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“Welcome!”と言える日を目標に web

ほっとニュース北海道

2020年11月19日(木)午後4時23分 更新

新型コロナウイルスの感染拡大で道内各地の観光施設では客足が遠のき、厳しい経営を強いられている所も少なくありません。小樽市の「おたる水族館」もその1つ。今年に入ってから10月末までの来場者数は、去年の同じ時期と比べて46%の減少となりました。 しかし、そんな今だからこそ、「アフターコロナ」を見据えて、水族館が変わろうとしています。さあ、一体どう「変わろう」としているのでしょうか? 11月20日のほっとニュース北海道で水族館から生中継でお伝えします。 

今だからこそ、できること

午後4時の閉館時刻を迎えて静まり返った館内。そこに、職員の人たちの姿がありました。おたる水族館のシンボルともいえる幅およそ25メートルのパノラマ水槽の前で、何やら立ち話…いえいえ、実はこれ、英語で館内を案内するための勉強中なんです。

写真右のスーツを着た専門の講師から、水槽内で飼育しているサメやエイなどの魚や動物について英語で説明する方法を学んでいます。
新型コロナウイルスの感染が広がる前、おたる水族館を訪れる外国人観光客は年々、増加していました。特に、これから迎える冬は、雪を見に北海道を訪れる東南アジアなどからのお客さんを中心に外国人来館者も増え、その数はおたる水族館の冬季来館者全体の3割から4割を占めます。ところが、今年は新型ウイルスの感染拡大で外国人来場者の姿はなく、水族館の経営にとっても大きな痛手となっています。でも、下ばかり向いていられない!ということで、今年8月から始めたのが英語による館内案内のための勉強会でした。

悔しかった、あの時の気持ちをバネに

おたる水族館が英語の勉強会を始めた背景にあったのが、新型コロナウイルスの感染が広がる前に1人の飼育員が経験したある出来事です。連日、多くの外国人観光客でにぎわっていた館内で、ある日、お母さんに連れられた5歳ぐらいの女の子から英語で声をかけられ、ウミガメについて質問されたといいます。その飼育員は、普段、ウミガメの飼育も担当していて知識には自信がありましたが、女の子からの質問に英語でうまく答えられず、悔しい思いをしたそうです。
今回の勉強会を企画した、おたる水族館・参与(営業推進担当)の梅津真平(うめつ・しんぺい)さんも「年々、外国人の来館者が増える中で、私たちの動物や魚について、実はうまくご案内できていないケースがありました。だったら、新型コロナウイルスで外国人来館者がほぼいない今こそ、飼育員たちの英語力を少しでも向上させるための時間に使えないかと考えたのです」と話します。
勉強会が行われるのは水族館の閉館後。希望する職員の皆さんがボランティアで集まって、展示されている動物や魚の具体的な説明方法や、ガイドとしての心構えなどを、およそ4か月間にわたって学んできました。

太郎を世界の“Taro”に!

こちら、おたる水族館のマスコット的存在、パノラマ水槽を泳ぐアオウミガメの太郎です。今から13年前、道北の港町で右の前足が無い状態で保護され、おたる水族館にやってきました。当初は自力で餌を食べることもできず、飼育員がチューブを使って流動食を胃に入れていたそうですが、今ではすっかり元気になりました。持前ののんびりした泳ぎで、おたる水族館を訪れる人たちを楽しませています。

勉強会の講師を務めてきた通訳案内士の青木良英(あおき・りょうえい)さんです。太郎が傷ついた状態で保護され、今日まで大切に飼育されている事を英語で説明できれば、外国人のお客さんにおたる水族館の素晴らしさを知ってもらえると考えました。そこで、青木さんは、外国人観光客からの想定質問を交えながら、次のような英語の案内文を提案しました。

(外国人来館者)
Oh, that turtle is missing a fin. What's the story behind it?   
おや、あのカメには足が一本ないですね。どうしてですか?
(おたる水族館職員)
It’s Taro.
His fin was missing when he came here thirteen years ago.
Taro was this size at that time.
We took care of him and he has grown big and popular.
このカメは太郎です。13年前に来たときにケガで足がありませんでした。
そのときはこのくらいの大きさでした。
私たちが治療と世話をして、こんなに大きくなって人気者になりました。


少数精鋭のおたる水族館において、来場者からの質問に直接答えることができるのは、主に現場の飼育員の皆さんです。講師の青木さんから提案された英語の案内で、外国人の皆さんにも太郎のストーリーを知ってもらい、太郎を世界の“Taro”にしたい!その日が来るまで、職員の皆さんの努力は続きます。
約4か月におよぶ英語の勉強会は今月で終了しますが、おたる水族館では、これからも、外国人来館者を温かく迎え入れるための様々な「チェンジ」を続けたいと考えています。

《取材後記》
おたる水族館・参与(営業推進担当)の梅津真平さんが取材の時におっしゃっていたのが、人口減少に伴って今後、国内からの来館者がますます減ってしまうのではないかという危機感でした。もともと、来館者に占める国内観光客の割合が大きいだけに、今後はインバウンドのお客さんの誘致に力を入れていきたいと考えていた矢先の新型コロナウイルス感染拡大。そのピンチをチャンスに変えようという発想は、まさに「アフターコロナ」と、その先の人口減少社会を見据えた戦略だと感じます。

おたる水族館の皆さんは、ご紹介したウミガメのエピソードの他にも、きっとそれぞれ、英語でうまく説明ができずに悔しい思いをされた経験がおありなのでしょう。忙しい業務の合間をぬって閉館後にボランティアで英語の勉強を続けてきた原動力は、外国人にももっと楽しんでもらえる水族館になりたいという強い思いに違いありません。
もっと自信たっぷりに、胸をはって”Welcome!”と言える日を目指して。おたる水族館の「チェンジ」にこれからも注目です!。

(札幌放送局 アナウンサー 芳川隆一)

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