NHK札幌放送局

第5回「人から人へつなぐ“知床学”」

知るトコ、知床チャンネル

2020年7月22日(水)午後5時52分 更新

世界遺産登録から15年がたち、知床の価値をどのように、次世代に受け継いでいくのか。そのヒントを羅臼町で行われている「知床学」という授業から探ります。(取材・釧路放送局記者 田村佑輔)

羅臼町の知床学は幼稚園から高校まで共通して行われている知床の自然に向き合うための授業です。

羅臼町教育委員会の金澤裕司さんは、知床学を立ち上げ、15年近く講師を務めています。

金澤裕司さん
「世界遺産になり観光客が増えると、それだけ自然が消費される。消費されつつ持続的に、将来にわたって利用することが必要で、そのための人間を育てていく必要があった。」

と当時を振り返ります。知床の価値を守っていくためには子どもたちへの教育が重要だと考えたのです。

野外で行う授業ではなく、地域の課題について生徒たちに教室で話し合ってもらう授業もあります。この日、金澤さんは「エゾシカと人の間にどんな問題があるかな?」と生徒たちにエゾシカの増加がもたらす地域での問題について意見を出しあうよう伝えました。エゾシカがもたらす問題について活発に意見を出し合う生徒たちですが、授業が一段落したところで

金澤裕司さん
「本当はその逆も聞きたいんだ。シカがいていいことって何かな?悪いことばかり考えたらよくないでしょ。シカが増えたことには何か理由があるはずだ。」と別の見方があることも伝えました。

生徒たちは困惑した様子でしたが、「自然と人間のかかわり方はさまざまな側面がある。」と感じさせる知床学をよく表した言葉です。

長年続く知床学は生徒たちからも好評で、「まだまだたくさん知らないことが多いと感じた。町外の人に知床を紹介したいので知床学を選んでいる。」と知床と向き合おうとする生徒も増えているということです。

野外で行われる授業のうち、金澤さんが特に力を入れているのが学校の裏山での授業です。ふだんの生活のすぐそばで自然の営みを学ぶことができるためです。

裏山での授業で金澤さんは最初に倒れたミズナラの木を土台にして新しい木が生えている様子を生徒たちに見せ、「倒れた木で木が子どもの木を育てている。森林のことばで古い木が倒れて新しい木が伸びてくることを更新というんだ。」と自然が循環している様子を解説していました。

そして金澤さんは次に樹齢が数百年はあろうかという大きな木を見せ、知床の自然の雄大さを生徒たちに感じてもらっていました。

授業のあと

金澤裕司さん
「なるべく動物や植物の名前も伝えるようにしていますけど、それをただ口移しに覚えてもあまり意味はない。やはり『知りたいな』と思ってもらうこと大切だと思う。」と知床学では生徒たちの好奇心を大切にしていると話していました。
金澤裕司さん
「知床は非常に大きな力を持った場所だと思います。自分自身が自然とどう向き合い、どう生きるかということを考えられる場所で、自分の生き方とか価値観とか行動が変わっていきます。子どもたちにはそういうふうに知床と関わってほしいなと思っています。」

と子どもたちへの期待を語ります。


(取材・釧路放送局記者 田村佑輔)

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2020年7月22日


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