NHK札幌放送局

函館で避難者最大7万人 避難所設営1度は経験を

道南web

2022年9月6日(火)午後5時59分 更新

道内で最も多い「最大7万人」。 これは北海道の沖合で巨大地震と津波が発生した場合に、函館市内で想定される避難者の数です(北海道発表)。津波で浸水する地域の住民のほかに、建物の倒壊で避難する人の数も含まれています。道南での避難者数は最大11万人近くに上る想定で、北斗市で1万8000人、八雲町で8100人などとなっています。

誰もが避難者になる可能性がありますが、避難生活を経験したことがなくリアルに想像しづらいという人もいるのではないでしょうか。
避難先で1人でも多くの人を助けるため、私たちがお互いにできることは?
「防災の日」にあわせて函館市で行われた、避難から避難所設営まで一連の訓練を取材しました。

さまざまな人が避難する

避難所に指定されている函館市立銭亀沢中学校です。
今回の訓練は、震度6弱の地震が発生し、市内全域で停電、水道も止まったという想定で行われました。避難指示を聞いた生徒全員が一斉に、体育館に避難します。

避難所にはさまざまな人が集まります。
車いすに乗っている人、臨月が近い妊婦、目の不自由な人の「役」をあらかじめ決めておき、生徒が助け合いながら避難することで、配慮が必要な「要配慮者」への対応も学びます。

車いすを押した生徒
「思ったより小回りがきかなくてぶつけそうだった。段差も転びそうでこわかったです」
目の不自由な人の役をした生徒
「最初は方向感覚があり大丈夫かなと思ったんですけど、そのあとは方向感覚や階段、道がわからなくなりました。体育館のいすに座った時も自分がどこに座っているのかわからなくなって、とても不安で焦りました」

今回の訓練は、函館市で防災活動を続けてきた函館市女性会議が主催し、生徒や教職員のほか地域の人や市の職員も参加しました。会長の佐々木香さんは、避難所の多くを占める学校で訓練を実施することで、子供たちから地域の人まで防災意識を高めたいと考えています。

佐々木香さん
「ジェンダーの視点を持つことや要配慮者のことに気遣いができる子どもたちが、リーダーとして育ってくれることを願っています。避難所でどのようにして自分の日常に近い状態を保つことができるのかは、集まった人たちでお互いを思いやらないとなかなか実現できない」

1度でも体験することが大切

今回の訓練では、地域の人が学校に避難してくることを想定して避難所の設営にも取り組みました。
一から段ボールベッドや簡易トイレを組み立てたり…

避難所生活に必要な情報を集めた掲示板をつくったりします。小さな子どもや外国人でも内容がわかるよう、生徒が漢字にふりがなをふったものもありました。

このほかにプライバシーを保護できるテントも設営。乳幼児がいる世帯が過ごしやすいよう、おむつの交換や授乳ができるスペースも設けました。

設営後には、生徒たちが実際に簡易トイレに座ったりテントの中に入ったりして避難所生活を体験しました。

生徒
「一番大切だと思ったのは気遣いです。もし自分が配慮が必要な人の立場にいたとしてどうすれば少しでも安心してもらえるか考えたときに、やっぱり気遣いだと思いました」
生徒
「テントでプライバシーを守れる環境があってすごくいいなと思いました。妊婦さんはやっぱり大変だと思うのでサポートしたい」
生徒
「妊婦役をしましたが、体が重く動きにくいし座るのも大変なので妊婦さんは大変。災害時はあわてるだろうし今日のようにできるかまだわからないんですけど、もっと練習とか避難訓練とかしていけばできるんじゃないかな」

主催した佐々木さんは、非常時でも対応できるよう、平時から「1度でも体験しておくこと」が重要だと話します。そして、こうした訓練を広げて防災への備えを見直す機会をつくっていきたいとしています。

佐々木香さん
「テントや段ボールベッドの組み立てなど、一度経験した1つ1つがこれから自分たちの財産になっていく。大切な人の命を守るための備えが日頃からできているか自分自身に問いかけていただきたいです」

災害の規模が大きくなればなるほど、「自助」と「公助」、そして、となり近所の人と助け合う「共助」の3つの連携が重要になります。さまざまな人が集まる避難所で自分になにができるのかを知り、どのように助け合えばいいのか考えておくことも、大切な防災の備えの1つです。

(取材:NHK函館 毛利春香)

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