NHK札幌放送局

【千島海溝沿いの巨大地震】どうする?津波の避難先

NHK釧路放送局

2021年3月5日(金)午後3時29分 更新

先日、釧路市で行われた巨大地震による大津波を想定した避難訓練が行われました。そこから見えた課題とは。

令和2年10月、釧路市で行われた巨大地震による大津波を想定した避難訓練が行われ、住民や企業、それに学校などからおよそ900人が参加しました。このうち、大楽毛小学校の子どもたちが避難するのは、1キロあまり内陸にある高さ14メートルの高台。学校は浸水する可能性があるため、地震が起きたときには高台まで走って逃げる計画です。

訓練には、1年生から6年生までの児童全員が参加しましたが、なかには途中で転んだり立ち止まったりしてしまう子どもいました。全員の避難にかかった時間は約20分。津波が到達すると予想されている時間よりも前ですが、一緒に走った私は、もし地震が起きたときに学校にいたら、この距離を走って逃げ切れるのかと不安を感じました。

小学校がある釧路市西部の大楽毛地区。5700人あまりが暮らしていますが、海岸から平らな地形が広がり、令和2年4月に発表された国の想定では広い範囲が5メートルから10メートルの深さで水につかるとされています。

大楽毛地区には避難に適した高い建物が少ない上、地区を分断するように線路があります

線路より南側の地域では内陸の高台まで逃げる際に数少ない踏切を渡るため1.5キロほどの距離を逃げる必要があるところもあります。

大楽毛地区では65歳以上の人が全体のおよそ40%と高齢化が進んでいます。

障害者など自力で避難できない人が60人あまりいることから町内会ではリヤカーを使って避難を手伝うことも検討していますが、移動距離が長く全員を迅速に避難させるのは難しいのが現状です。

このため、町内会は市に対して、津波避難ビルなどの避難施設を建設するよう何度も要望していますが、まだメドは立っていません。

大楽毛地区連合町内会の会長、中村啓さんは「近くの高い建物は絶対必要だと感じている。建設を求めている施設は地域の住民の命の綱のようなもので要望を続けている」と話しています。

平成24年に道が発表した巨大地震による津波想定では、釧路市内の浸水域に人口のおよそ7割にあたる12万人あまりが暮らしているとみられています。釧路市では避難先の確保を進めていますが、大楽毛、星が浦、音別、尺別、直別のそれぞれ一部の地域は、近くに高い避難先がない「避難困難地域」だとしています。また、浜中町でも湿原に隣接する新川、暮帰別、仲の浜、琵琶瀬の一部地域が「避難困難地域」とされています。釧路市など各自治体は、避難場所や避難路の整備を進めるため、整備費用について南海トラフ巨大地震が懸念されている地域と同じように国の補助率を3分の2に引き上げるよう国に求めています。

釧路市防災危機管理課の佐々木和史 防災危機管理監は「市の財源は限られているため国の協力も得ながら津波対策を急ピッチで進めていきたい」と話しています。

では、全国の市町村では、どのように整備を進めているのでしょうか?内閣府のまとめでは、平成30年8月現在、全国にある津波避難タワーは427棟。都道府県別で設置数が多いのは▽静岡県が129棟、次いで▽高知県で110棟となっています。それぞれの県でどのような工夫をしているのでしょうか?

静岡県では、「地震・対策等減災交付金」という事業を作り、市町村が津波の避難施設を整備する場合、国からの補助金に加えて、県も補助金を出すことにしています。これにより、市町村が実質的に負担する割合を5%ほど引き下げて、避難施設の建設を促しているということです。また高知県は平成24年度から国とともに県が補助金を出すことにより、市町村の負担が実質なくなるような制度を導入していました。整備を一気に進めるため、年数を限り、平成27年度に終了しました。そして令和2年度からは、日頃の訓練などを通して、新たに作った避難施設だけでは足りないという地域については、再び県が補助を出し、市町村の負担を実質1割程度にする取り組みを始めています。

避難施設は、避難タワーだけではありません。静岡県吉田町では歩道橋を兼ねた避難施設を設置しました。また、静岡県袋井市や徳島県小松島市などでは「命山」と呼ばれる人工の高台を作る取り組みが行われています。広い土地があれば建設が可能で、ふだんも公園などに利用できるということです。

画像提供:袋井市

この「ふだん使い」ができる施設という考え方で、釧路市中心部に5年前完成した道営住宅でも、最上階の集会室が非常時には津波の避難場所に使われるように工夫されています。高い場所がない地域で、津波からの逃げる場所を確保するということは、住民レベルでできることではありません。対策の先進地では、避難先ができたことによって、地域の防災への意識が大きく変わり、さまざまな対策が進められています。全国の先進事例を学び、専門家の知恵ももらいながら、道東でのよりよいモデルを考えていく必要があると思います。

NHK釧路放送局 頼富重人(記者)

2021年3月5日

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