NHK札幌放送局

津波避難 周知・定着は? 鹿部町での取り組み

ほっとニュースweb

2022年3月2日(水)午後7時50分 更新

去年道が公表した千島海溝と日本海溝沿いの巨大地震による津波の新たな想定で、道南でも浸水域が大きく広がりました。
自治体はハザードマップや避難計画の見直しを迫られています。
そこで課題となるのが「住民にどう周知し、定着させるか」です。こうしたなか鹿部町では住民どうしで災害に備えようと動き始めています。

動き始めた住民

鹿部町で暮らす鈴木昌志さんは町内会の副会長をしています。

29年前、鈴木さんはせたな町に住んでいて南西沖地震を経験しました。この経験を生かして命を守るために津波に備える大切さをほかの住民にも伝えたいと動き始めました。

鈴木さんが始めた活動、それは、自ら作った地図を持って、同じ町内会の顔なじみの住民を訪れることでした。

そして、津波が起きた際の避難ルートを説明したのです。

町内会副会長 鈴木昌志さん
「隣の家やその先の隣の家というように小さなコミュニケーションをいっぱいとっていきたいと思います。絆を深めることで想定外のことでも対処できる仕組みを作りたいです」

鈴木さんが活動を始めたきっかけは津波の浸水域の拡大です。

これまで鈴木さんが住む地区は水に浸からない想定でした。

しかし鹿部町では浸水域が33%拡大し、鈴木さんが住む地区を含む多くの世帯が新たに水に浸かる想定になったのです。

このため鹿部町は避難場所などを見直し、改訂したハザードマップを公開する方針です。しかし、住民への周知には課題があるといいます。

鹿部町総務・防災課 徳丸照彦 防災危機管理官
「ハザードマップを行政で配って住民のみなさんに見てくださいと言ってもそのまま押し入れにポンッと入れられるものですよね。こちらがいくら声を大きくしてもなかなか伝わらないので、どのように住民に周知していくかというのがいちばん大きな問題になると思っています」

避難の際に支援が必要な住民は?

そこで期待されているのが、日ごろからつきあいのある住民どうしで情報を伝えることです。

以前の想定では、鈴木さんたちが住んでいる地区の避難場所は近くの公民館でした。
しかし、津波で浸水する想定になったため、町は新たに高台の公園を避難場所に指定しました。
避難する距離が長くなり、高齢の住民には負担が大きくなります。

町内会副会長 鈴木さん(左)
「いままで中央公民館って毛利さんの家のすぐ裏でしょ。それこそ歩いて行っても苦にならなかったもんね。今度は10倍くらい遠くなるもんね」

鈴木さんと同じ町内会の毛利さん(右)
「そうだよね。あんまり足が丈夫じゃないからね」

支援が必要な人の避難をどうするのか。
鈴木さんの地区では一人ひとりの状態を把握しながら、対応を話し合っています。

町内会副会長 鈴木昌志さん
「やっぱり住民どうしが最低限できることをふだんから話し合ってそういう気持ちを伝えて、一緒に行動しましょうということを認識することがものすごく大事だなと思います」

町は今後、ハザードマップの公表にあわせて住民への説明会を開く予定ですが、定着には住民の取り組みが不可欠だと考えています。

鹿部町総務・防災課 徳丸照彦 防災危機管理官
「住民の方の協力というのは非常に大きいです。なかなか伝わらないことが顔見知りの町内会の会長さんとかお隣の方が言えばスムーズに入ってくるんですよね。1つの町内会でやれば、『じゃあうちも』というふうになっていきますよね。そういう大きな流れを作りたいと思っています」

避難時に支援が必要な人たちへの対応は?

1人暮らしの高齢者や障害者など自力での避難が難しい人などについて、各市町村では、住民基本台帳に基づきそれぞれ個別の避難計画を策定することが努力義務になっています。

鹿部町の場合、個別避難計画の対象者はおよそ500人です。町によると、およそ10分の1の策定にとどまっているということです。しかし、鹿部町に限らず、ほかの自治体でもなかなか進んでいません。

ほかの自治体での動きは?

鹿部町ではほかの地区でも同様に住民が主体的に動いていて、避難経路などを書いた地図を各世帯に配布しています。

このほか、函館市内の町内会でも住民が動き始めています。
例えば、北浜町会は全域が浸水域に入っている地域です。
市が指定する避難場所では避難に時間がかかったりするなど課題があります。

そこで、住民が近隣の企業に呼びかけて独自に避難場所を確保したり、地区で防災マップを作成したりしています。

また、各自治体では新たなハザードマップの公表に向けて準備が進められています。鹿部町のほかに、木古内町などでは町の職員が地区ごとに説明会を開いて改訂されたハザードマップを広く周知することにしています。説明会では災害に向けた備蓄品など日頃からの備えについても呼びかけることにしています。

ただ、いくら行政が呼びかけても、実際に避難するのはひとりひとりの住民です。

命を守るためには、行政に頼るだけではなく、住民が避難への意識を共有し、行動することが大切だと感じます。

鹿部町が進める「自ら考える」津波避難についての記事はこちらです。
「自ら考える」津波避難 鹿部町の訓練から

<取材した記者>
小柳玲華(函館放送局・放送部)
2020年入局。函館局が初任地。警察・司法や災害を中心に取材

2022年3月2日


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