NHK札幌放送局

デザイナー・佐々木氏に聞く 「シラベルカ」キャラクター誕生秘話

シラベルカ

2020年7月30日(木)午後3時30分 更新

NHK北海道は、どうしたらもっと皆さんの役に立つことができるだろうか……? 何から取り組むべきか、熱い議論を重ねました。その結果たどり着いた私たちの答えは、「日頃の疑問や困りごとを解決して欲しい」という皆さんの声と真摯に向き合い、少しでも解決に貢献できる取り組みをということでした。そしてその取り組みを通じて、北海道がより暮らしやすく素敵な地域として輝けるよう、私たちなりに力を尽くしたい。そんな思いでスタートしたのが「シラベルカ」です。

「シラベルカ」の名前には ①NHKの強み”調べる力(ちから)” ②記者やディレクターなどチームとしての”調べる課(か)” ③掛け声“さあ、しらべるか!”……の、3つの意味が込められています。

皆さんに親しんでいただけるよう、まずは一目でわかるシンボルとしてキャラクターを作ろうと考え、札幌在住のデザイナー・佐々木信さんを訪ねました。今回のインタビューでは、佐々木さんがキャラクターデザインに込めた思いや、コロナ禍のデザイナーの仕事などについてお聞きしました。


Q:NHKからの依頼を受けてどう思いましたか?

佐々木さん:北海道の皆さんの声をニュースにして、身近なことから大きな社会問題まで、“ともに”解決していきたいというシラベルカの理念は共感できましたし、単純に面白そうだなと思ったので、すぐにお引き受けしました。お話しを頂いた時点では、シラベルカ自体にコンスタントに投稿が集まるのか?サービスとして機能していくのか?など、正直不安もありました。しかし実際スタートして数か月が経過した今、多くの投稿が寄せられていると担当ディレクターから聞き、ほっとしています。浸透するのにもう少し時間がかかると思っていました。


Q:「シラベルカ」のデザインのポイントは何ですか?

□鹿に込めた思い
佐々木さん:このプロジェクトにおける僕の役割は、デザインの力でシラベルカを広く知ってもらえるようにすることです。僕はNHKの人間ではありませんが、シラベルカを通して世の中が少しでも良い方向に変わればという共通の思いや願いを持って参加しています。

デザインする上でまず考えたのは、ぱっと見てシラベルカだと分かり、老若男女問わず幅広く受け入れられるキャラクターを作りたいということです。物事ってきちんと説明すれば大体の人は分かってくれると思います。でも多くを語らなくても瞬時に伝わる力がデザインにはあるんですよね。僕自身、文字びっしりの資料を見せられるより、逆にこの位シンプルな方が頭に入ってくるので(笑) 当初は大人からの投稿を想定していたそうですが、僕としては子どもたちにもシラベルカに参加して欲しいという思いも込めてデザインしました。

そんな子どもたちへの思いがあり、そして僕自身がシラベルカの理念に深く共感できた理由を紐解いてみると、毎月発行している「庭しんぶん」での活動と重なるからのような気がしています。僕はデザイナーなので、基本的には企業や団体から依頼を受け、その依頼物をデザインで形にしていくのが仕事です。でも、それだけではつまらない。予算がある訳でも決まった原稿がある訳でもありませんが、毎月、札幌で新聞を一から作る活動もしています。他者のメッセージを形にするだけではなくて、僕自身も、特に子どもたちに伝えたいことがあるんです(笑)

今社会には情報が溢れかえっているけれど、その中で子どもたちに知っておいて欲しいことは何だろう?どうしたら子どもたちがワクワクできる社会に少しでも近付くだろう?と考えながら、テーマ設定、原稿作成、イラストや写真の準備も全て自分たちでこなしています。

庭しんぶんで大切にしていることは、読者を大人にも子どもにも絞らないこと。どうしたら両方読めるものができるかを模索してきました。内容の深さは大人に合わせつつ、言葉は易しく。そして写真やイラストを多用することで、最近は僕の小学生の息子も読めるようになりました。シラベルカとは理念も近いものがありますが、デザインする上でもこの経験がいかされています。庭しんぶんが原稿を読まなくても写真やイラストのビジュアルからテーマが伝わるように、シラベルカも鹿を見ればシラベルカだと分かってもらえる存在にしなければならないなと。鹿がシラベルカの潤滑油になればと思っています。


□“ゆるい”デザインでも気持ちは伝わる

佐々木さん:ここからはシラベルカと関係の深い、デザインの話を少ししたいと思います。これまで経験したいくつかの仕事がシラベルカのベースになっていますが、1つの例に札幌市から依頼を受けてつくった「サッポロスマイル」があります。

食や自然など、多くの魅力的な資源に恵まれた札幌は「笑顔になれる街」という札幌のイメージを形にしたロゴです。初めてこの依頼を受けた時は、「メッセージと求められるデザインがぼんやりし過ぎていないか?」と正直不安に思いました。一見、ずばっと刺激的な言葉やデザインの方が思いは伝わりそうじゃないですか?でも実際サッポロスマイルが運用され始めると、徐々に街中でも見かけることが増え、共感の輪が広がっているように感じられました。
この案件を通して、広告でよく見かけるようなとがった刺激的な表現でなくても、(特に公共的なものは)“ゆるくて優しい気持ち”がデザインを通して伝わり、広く受け入れられることを実感できたんです。

シラベルカにもこの時の経験がいきています。「私たちの『調べる力』で、みなさんの『知りたい』に答えていきます」というメッセージを、メインビジュアルのデザインでは鹿のイラストと「あなたの疑問、僕が調べます」という表現に落とし込みました。少し“ゆるい”くらいの隙があってこそ、幅広い人に受け入れられるのかなと思っています。


Q:デザインによってシラベルカ自体も見違えるように素敵になりました。またシラベルカの仕組みも、直接取材が難しいコロナ禍で大きな威力を発揮しました。ここからはもう少し間口を広げ、 コロナ禍の今、“デザインにできること”についてもお聞かせください。

佐々木さん:新型コロナウイルスが感染拡大する中で、我々デザイナーも何かできることはないだろうかと、札幌のデザイナーたちと話をしていました。医療関係者の方々が日々大変な思いをされている中で、僕らも自分たちの力を有効活用できる何かがあるはずだと。

そこで考えたのが、「しくみ」というプロジェクト。新型コロナウイルスの感染対策をしながら過ごす新しい日常をどう過ごすべきか、「札幌市民交流プラザ」を舞台に実験し共有する取り組みを始めました。「札幌市民交流プラザ」はギャラリー、劇場、図書館、カフェ、オフィスなど、複合的な機能を持ち、多くの市民や旅行者も集まる“小さな街”のような場所。感染予防って?安全な距離って?劇場の安全性を保つには?お店で安全に飲食するには?……皆が手探り状態の中、我々デザイナーも含めた各分野の専門家が集まり、「新しい日常の教科書」を“小さな街”から発信したいと思っています。そして、今後他の商業施設などにも応用展開していってもらえることを目指しています。

応急処置的に対策していくのではなく、安全で、でも楽しさや美しさ、機能的であることとも忘れたくありません。例えば、最近街のあちこちで床に貼られるようになった「ディスタンスを保ちましょう」というマーク。お店のレジ前など、人が並ぶ場所でよく見かけるようになりましたが、あれももっと楽しく美しいものにできると思います。デザインの力で、皆さんが気持ちよくそして安全に新型コロナウイルス感染対策ができる方法を探っていきたいです。


Q:最後に、佐々木さんがデザインする上で大切にしていることは何ですか?

佐々木さん:デザイナーを始めた頃は、正直「かっこよければ良い」と思っていました。デザインって商品やサービスを広める役割もありますし、そういう意味ではデザイナーは大量消費を促すエンジンのような側面もあると思います。でもそれによって環境問題が生じたりもしているわけで……。自分の存在や仕事のやり方に悩んだ時期もありました。

そんな時、ヴィクター・パパネックというデザイナーの存在を知りました。「環境を脅かすようなデザインではなく、逆に役に立てるようなデザインを」と、1970年代から唱えていた人です。衝撃を受け、同時にとても共感できました。次第に、僕も消費するためだけのデザインではなく、社会に少しでも優しく良い影響を与えられるデザインをと考えるようになりました。デザインは、かっこいいとか美しいだけが役割ではないと思うんです。思いがデザインとして形になっていることが何より大切で、それは子どもが見ても伝わるものにしなければならないなと。そもそも、子どもに勧められないような商品やサービスのデザインもしたくないですね。自分のデザイナーとしての力を、社会を少しでも良くするためにいかしたいです。

「シラベルカ」のキャラクターも、消費するためのデザインではないですよね。「シラベルカ」が世の中に広まれば広まるほど、社会が少しでも良くなる希望が見える。だからやってみたいと思いました。これから「シラベルカ」がさらに多くの人に親しまれ、道民の皆さんの気付きや疑問がNHKを通して多くの人と共有され、世の中が少しでも良い方向に進むことを願っています。


■佐々木信氏 プロフィール
1974年北海道生まれ。デザイナー。大学在学中にシアターキノで映写技師として勤務。卒業後渡英し、一文無しで帰国。札幌の編集プロダクションに勤務後、2001年に独立し3KGを設立。札幌市交通局のICカードSAPICAや、札幌市のシティプロモートのマークをデザイン。AIRDOのマスコット「ベアドゥ」のデザインも手がける。2007年にD&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KG をオープンしたほか、2010年にシブヤ大学の姉妹校として開設された札幌オオドオリ大学の創設に携わる。毎月「庭しんぶん」を発行。


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