NHK札幌放送局

なぜ増えない?北海道の避難施設

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2022年3月18日(金)午後2時23分 更新

東日本大震災の教訓として、全国では津波避難タワーとビルの整備が進みました。 私が勤務したことがある静岡県など南海トラフ巨大地震と津波が想定されている自治体では急速に整備が進み、住民にとってもなじみの光景となりました。 一方で、千島海溝・日本海溝沖の巨大地震と津波により、最悪の場合およそ13万7000人が死亡するとされている北海道では、整備が思うように進んでいないのが現状です。 市町村が直面している課題を取材しました。 (札幌局・小栗高太記者) 

津波被害が想定される厚岸町

北海道東部に位置し、およそ8800人が暮らす厚岸町。周囲を海と湖に囲まれ、海抜1メートル前後のエリアに役場や郵便局などが集まっているため、津波への備えが課題とされてきました。

町では去年1月、国や道の千島海溝・日本海溝沖の巨大地震による津波浸水想定に基づき、独自のCGを制作しました。動画では震度7の激しい揺れの後、早いところでは22分で最大21メートルの第一波が到達し、市街地にまで津波が押し寄せる様子が再現されています。このため町は動画の中で、地震発生から20分以内に高台に避難するよう呼びかけています。

町の防災計画では、津波が来た場合、町の中心部の港町地区の住民およそ500人が、唯一の高台に位置する1.5キロ先の道の駅に避難することになっています。

津波避難の難しさ

実際に避難した場合、どのくらいの時間がかかるのか、私はハザードマップをもとに港町地区の端から道の駅まで歩いてみました。早足で歩きましたが、避難場所に近づくにつれ坂道や階段が増え、到着には20分あまりかかりました。今回は日中の発災を想定し、すぐに避難を始めましたが、夜間や足場が悪い冬場であれば、さらに時間がかかることが見込まれます。

住民からは不安の声もあがります。

地震が起きた場合は、一目散に道の駅まで逃げるように家族と話し合いをしています。町の訓練で道の駅まで避難した際は、結構距離があったので冬などであれば逃げられるか不安になりました

避難場所が1か所しかなかったらみんなが来たらいっぱいになるじゃないですか。皆が一斉に上まで行かなくてもいいようにさらにもう1か所くらい町中に避難場所があってもいいかなと思います

こうした住民の声を受け、町では新年度予算案で、港町地区にある町有施設を津波避難タワーに建て替えるための設計費およそ1400万円を計上しました。しかし、これには建設費などは含まれておらず、実際に建てるとなるとさらに多額の費用が必要になり、このことが町で避難施設の整備が進まない一因となっているのです。

津波避難施設の建設への課題

東日本大震災から11年となった今、全国にあるおよそ1万5800基ある津波タワーとビルのほとんどが、南海トラフ地震と津波が想定されている地域に集中していて、千島海溝・日本海溝沖地震により広範囲の津波が予想される道内は601基にとどまっています。

背景には、南海トラフ巨大地震が想定されている地域と千島海溝・日本海溝沖地震が想定されている地域とでは津波避難タワーとビルを建てた際の国や都道府県からの補助率の違いがあります。

例えば高知県では、日頃の訓練などを通じて、すでにある避難施設では避難できないことが判明した地域については、新たに整備する際に国の補助に加えて、県からの補助も受けられ、市町村の実質的な負担は1割で済みます。一方で、北海道では国の補助しかなく市町村の負担は2分の1に上るのです。

厚岸町の若狭靖町長は、今の制度では道内の市町村にとって、負担が大きすぎると指摘します。

若狭靖町長
避難タワー、避難ビルというのは1億、2億以上もかかるんです。これを作ることは地方自治体にとっては大変なことで、避難施設の整備は財政上の問題となっています。ただ、津波による死者を減らすために整備を進めることは行政の責任だと思っているので、なんとかしたいと思っています

動き出した国。道は?

国は近く、千島海溝・日本海溝沖地震対策に関する特別措置法を改正して、南海トラフの沿岸地域並みに補助率を引き上げる方針です
こうした国の動きを受けて、専門家は北海道でも国の補助に上乗せする形で市町村への支援を強化すべきだと指摘します。

北海道大学大学院 高橋浩晃 教授
実際問題として、ハード整備をする上では財政が重要になってきます。国や道は市町村地域を支援する立場になるので、地域の要望をよく聞いてそれをできるだけ手助けできるような柔軟な補助メニューを用意していくことが大事になります

今後、道内でも津波避難タワーやビルの整備が進むのか取材を続けていきたいと思います。

2022年3月18日

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