NHK札幌放送局

"ヒグマと距離を”知床でマイカー規制、どうなる?知床の未来

知るトコ、知床チャンネル

2020年10月22日(木)午後3時58分 更新

  世界自然遺産・知床。年間100万人以上が訪れる道内有数の観光地です。しかし、その自然を象徴するヒグマによる人身事故が発生する危険性が高まっていると問題視されています。その背景にあるのは、ヒグマと人との距離の近さ。観光客がヒグマを見ようと餌を与えたり、写真を撮影しようと近づいたりしているのです。これを解決しようと、10月の3日間、試験的にマイカーの乗り入れを大幅に制限し、代わりにシャトルバスを運行する実証実験が初めて行われました。この期間、観光振興に一定の効果が見られたものの課題も。これから知床の交通はどうなっていくのか。今、地元では模索が続いてます。

“人慣れクマ”が増え、人身事故の危険性も・・・

 知床は15年前に世界自然遺産に登録され、年間100万人以上の観光客が訪れています。しかし、知床の象徴といえるヒグマを見ようしたり、写真を撮ろうと不用意に近づくといった問題が相次いでいます。その結果、人を恐れないクマ、いわゆる“人慣れクマ”が増加しています。ヒグマと人の距離が近くなり、人身事故の危険性が高まっているのです。

(ヒグマを見ようと近づく観光客)

 ヒグマと人の距離を保ち、観光客が安全に自然を楽しめるように、知床観光のあり方の大きく見直すことが検討されています。その第一歩として広範囲でのマイカー規制と無料のシャトルバス運行が試験的に実施されました。

大幅に範囲を広げ、マイカー規制とシャトルバス運行

 地元の斜里町や環境省、それに知床財団などでつくる協議会は、ヒグマと観光客との距離を適切に保つために、10月2日から4日までの3日間、試験的に大規模なマイカー規制を行いました。これまでは、観光客が多く集まる夏の観光シーズンに合わせて、知床五湖からカムイワッカ湯の滝までマイカー規制をしてシャトルバスを運行していましたが、今回はマイカー規制の区間を大幅に拡大し、シャトルバスの運行も1系統から4系統に増やして行われました。

 規制区間は、「知床自然センター」から「カムイワッカ湯の滝」の道道と「岩尾別地区」から「羅臼岳登山口」の町道です。規制区間では、観光客に知床の自然について知ってもらおうと、地元の自然ガイドがシャトルバスに同乗して案内することも試験的に行いました。シャトルバスは、すべて無料で、4つの路線で運行しました。

地元の自然ガイド 藤川友敬さん
「訪れた人に知床の自然を楽しんでもらえるようにガイドしました。シャトルバスをうまく利用することでヒグマによる事故を未然に防ぐことに有効なのではないかと思います」
(シャトルバスとガイドの説明を聞く観光客)
愛知県から訪れた夫婦
「マイカーでは気がつかないことを知ることができたのでよかったと思います」
斜里町環境課 南出康弘課長
「野生動物と人の距離を保つ対策として期待しています。一方で観光客へのサービスをどう両立させるかも課題になってくると思います」

NHK取材班も乗ってみました!

 NHKの取材班も実際に無料シャトルバスに乗ってみました。すると、バスの車内からヒグマが道路を横断する様子が見られました。知床自然センターと知床五湖までの20分間の道のりでした。

(シャトルバスの中から見えたヒグマ)

 バスに同乗していた地元の自然ガイドの方は、知床の多様な生態系などの解説に加え、餌を与えるとヒグマが人に慣れてしまうことや安全を確保するために野生動物と距離をとることが必要といった説明をしていました。私はマイカーで何度も知床を訪れたことがありますが、実際に景色や動物を見ながら、自然ガイドの方の解説を受けるのは、とても新鮮で興味深いものでした。

観光振興に一定の効果 一方、課題も・・・

 この取り組みについて報告を行う会議が、10月15日に道東の標津町で行われ、3日間の期間中に3000人あまりが利用したことが報告されました。

 斜里町は、▽3日間で3068人がシャトルバスを利用したことや、▽バスの乗降地点にある道の駅や知床自然センターで利用者が大幅に増えたことなど観光振興に一定の効果があったことを報告しました。

 一方、地域住民からは「ガイド付きのシャトルバスなど新しい魅力を実感できたが、これから取り組むべき課題も多くあり、地域住民と協議をしながら丁寧に進めて行ってもらいたい」などと意見が出ました。

どうなる?これからの知床 

 知床が世界自然遺産に登録されて15年。これまで積み上げられてきた課題を解決しながら、新たな価値を創出していくためにはどうしたらよいのか。

 世界遺産地域の利用のあり方を検討する会議の委員を務める大学教授からは、「ヒグマとの距離などの課題を解決しながら世界遺産地域の魅力を創出するための1つの突破口として期待したい」や「今後の知床の利用のあり方に大きな影響を持つ、転換点にもなりうる事業であり、今後も関係各所と状況を共有しながら進めて欲しい」などと意見が出ました。

 今回の取り組みについて、北海道大学などは、シャトルバスの利用者に満足度などを聞くアンケート調査を行っていて、斜里町などは今後の世界自然遺産地域内の交通のあり方を考える上での参考にしていくことにしています。地元では、知床の豊かな自然を守りながら、野生動物と人が、どのように距離を取れば良いのか模索が続いています。

(取材 NHK北見放送局・住田達)

 2020年10月22日

知床の情報は「#知るトコ、知床チャンネル
オホーツク関連のニュースは「オホーツクチャンネル」まで!

関連情報

#知るトコ、知床チャンネル

知るトコ、知床チャンネル

2020年11月11日(水)午前10時30分 更新

第1回「人が守り育てる自然」

知るトコ、知床チャンネル

2020年7月20日(月)午後4時05分 更新

第1回「世界自然遺産のいま」

知るトコ、知床チャンネル

2020年7月10日(金)午後4時34分 更新

上に戻る