えていますが、漢字が難しい。不安があります」

家族もネリーさんを心配しています。

お父さん
「ネリーをとても心配しています。彼女が高校に入ってくれることを願っています」

学校や家庭の支えもあり、成績も上がってきているということですが、日本人と同じ条件での受験は大きなハードルです。


言葉の違いで目標をあきらめないで!

倶知安中学校でネリーさんに日本語指導をしている佐々木ななみ先生に聞きました。

佐々木ななみ先生
「日本語を話せるから、『テストもできるでしょ』って言われますけど、テストに出てくる言い回し、表現の仕方っていうのは、ほんとに複雑ですし、日本語がこのレベルまで達していないからっていう、言語の理由で高校に進学したいという目標を諦めて欲しくないです」

日本語指導が必要な受験生のために県によっては入試科目を減らしたり、設問にふりがなをふったりするなどの措置をとるところもあり、道内でも対応を求める声があります。
道内の課題について、学校に日本語指導の方法などを教えている。北海道教育大学札幌校 阿部二郎准教授に聞くと・・・。

阿部二郎准教授
「今までに比べて、道内で日本語指導が必要な児童生徒は、どんどん増えてはいるが、ほかの自治体よりも少ないという事でなかなか対応するための予算がつかなかったり、支援が行き届かなかったりということが課題になっていて、学校間でもいいですし、教諭間でもいいですし、うまい具合に日本語指導の情報を共有して、自分たちのノウハウを蓄積していくという仕組みも今後必要になってくると思います」


対応をはじめる自治体も

道などは少しずつ対応を始めています。
道教育委員会は、取材した阿部二郎准教授などを日本語指導が必要な児童生徒がいる学校へ派遣し、指導・助言をする取り組みを行っていたり、定期的に学校の担当者などを集め、日本語指導の研修会をしたりしています。
また、札幌市では日本語指導の4人の教諭を自分のいる学校だけでなく周辺の学校でも週に1時間程度教える取り組みをことしから始めました。さらに、4人の教諭は共同で、専門の教諭がいなくても日本語の指導が出来るように指導書をまとめ、市教委のホームページにアップしています。
そして外国人が増えてきているニセコ町では、町が独自に研修会を開いて、日本語指導員の養成に努めています。

予算や人材が限られる中で、日本語教育をどう充実させるか。外国人の受け入れが進む中、その子どもたちが孤立しないよう、しっかりと考えていく必要があると思います。


【取材担当】
記者・藤井凱大
ディレクター・吉田美和


放送の動画はこちら↓


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