NHK札幌放送局

実践で見えた車いす避難の問題点

道南web

2023年1月30日(月)午前11時28分 更新

最大で8.7メートルの津波が押し寄せると想定されている函館市。 車いすで高い場所までどう避難するか? 実際に車いすをつかった訓練をおこなったのは、函館市の北浜町会。この訓練を通して あぶり出された問題点や避難のコツをお伝えします。 

車いすと高齢者と避難の関係
今回車いすの避難訓練に参加した泉谷和子さん(82)。実は泉谷さんは普段は車いすは使っていません、そして持ってもいません。しかし、心臓に持病を抱えているため長い距離をあるくことができないのです。そのため今回400メートルを避難するために車いすを借りて参加しました。実は高齢者の中には、このように普段車いすを使っていなくても、長い距離を歩いて移動することが困難な方が多くいるのです。

車いすを押すのは普段から付き合いのある綱島照美さん(67)。病院などで車いすを押したことはありますが、屋外で車いすを押すのは初めてだそうてす。

10時、避難訓練の開始です。町会で決めた一時避難所まで移動します。距離にしておよそ400メートル。

道路は障害物だらけだった
動き始めてすぐに気がついたのは、道路の傾斜です。道路は雨水などを排水するために側溝に向かって下がっています。車いすはこの傾斜に引っ張られまっすぐ進むことが難しいのです。実は車いすの重さはおおよそ13キロから15キロです。これに人を乗せて押すとなるととても重くコントロールも難しいのです。
さらにすぐそばを車が通り過ぎてゆくのはとても怖く感じました。

さらに大変だったのは交差点です。交差点は点字ブロックがあり、車輪がひっかかってしまいます。また、交差点は歩道から車道にかけてスロープになっているのですが、これが怖いのです。しっかりブレーキをかけていないと車いすが勝手に交差点にすすんでしまうのです。
今回渡った道路は4車線の国道です。しっかりと整備された横断歩道の舗装は若干凸凹に膨らんでいます。これを乗り越え4車線、およそ16メートルを渡りきらなければなりません。

車いすを押した経験のある綱島さんは比較的スムーズに移動することができました。
それでも、災害時を想定し、こんな心配を口にしていました。
綱島さん「これが災害だとみんな殺到して、我先にってなっちゃうと、ちゃんと行けるのかなという心配はあります」

一歩町内に入れば・・・
今回北浜町会では6組が参加しました。その多くが移動に苦労した道路がありました。それは国道から一本住宅街に入った町内の道です。整備された国道とは違い、道路はガタガタ。排水溝への傾斜もキツく、車いすを押すだけでも一苦労です。

「ほんとうこういう道路だもんな~」
自分の町内ながらもついつい愚痴が出てしまいます。

他の参加者も町内の道路の悪さを改めて実感しました。
「思ったより段差で、普段気がつかないところがありました。」
「押す方も力が入ってるけど、乗ってる方も(ゆれて)ちょっとつらいかなと思いました」

車いすで垂直避難に挑戦
今回の訓練には地元にある企業の従業員や町会に通ってくる人たちを含めて、120人以上が参加しました。
訓練を中心になって企画した町会役員の酒井さんは今回あえて20代から40代の若い方の参加を呼びかけました。実はこの年代、高齢者の多い北浜町会には少ない年代の人たちです。

若い人たちを連れて向かったのは、階段です。この避難所になっている小学校まで避難してきた車いすをさらに津波の心配のない4階の屋上まで垂直避難させる訓練です。

「持ち上げてみますか」
「重いと思います」

「もちあげますね」
「これはつらい・・・」

男性4人で車いすを持ち上げ少しずつ階段を上りはじめます。
ようやく一つ目の踊り場にたどり着きました。
しかし、「ここまでにしましょう」
あまりに大変そうな様子を見て町会の酒井さんがストップさせました。持ち上げていた男性の限界が近いのと、車いすに乗っている方の不安な顔。これ以上は無理と判断したのです。

車いすを持ち上げた40代男性は「意外と車いす重いんです」と息を切らしていました。
20代男性は「訓練だから良かったですけど、これ実際に避難する時となるともう少し階段がバタバタした状況で車いすの方をどうやって優先して持ち上げるかが課題になります」と車いすでの垂直避難の難しさを訴えました。

この訓練のあと、専門家から車いすで階段を上がる方法のひとつが紹介されました。
コツは車いすの向きと押し方です。
まず、車いすは後ろ向きにして傾けます。そして一番のコツは車いすを持ち上げないこと。
車輪を階段につけたまま引っ張り上げる要領です。

実践的な訓練を終えて企画した酒井道子さんは
「こんなに大変だっていうのは分らなかったです。私たちが頭だけで考えているのと違ったいろいろな問題があるので、それを今回は(発見)できたっていうのはすごく湯緒勝ったかなと、やってよかったと思います」とはなしてくれました。

【取材後記】報告:萬谷優一ディレクター
車いすでの避難、実際にやってみると本当に大変でした。
実は撮影の時に、私も実際に車いすに乗る側と、車いすを押す側を体験させていただきました。普通の道路があんなにも傾斜があり、ガタガタなんだと思ってもみませんでした。
車いすをまっすぐ押せないのです。まっすぐに押してるつもりでも道路の傾斜のせいで曲がっていくし、ちょっとの段差でも引っかかるし、なかなか思うように車いすをまっすぐには押せないのです。
 さらに、車いすに乗っている時はもっと怖かったのです。座っているのでいつもより目線が低くなり、すれ違う車が怖く感じました。そして道路の下がっている方に曲がって蛇行する不安。段差の衝撃。正直、乗ってる方がずっと怖かったです。

 今回の訓練では普段は車いすを使っていない高齢者も参加しました。車いすを押すのが初心者の方もいました。皆さん口にしたのは、「自分の避難ルートがこんなに困難な状況なんだと改めて知った」ということです。しかし、今回の訓練で参加したみなさんは車いす避難を経験して何が大変か、どうすれば良いのかが少し分ったと話していました。
これこそ実践の力です。
道路の状況も、車いすの台数も、高齢者の数も、若手の人数も、それぞれの地域で違います。だからこそ、あなたの町で実際に避難をやってみてください。
防災の第一歩は実践から始まるのだと改めて思いました。

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