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コロナ禍で変わるか「東京一極集中」 “適疎”で移住者を呼び込む

ほっとニュースweb

2022年1月28日(金)午後8時18分 更新

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、「東京一極集中」の流れに変化の兆しが現れています。去年1年間に東京から転出した人は41万人余り。東京23区では、初めて、「出て行く人」が「入ってくる人」を上回る「転出超過」となりました。東京から外へと向かう人の動き。北海道東川町では、こうした人たちを取り込もうと移住の促進に乗り出しています。キーワードは“適疎”な暮らしです。 (札幌局・吉村啓記者) 

【コロナ禍の打撃】

大雪山系のふもとに位置する東川町。農業を基幹産業とする人口およそ8400人の町です。町は、これまで、人口を増やし、経済の活性化につなげようと外国人留学生の受け入れに力を入れてきました。2015年には町立の日本語学校を設立。生徒数も順調に増え、町を支える人材として期待を寄せてきました。

しかし、新型コロナに伴う入国制限で入学者が激減。町の外国人居住者も、この2年で100人ほど減ってしまったのです。

「外国人居住者がいることによって、町の消費が100人分増えるわけですから。100人分の消費が落ち込んだということは、人口8000人余の町の経済にとっては非常に大きな影響がありました」(東川町・松岡市郎町長)

【東京を出る人たち】

そこで、町が注目したのが、首都圏など大都市からの移住の動きです。去年1年間に、東京を転出し、各地に移り住んだ人は、41万4734人に上ります。このうち、北海道に移り住んだ人は、1万1496人。これは、全国でも8番目の多さで、東京近郊などに次ぐ水準となっています。

コロナ禍の中、道内に向かう人の動き。東川町は、こうした人たちに狙いを定め、移住の促進に乗り出しました。去年1年間に東京から東川町に移り住んだ人は49人。コロナ禍前の2019年に比べると21人増えました。

【キーワードは“適疎”】

移住者を呼び込むため、町が打ち出したキャッチコピー、それが“適疎”です。「過密」でも、「過疎」でもない、人と人との適度な「距離感」を表した言葉です。コロナ禍でテレワークが普及する中、都会の「密」を抜け出そうとする人たちの心をつかもうと、コンセプトに掲げました。

【“適疎”なまちづくり】

快適なテレワーク環境を整えるため、町は、2021年、無料のWi-Fiを備えたシェアオフィスを整備。オフィス内には、町内の家具職人が手作りした机やいすを配置しています。

さらに、2022年1月、“適疎”をコンセプトにしたまちづくりを進めるための「司令塔」として、「適疎推進課」を設置。今後、4億円をかけて、シェアオフィスをさらに4棟建設するほか、移住者向けの住宅確保などを進めることにしています。

【“適疎”は町の価値】

東川町の松岡市郎町長は、町ならではの“適疎”な暮らしを後押しすることで、多くの移住者を呼び込めると考えています。

「コロナ禍の中で経験したことがたくさんありましたよね。本当に過密の状態がいいのだろうかと。特に、過密な東京で働いている人たちには、もっと環境のよいところ、あるいは、子どもたちにとって生活のしやすいところに移住し、そこで仕事をするということを考えていただけたらと思います」
「この町にとって、“疎”があるということは貴重な『価値』だと思っていて、こうした『価値』を生かしていくことが、これからの農村社会なのではないのかなと考えています。われわれのような“適疎”な町が果たすべき役割っていうものがあるんじゃないかと思うんです」(東川町・松岡市郎町長)

【共感抱く移住者】

町が打ち出した“適疎”のコンセプトに共感して移住を決めた人がいます。2021年6月、東京から東川町に移住した遠又圭佑さん(32歳)です。

東京のデザイン会社に勤める遠又さん。感染拡大を受けて、会社の仕事が全面的にテレワークに移行したことをきっかけに、東京からの移住を考えはじめました。そこで出会ったのが、町が打ち出した“適疎”というコンセプトでした。

「東川の“適疎”っていうキーワードを聞いたとき、何かずっと持っていた違和感の答えとなる1つのあり方がここにあるなと感じたんです。無理に、町としての人口の増加とかを追わずに、豊かな暮らしがある。すごくシンパシーを感じたというか、ひかれる面がありました」(遠又圭佑さん)

【暮らしと仕事のサイクル】

休みの時間は、夫婦で、自然があふれる町内を散歩するのが遠又さんの日課になっています。豊かな自然の中での暮らしは、仕事にもよい影響を与えているといいます。

「一歩、外に出ると、雄大な景色が広がっているっていうのは、すごくホッとします。仕事をする時間もありつつ、雄大な自然の中で遊んで感性を磨いて、それを、もう1回、仕事にフィードバックする。そういったサイクルができているかなというふうに思います」(遠又圭佑さん)

【コロナ禍での課題も】

“適疎”な移住を進めるには課題もあります。コロナ禍の中で、移り住んだ人たちと地元の人たちとのつながりをどう築いていくかという問題です。見ず知らずの土地で暮らし続けるには、支えとなる人間関係が欠かせません。しかし、感染拡大で、地域のイベントは相次ぎ中止。交流の機会は思うようにつくれていません。

移り住んだ人たちの定着を図るためにも、町は、今後、オンライン交流会の開催などを検討しています。

「移住された方が町の魅力を感じずに、例えば、違う街に転居してしまうとか、自分が思い描いていた生活ができないっていうような失望感を感じないように、安心して生活いただけるようなことができたら、本当に望ましいかなというふうに思っています」(東川町適疎推進課・窪田昭仁課長)

コロナ禍の中、大都市を出る人たちの心をどうつかみ、いかに呼び込むか。模索が続いています。

札幌局記者 吉村啓
2013年入局。奈良局、旭川局を経て、現在は札幌局で北海道庁を担当。大阪府出身。プログラムに興味あり。

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