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格闘技がコンブ漁を救う 人材不足の現場・釧路で

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2023年8月8日(火)午前11時06分 更新

道東・釧路町の昆布森漁港。日本有数のコンブ産地として知られる一方、体力が必要なコンブ漁の担い手は高齢化が進み、若手も少なくなっている。 深刻な人手不足の悩みを“筋肉の力”で解決しようと、「釧路の剛腕」と呼ばれる男性が立ち上がった。  (釧路局記者 梶田純之介)


釧路の剛腕 能登崇さん

ことし5月、釧路市内に格闘技ジムがオープンした。その名も「GO ONE(剛腕)GYM」。およそ30人の生徒を熱血指導するこのジムのオーナーは、総合格闘技やキックボクシングの全国大会で連戦連勝を重ね、「釧路の剛腕」と呼ばれる能登崇さん(39)。
能登さんには、実はもう一つの顔がある。

コンブ漁師である。釧路町の昆布森漁港で、20歳の頃から漁を続けている。
コンブ漁師の朝は早い。漁は午前5時から始まり、およそ2時間半もの間、30キロほどある大きなコンブの束を、海から船に引き揚げ続ける。

港に戻ると、すぐさまコンブを干場(かんば)に揚げて干す。「コンブ干しは時間勝負だ」と能登さんは話す。数百本もあるコンブを、およそ2時間のうちに勢いよく並べていく。両腕に3本ずつコンブを持ち、後ろ向きに走ってコンブを伸ばしていくのだ。記者の私も体験してみたが、10分もやると、両腕や肩の筋肉が痛くなって休憩したくなる。そんな私を見て、能登さんは「梶田さん、もっとたくさんコンブ引かないとダメですよ」と苦笑い。手際よくやらないと、質のよいコンブはできないのだという。

高齢化と人手不足に悩む現場

いま、能登さんには心配事がある。
それは、コンブ干しの人手不足。現在、昆布森漁港には50人ほどがコンブを陸で干す作業に携わっているが、その大半が60代以上。強い筋力が必要なため、中にはけがをしてしまう人もいるという。

格闘家兼コンブ漁師 能登崇さん
「みんなもう年配で、年重ねていっちゃうんで。体力使うし、大変なんで。若手が必要ですよね」

筋肉の力をコンブ漁に

能登さんは、ある秘策を考えている。新しく開いたジムで、コンブ漁に必要な背筋を若い人たちに鍛えてもらい、アルバイトでコンブ漁を手伝ってもらうのだ。

このジムでは、背筋を鍛えるために一風変わったトレーニングを取り入れている。長さ5メートルほどある太いロープを両腕に持ち、30秒間上下に振り続けるのだ。こうすることで、格闘技にもコンブ干しにも使える強じんな背筋の力が身につくのだという。

コンブ干しを生かしプロ目指す

能登さんの思いに共鳴し、コンブ漁を手伝うのは、ジムに通う釧路市の高校生、小松羅委夢さん(15)。プロの格闘家を目指し、ジムが開いている週4日、毎日欠かさずジムに通う。尊敬する能登さんに「コンブ干しやろうか」と問いかけられ、小松さんは「やりたいっす」と即答したという。

小松羅委夢さん
「自分は体力が欲しくて、コンブ干しはつらい仕事なので体力もつくと思いました。一石二鳥だなと思ってやろうと思いました」

そして8月。迎えたコンブ漁の日。漁港へ戻る能登さんの船を待つ、小松さんの姿があった。この日ついに、コンブ干しを手伝いに来たのだ。

ジムで鍛えた背筋をフル活用し、小松さんは1束40キロから50キロのコンブを次々と陸に揚げていく。そんな姿を、能登さんは満面の笑みで眺めていた。

小松羅委夢さん
「これはだいぶ力がつきますね。この力を格闘技に生かしていけそうなので、本当にやってよかったなと思ってます」
格闘家兼コンブ漁師 能登崇さん
「コンブ漁だけでなく、人材不足はどの職場にも訪れるのかなと思っています。ジムで鍛えた筋肉が、人材不足で困っている釧路の人のためにもなり、格闘技も強くなる。お互いにいいと思います」

能登さんは、コンブ漁だけでなく、重い荷物を運ぶ飲食業など、筋肉を使う別の仕事でも地元の企業と提携して、ジムに通う生徒たちにアルバイトで働いてもらう取り組みも始めているという。釧路の人手不足の解決策となるか、今後も注目だ。

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