暴風雪の脅威や、事例、それに必要な備えを釧路地方気象台の観測予報管理官、中山寛さんに聞きました。

写真:平成25年3月暴風雪(中標津町)
○暴風雪 道東でも過去に被害
道東にも繰り返し被害をもたらしてきた暴風雪。平成25年3月に発生した暴風雪では、中標津町で5人が亡くなりました。このうち4人は、雪に埋まって動けなくなった車の中にいて、排気ガスが車内に充満したことで一酸化炭素中毒になったとみられています。また、オホーツク海側の湧別町でも車から避難した親子が猛吹雪に巻き込まれ、父親が亡くなるなど、この暴風雪ではあわせて9人が犠牲になりました。被害を繰り返さないために、猛吹雪の注意点などについて専門家に聞きます。
○暴風雪の脅威
暴風雪の危険性について解説してくれるのは、30年間、予報業務に携わってきた、釧路地方気象台の観測予報管理官、中山寛さんです。

写真:釧路地方気象台 中山寛観測予報管理官
1. 視界不良
暴風雪とは雪を伴って強い風が吹き、降っている雪だけでなく積もった雪も風で巻き上げられる現象です。このため視界が真っ白になる、いわゆる「ホワイトアウト」が起きます。吹雪の中に入ってしまうと数メートル先も見えないので、人は方向感覚を失ってしまい、近所であっても道に迷って家に帰れなくなるおそれがあります。吹雪に長時間さらされると、みるみる体温が奪われ、命に危険が及ぶ可能性もあります。また、視界がほとんどなくなりますので、車を運転することも危険です。前の車のブレーキランプが吹雪で見えず、追突してしまう事故が後を絶ちません。暴風雪の際にはできるだけ外出は控え、もし運転中に視界が悪くなり始めたら、道の駅や店舗の駐車場などに車を止めて天候の回復を待ちましょう。
2. 吹きだまり
暴風雪が起きると、風で飛ばされた雪が吹き寄せられ、大きな雪の壁「吹きだまり」が発生します。この吹きだまりが様々な被害をもたらします。大きな吹きだまりであっても吹雪の中で運転しているとなかなか気づきません。いったん吹きだまりに突っ込んでしまうとバックしようにも動けず、立往生してしまう危険性があります。立往生した車の周りには、吹きだまった雪がどんどん積もっていき、気が付かないうちに、排気ガスが車内に充満して一酸化炭素中毒になる危険性があります。車には防寒着や毛布などを備えておきましょう。また、立往生してしまったときには、追突されないようにハザードランプを点滅させ、原則エンジンは止めるようにしましょう。暖をとるためにエンジンをかけるときにはスコップなどでマフラーの周りを除雪するようにしてください。

写真:平成25年3月暴風雪での立往生
3. 暴風、着雪の被害
非常に強い風が吹きますので、看板などが雪とともに飛ばされてくる可能性があります。秒速18mの風は時速にすると60キロ余りにもなります。軽いものでもこの速さで人に当たれば大けがにつながります。さらに飛ばされた物が電線にひっかかったり、雪が電線に付着したりすると停電する場合があります。いったん停電すると吹雪のあいだは復旧工事が難しく、停電が長期化する可能性もあります。停電に備えて、ふだんから電気を必要としないポータブルストーブやカセットボンベを使うストーブなどを用意しておくと良いでしょう。

写真:暴風雪イメージ
○ポイントは「天気は急変することが多い!」
暴風雪への備えを難しくしている要因の1つが「天気の急変」です。平成25年3月の暴風雪の際にも被害が大きかった中標津町では、昼過ぎまで晴れていたのにもかかわらず、4時間後には統計を取り始めてから最も強い風を観測する猛吹雪となりました。暴風雪の危険性を事前に体感で察するのは難しいと言えます。気象台が発表する気象情報をニュースなどで見ていただき、注意・警戒が呼びかけられている時は十分な対応を取っていただければと思います。
2021年1月8日