北海道南部で「あなたは犯罪をおかした」などというありもしない話で金を要求され、だまし取られる詐欺被害があとを絶ちません。
ことしに入って被害額は過去最悪のペースで増加しています。
中でもことし10月、函館市では1億5000万円をだまし取られる被害があり、8月にも5900万円の詐欺被害がありました。
2つの事件は、似たような手口でだまされています。
なぜ詐欺に気づけなかったのか、そして、どうすればだまされないのか。
ますます巧妙化する架空請求詐欺など特殊詐欺の手口を解説します。
(取材:NHK函館放送局 奈須由樹)
みなさんへのお願いです。”老人ホームの名義貸し”に注意!!
それは1本の電話から始まりました。
ことし8月、函館市に住む70代の女性が、
自宅にかかってきた電話で、うその話を信じてしまったのです。
不動産会社の職員を名乗る人物
「老人ホームに入りたい客がいるが、入居枠を貸してもらえませんか?」

女性が応じたところ、数日後、再び電話がありました。
弁護士を名乗る人物
「名義貸しは違法です。
あなたの資産を裁判所に預ける必要があるので、わたしに送ってください」

女性は指示されるまま10月14日までに都内のマンションやアパートに宅配便で現金を11回に渡って送った結果、あわせておよそ1億5000万円をだまし取られてしまいました。
似た手口で5900万円の被害
函館市ではことし8月にも似たような手口で5900万円をだまし取られる被害がありました。
この被害も”老人ホームの名義貸し”に対して、
犯罪だと不安をあおり現金をだまし取る手口でした。
なぜ詐欺に気づけなかったのか、被害にあった女性が報道陣の取材に応じました。
「函館に入居したい人がいる。その人が安心して住めればいいなと思い、善意で名義貸しに同意しました。
自分はだまされやすい弱い人間だから気をつけないといけないと思っていましたが、詐欺ってすごい口が上手で信じさせるのがうまい人たちなんだと思いました。本当にころってだまされました」

この女性は老後のために貯めていた全財産を失ったということです。
勘違い恐れず相談を
詐欺グループは”老人ホームの名義貸し”に応じたあなたの善意につけこんで
”犯罪者”とあおり、現金をだましとろうとしてきます。
”老人ホームの名義貸し”という話をされたら必ず電話を切って、
家族や警察に相談するようにしてください。
詐欺被害を防ぐために民間や行政の対応は
特殊詐欺を防ぐために民間や行政も対応に乗り出しています。
函館市の電化製品販売店では特殊詐欺に対応した固定電話のコーナーを作っています。

こちらの固定電話に電話すると、
自動で「この音声は録音されています」というアナウンスが流れます。
また、「迷惑ストップ」と言われるボタンがついていて、
怪しい電話を受けてもこのボタンを押すと「この電話はこれ以上受けることが出来ません」というメッセージを流して、電話を切ることが出来ます。
さらに今金町では、録音機能など特殊詐欺に一定の効果がある機能がついた固定電話機を町内で購入した人に、1万5000円を上限に補助する取り組みを9月から始めました。

対象となるのは今金町に住む人で、全員が65歳以上の世帯です。
申請期限は来年3月17日までです。
今金町 くらし安心課 岸哲郎 係長
「道南でも特殊詐欺の被害や未遂がかなり発生しているという情報があり、
今金町でも人口の約40%、2000人以上が65歳以上に該当するということで被害に遭う人がひとりでも少なくなるようにこの制度を利用してほしい」

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