NHK札幌放送局

足寄編1週目 森のいのちを糧として生きる

ローカルフレンズ制作班

2021年12月2日(木)午後4時41分 更新

こんにちは! ローカルフレンズ足寄滞在記を担当する前川フランク光です。
一ヶ月間、豊かな自然の中で生きる足寄町の皆さんに密着取材します。

札幌を出発した日は大雪、不安な気持ちで雪山をいくつも越えて現れたのは、晴れ渡った十勝平野。

寒いイメージの足寄町でしたが、冬の間は晴れの日が多く、積雪もほどほどだそうです。
なんだかほっとしました!
ほっとしたことと言えば、もう一つ。足寄町はカナダのウェタスキンウィン市と姉妹都市。自然に囲まれた町もカナダっぽい。
わたくし、フランクCも父がカナダ人で、大学もカナダに行っていたのです。
なんだかほっとさせてくれる事が多い、足寄町でいい滞在が出来そうです!
足寄町のみなさま、どうぞよろしくお願いします!

地域にディープな人脈を持つローカルフレンズ、儀間夫妻

ローカルフレンズの儀間芙沙子さんと雅真さんが出迎えてくれました。
着飾ることなく自然に接してくれる2人に、とても和やかな印象を受けました。
儀間さん夫婦は5年前、横浜から移住してきました。
地方で狩猟をしたい思いを持っていた雅真さん。芙沙子さんの実家が北見にあり、北海道に興味がわき、移住体験で足寄町を訪れたところ、豊かな自然や地域の人に一目惚れをして、移住を決めたそうです。

一ヶ月おせわになるのは「ゲストハウスぎまんち」。
儀間さん夫婦が開業したお宿です。
37年前に宮大工によって建てられたお宅を、町の支援やクラウドファンディングを活用しながら改装しました。パチパチ、、、と暖炉であたたかい火が灯る、心安まる空間です。

工夫を凝らしたゲストハウスは“街の玄関口”に

ゲストハウスには、旅行者や移住体験者や町の人など様々な人が集まります。
滞在初日には、アメリカ人のクラークさんと友人のかなさんが宿を訪れてきました。二人は足寄町のチーズ工房を見学してきたそうで、興奮気味に絶品チーズの食レポをしてくれました。クラークさんは、足寄町での生活にも興味津々。故郷のアメリカで生まれ育った町も足寄町のように自然豊かな場所だったそうで、儀間夫妻に次々と質問をしていました。

クラークさん
「北海道に多くの人が移住する理由がわかる気がします。日本は大好きで、素晴らしい経験が出来ましたが、足寄町や北海道の町は特別です。自然の中で豊かな暮らしができる夢のような場所だと思います」

狩猟に密着!?
儀間雅真さんはゲストハウスを営むかたわら、猟師としても活動しています。

害獣被害に悩まされる足寄町では、町や農家が猟師に鹿の駆除を依頼します。
雅真さんのように体力がある若い猟師はとても貴重な存在で、年間120日ほど猟に出ます。

滞在2日目。夜明けとともに、狩猟の密着取材がはじまりました。

野山を駆けまわる

狩猟をするための散弾銃を車に詰め込み、儀間さんは町外の山に向かいました。
シカの活動が活発な時間帯は日の出直後と日没前。
餌を食べに沢や山の麓に鹿がやってきます。
雅真さんは単独で狩猟をします。
これまでの経験から狩猟に行く場所を考え、五感を最大限に活用してシカを探します。

車は林道に入り、どんどん山奥へ進んでいきます。時には双眼鏡をつかい、茂みや林の間にシカを探します。シカがよく出現する場所には、足跡や糞など様々な痕跡が残されています。
しかしながら、シカには出会えず。3時間ほどで捜索を切り上げ、帰路につきました。

狩猟するだけではない

雅真さんは鹿を狩猟するだけではなく、鹿肉をおいしく食べられる料理も発信しています。
その名も「シカランチ」。町のコミュニティースペースを借りて、毎月シカを使った料理を提供しています。
今日は世にも珍しい「シカラーメン」。シカの骨と肉を煮込んだ特製スープとシカチャーシューをつかった塩ラーメン風の一品です。

シカの骨は使い道がなく、本来は捨ててしまう部位です。狩猟から得た肉と骨を余すことなく使います。

シカラーメンの開発に力を貸してくれたのは浜田正志さん。足寄町のお隣、陸別町で旅館を経営しながら、料理人としても活動しています。儀間夫婦のシカランチの考えに賛同し、協力してくれました。

お客さん
「上品な味だね。沁みるなあ」
儀間雅真さん
「鹿肉はなかなか調理しにくい食材だと思われているので、まずはこういった場でおいしいシカ料理を食べていただいて、好きになってくれる人を増やしたいです。狩猟をして、その肉をおいしく食べてもらうまで、届けきりたいです」

狩猟体験ツアー

「猟師」というこの職業、謎が多いと思いませんか?
わたしも取材をする前は「銃を担いで野山に入る熟練の狩人。額には動物たちと戦ったときに出来た傷跡が。」なんてコテコテな妄想をしていました。
雅真さんはそんな妄想を打ち消し、より深い理解のためにリアルな猟師の仕事場を見せてくれるツアーも企画しています。
この日は釧路からやってきたお客さんを案内しながら鹿猟の実態を丁寧に説明します。

お客さん
「わたしもパックされた動物の肉をお店で気軽に買っていたのですが、実際に猟師がどのように動物を狩猟して、肉を解体するのか、現場を見たい気持ちがあって参加しました」

この日も鹿には出会えず。
帰り道に鹿の解体場を見学しました。
足寄町で鹿の狩猟と解体を民間でやっているのは儀間さんだけ。

狩猟した鹿を持ち帰り、毛や皮を丁寧に剥ぎ、肉をおろしていきます。
解体した肉を新鮮なうちに消費者に届けられ、料理人からは「猟師が現場でどのように鹿を獲ったのか、実際のことが聞けるから、調理にも力が入る。」と好評です。

狩猟密着4日目、大きな雄シカに出会った

「あっ、、、。」
最初に鹿の存在に気がついたのはわたしでした。
数十メートル先の茂みに鹿がいました。
むこうも人間の存在に気がつき、背を向けて走り出します。

雅真さんはすかさず銃を手に、素早く射撃の体勢をとりました。
一瞬の間ののち、森に銃声が響きました。

駆け寄ると茂みに大きな雄シカが倒れていました。
喉元に弾は当たり、背中に向かって貫通していました。シカはわずかながら息をしていましたが、雅真さんが胴体にナイフを入れて血抜きをすると、やがて息絶えました。

雅真さん
「駆除もですけど、狩猟は人間の都合でやっていることには変わりないから、その行為を自分の中で着飾りたくないというか。飲み会とか宴会で余ったご飯に何を思っていますか?
命を語るって本当に重いことで、僕なんかが語ることではない。語れない。語れる人なんているのかなって」

命を語ること

雅真さんが雄鹿を仕留めたとき、わたしはじっとその目を見つめていました。
茶色の大きな瞳はだんだんと力をなくしていき、やがて命の光とも言えるまなざしが消えていきました。
私たちが生きていくということは、何かを犠牲にして、生き延びていくという日々の選択なのかもしれません。他者の命を糧に生きていくという本質。
それは森に響き渡る銃声であり、消えゆく瞳の光であり、血のにおいなのかもしれません。
都市に暮らすわたしが、わかったつもりになっていた、「命をつなぐ」という本質を突きつけられました。

2021年12月2日


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