NHK札幌放送局

大学に入ってもリモート授業ばかりで友達が作れない? シラベルカ#87

シラベルカ

2022年5月6日(金)午後6時20分 更新

みなさんの疑問を調べて答えるNHK北海道のシラベルカ。今回は、コロナ禍で大学に入学し、リモート授業の環境下で友達作りに悩む大学生たちの悩みと、オンライン環境を駆使して輪を広げようとする人々を取材しました。

「あなたのお悩み聞かせてください!」シラベルカフェを大学に設置

これまでシラベルカでは、北海道中から寄せられた様々な疑問や困りごとを調査してきました。しかし、みなさんからのお声をパソコンの前でじっと待つだけではなく、もっと自らみなさんの前に赴いて、お話を聞かせてもらう事が大事ではないかと考えたシラベルカ取材班。

そこで出張ブース、名付けて「シラベルカフェ」を北海道大学の食堂に設置させてもらい、大学生たちが何に悩み、日々疑問を感じているのかを聞かせてもらいました。

今回、協力をお願いしたのは、北海道大学の学内新聞を発行している、「北海道大学新聞編集部」の部員のみなさん。さっそく取材に加わってもらい、聞き込みを開始すると・・・。

みなさん勉強の悩みや将来の希望などを語ってくれる中、数人から「リモート授業ばかりで、友達作りが難しい」という声が聞こえてきました。

厳しい受験を乗り越えて夢いっぱいで入学した大学生達に、何が起こっているのでしょうか。

リモート授業ばかりで友達作りに困っている大学生たち

さっそく大学の前で「コロナ禍になって友達作りに困ったことはありますか?」というアンケートをとったところ、学生54人中34人が「はい」と回答しました。そのほとんどがコロナ以降に入学してきた学生達です。

アンケートを行う北海道大学新聞編集部の部員たち

大学に入学したものの授業はリモートばかりで、学生同士が交流できる機会があまりなかったといいます。普通の授業では休み時間に隣の人などと雑談をして仲を深めることができますが、リモート授業ではそういったことはできません。お互いの連絡先も人柄もわからないため、授業やレポートについての相談をする相手もおらず、勉強面でも不便したと語った人が多くいました。

コロナ禍の大学生活は、学生達にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。北海道大学で学生たちの悩み相談を受け付けている学生相談室にも話を聞きました。

北海道大学学生相談総合センター 藤岡大輔室長
「コロナ禍になってから相談件数が約2倍に増えました。相談内容としては生活や健康の問題が多いのですが、その背景にあるのは孤独感であることが一番多いです。北大の学生は約7割が道外から来ているため、周りに知り合いがいない中、リモート授業で人とのコミュニケーションもとれず、心や体に不調が現れる人もいます。深刻なケースも増えていて、医療対応が必要になることや、道外に住んでいる家族を呼び寄せることもありました」

入学当初、友達作りにつまずいた学生

そんな悩みを抱えていた1人に話を聞くことができました。

去年入学した、大阪出身で水産学部の北浦優翔さん。1年生の前期はほとんどオンライン授業だったため、他の学生と知り合う機会がなかったといいます。

北海道大学水産学部 北浦優翔さん
「塾や高校の先生から『大学入ったら面白い人がいっぱいいるから、全国レベルのいろんな人が集まるから』と聞き、自然と友達が出来ると思っていたけど、全然そういうわけじゃなかったです」

はじめは、1人で仕方ないと思っていたという北浦さん。自分のペースで行動でき、食べたいものも自分で選べる、初めての一人暮らしを楽しんでいました。周囲では、友達が出来ている同級生もいましたが、人は人、自分は自分で頑張ろうと、燃えるような思いもあったといいます。

しかし、6月、7月に入ると、気持ちに大きな変化が現れました。このままずっと1人で大学生活を送るのかと、日に日に焦る気持ちが高まり、食堂でご飯を食べている時や、学習スペースで勉強している時に友達連れのグループが来ると、いらだちを覚えるようにもなったといいます。

「寂しさからくる焦りというか、取り残されている感じがあった」

入学から4か月後、寂しさがピークに達した北浦さんは、自らアクションを起こすことにしました。SNSを使って大学生同士が集まるオンラインの交流会などに、手当たり次第、参加したのです。そこで「友達がいない」という悩みを打ち明けると、学生団体を運営している人たちを紹介してもらえ、そこから輪が広がったといいます。

特に北浦さんが、たくさんの人と出会えた場が「Knows」という、学生が雑誌を発行するプロジェクトでの活動でした。雑誌のコンセプトは「学生に『一歩踏み出す』きっかけを提供する」。道内の大学生50人に聞いた留学や起業などの経験談や思いを、その学生のSNSアカウントと共に紹介していて、読んだ人が連絡を取れるようにしています。

北浦さんはプロジェクトの広報を任されました。代表で北海道大学の学生、金子新太郎さんは北浦さんについて「SNSを見ても、活発に活動していて、やる気があるな」と感じ、誘ったといいます。

北海道大学水産学部 北浦優翔さん
「自分から行動して探してみると、身近なところに面白い人はたくさんいるのだな、と感じた。ハードルを設けずに一歩踏み出してみることで、人とのつながりがどんどん増えていくことに気付かされた」

うまく友達作りができた学生が使ったのはSNS

SNSを使うことで人とつながることができた北浦さん。その他にも、入学当初からうまく友達作りのスタートダッシュを切れた学生達に話を聞くと、やはりSNSなどのオンラインの環境をうまく使っている人が多いことがわかりました。

●「Twitterのアカウントを2つ作った」長山さんの場合
理学部3年の長山ゆいさんはコロナ禍に入学し、リモート授業ばかりの時間が長く続きました。しかし、対面で人と会えなくともSNSのTwitterを通じてたくさんの人とつながれたといいます。
コツはアカウントを2つ作って、使い分けること。
誰でも見ることができる公開アカウントでは、友達になれそうな人を探すために使います。Twitter上では合格発表のタイミングから「#春から北大」といったハッシュタグを付けた投稿がたくさんツイートされます。その中から同じ理系の学生を探してフォローしていき、最終的には800ものアカウントをフォローしました。そうやってお互いフォローし合った人たちと、教科書の買い方など簡単な情報交換を通じて交流します。
その一方で、自分が許可した人以外からは見えない鍵付きのアカウントも作りました。公開アカウントでのやりとりを通じて気が合う、信頼できると思った人とは、やりとりを鍵付きアカウントに移します。本当に信頼できる人と確信した人とは、まずは学内で待ち合わせをして、対面で交流しました。一度会ったきりでおわる人が大半だったそうですが、今でも仲良くしている友達もできたそうです。
●「ZOOMで食事会やゲームを行った」鈴木さんの場合
文学部3年生で、今回、私たちと一緒に取材に協力してくれた、北海道大学新聞編集部の鈴木結衣さん自身も同様の経験をしました。コロナ禍に入学し、しばらく家から出ない生活を送ったという鈴木さん。初めての1人暮らしの中、誰とも会えない生活は精神的に辛く、地元で暮らす友達と朝から晩まで電話をしたこともありました。
そんな鈴木さんが活用したのもTwitterでした。大学には行けないため、サークルや部活の情報を収集するために作りました。それまではSNSはあまり使ったことがなく、怖いというイメージもあったそうです。そのため、プロフィールに個人情報などは極力載せず、自分からは何も発信もしないアカウントにしました。
そんな中、ある日「同じ○組の人いませんか?よかったら交流しましょう」というツイートを見かけました。北大では1年生の間は学部に関係なくクラスに分けられ、担任の教員もついてみんなで交流します。しかし、リモート下ではお互いの連絡先を交換することもできず、交流ができていませんでした。鈴木さんがそのツイートに「いいね」を押すと、LINEのグループに招待されました。関係の無い人が紛れ込まないように名前と学籍番号をチェックされました。そのグループにはクラスメイトの半分ほどが参加していて、すぐにZOOMを使っての交流が始まりました。お互いの自己紹介をする時間を作ったり、一緒にご飯を食べたり、リモートでもできるゲームをしたりしてみんなで遊び、その交流会は2か月続いたそうです。

コロナ禍で消えてしまったサークル、盛り上がったサークル

コロナ禍によりオンラインの環境を強いられたのは、授業だけではありません。サークルや部活も、コロナの状況によって対面での活動が制限される日々が続いていました。4月になるとビラを配ったり新入生歓迎の交流会を開いたりするのが通例ですが、この3年間大学から許可されていません。

SNSなどを活用して宣伝を行ったり、リモートで説明会を開いたりして努力していますが、そういったオンラインの活用法に疎いサークルは新入生が入らず、活動を停止してしまったところもあるといいます。新入生側としても、自分にあったサークルを探すのが大変で入部を見送る人もいます。

また、せっかく入部できても、コロナの状況によって大学から頻繁に活動の制限がかかるため、全くサークルに行けなかったという人もいました。

とあるボランティアサークルでは、コロナ前に100人ほど部員がいて賑わっていましたが、対面でのボランティア活動ができなかったり新入生が入らなかったりで、今では20人ほどしかいなくなってしまったそうです。

一方で、オンライン環境を逆手に取り、部員数を大きく伸ばすサークルもあることがわかりました。

オンラインの対戦型ゲームを行う北海道大学の「eスポーツ」のサークル。コロナ禍のおととし立ち上げ、部員数はおよそ150人に増えました。

サークルの代表である青山直樹さんがこのサークルを立ち上げたきっかけは、コロナ禍での孤独だったといいます。

三重県から1人で札幌に来た青山さんは、人に会えない環境が続いて友達ができず、孤独を感じていました。そんな時に、オンラインでできるゲームの存在を知り、試しにSNS上で北大の学生に向けて「一緒にやりませんか?」と誘ったところ、同じく1人暮らしで寂しさを抱えていた20人ほどの学生が集まってくれました。そこで、サークルを作り、同じような思いを持つ人たちでつながることを思いつきました。

ゲームのプレイ中は、ボイスチャットで会話をします。ゲームで勝つという目標に向かって、みんなで戦略を練り意見を出し合うことで一体感が生まれます。初めて同士の人とでも、まずはゲームでお互いを知ることができるため、その後の雑談もスムーズになるといいます。

北海道大学eスポーツサークル「HUES」代表 青山直樹さん
「eスポーツの魅力は、どんな場所にいる人とでも一緒に遊べることです。パソコンさえあれば、遠くのキャンパスに通う学生でも参加出来るし、実際に他府県の大学生も活動に参加しています。時間の融通が利くので、サークルを卒業してもお別れすることなく活動を続けられます。僕がeスポーツに出会ってたくさんの仲間ができたように、このサークルが人をつなぐ場になればいいなと思っています」

今や交流にかかせないSNS 専門家の意見は

対面で人と会う機会が減っている昨今、SNSといったオンラインの環境をうまく利用することが、人とつながる鍵になっています。

一方で、SNSの使い方に慣れていない人を狙った犯罪行為などが横行していることも事実。今回取材した大学生の中にも、リスクを心配して使うことを控えている人がいました。

リスクを避けながら利用するためにはどうすればいいのか、SNSに詳しい国際大学GLOCOMの山口真一准教授に聞いてみました。

『SNSを利用する時に気をつける3か条』

①個人情報をのせすぎない

氏名や年齢、自分の写真などをSNS上にのせない。
②スパムアカウントやなりすましアカウントの存在を知っておく
大学生を狙った犯罪の多くは、同じ大学の学生や先輩のふりをして話しかけてくる。安易に心を許さないようにする。
③コミュニケーションの問題を知っておく
ネット上では相手の顔が見えないことで攻撃的になりやすいという研究結果も出ている。誰もが加害者になりうるということを理解し、他者を尊重したコミュニケーションを心がける。

その上で、山口准教授は、大学側も学生同士がコミュニケーションをとるための体制作りや啓蒙活動を行う必要があるのではないかと指摘します。

国際大学GLOCOM 山口真一准教授
「コロナ禍になり、新しい生活を送るためのネットワークを作りのツールとして、大学生にSNSがかなり幅広く使われています。SNSをあらかじめ使っていたかなどで、交友関係に大きな差が出てしまっています。そんな中、SNSのリスクをあまり知らない人が使わざるを得ない状況になってしまっていることは気がかりです。
例えば、大学側がクラスのLINEグループを用意するとか、そういった施策はあってもいいと思います。
またこれだけSNSでつながることが重要になってきている時代だからこそ、このSNS利用に関する啓発をもっと大学でやってもいいんじゃないかと思います」

安心して利用できる岐阜大学公式SNS「ぎふとも」

そんな中、岐阜大学では「安全に学内の人とつながりたい」という学生の声を受けて、今年から専用のSNS『ぎふとも』を立ち上げました。

これは岐阜大学の学生のみが利用できるため、利用者は情報漏洩を気にせず学部や学科の情報をのせることができます。同じ授業を取る人や学科の先輩を探し、情報共有がしやすくなりました。
サークルの紹介や、「誰か家財道具いりませんか?」といったやりとりにも使われています。

このサービスを発案した岐阜大学2年生の柴田菜月さんも、入学当初、コロナ禍で人とのあまり交流できないという悩みがあったといいます。

サークルや部活を探そうとしても、多くのサークルがオンライン上で新入生の勧誘を行っており、SNSが連絡の窓口になっていることがほとんど。それまでSNSを親しい友人との交流のために使っていた柴田さんは、知らない相手とSNSでつながることに抵抗がありました。

起業について学ぶ授業の中でこの悩みについて話したところ、他の受講生達からも賛同の声がよせられ、授業を担当していた上原准教授の協力の下、実現につながりました。

上原雅行准教授(左)と柴田菜月さん(右)

岐阜大学高等研究院 上原雅行准教授
「岐阜大学でも一時期はサークルや課外活動が全面禁止になり、食堂や授業で雑談も出来ない中で、学生達は交流するのが難しかったと思います。教職員が、学生が何に困っているのか耳を傾け、その解決作を一緒に考えて行動を起こすことが、今求められているのではないかと思います」

焦らなくても大丈夫

今回のシラベルカでは、新型コロナの影響が長引く中、人とのつながりを持てず悩みながらも、なんとかコミュニケーションをはかって、充実した学生生活にしようと模索する学生たちの姿が見えてきました。

一方で、今まさに人とつながれず苦しんでいる学生もいると思います。
これまで数々の北大生の悩み相談を受け付けてきた学生相談センターの藤岡室長に、そういった学生にどうアドバイスするか訪ねました。

北海道大学学生相談総合センター 藤岡大輔室長
「1年生は特にみんな人間関係に焦って、わーっと集団で友人関係を作ろうとしますが、しばらくするとそこからばらけていく傾向があります。最初にできた人間関係は後でいろいろ動くので、友達作りに乗り遅れたと焦らなくても大丈夫です。
入学してしばらくは初めての1人暮らし、授業、サークルなどで、ただでさえ環境の変化が大きいもの。大学生活は4年以上あります。友人関係もサークルも後からリカバリーできるので、まずはゆっくり一つずつこなすことが大切です」

孤独の中にいると、つい自分だけが取り残されたような感覚に陥ってしまいます。しかし、これまでシラベルカ取材班が取材した学生の多くが同じような悩みを抱えた経験がありました。自分だけ友達ができていないと思いそうになってしまいますが、そんなことはありません。焦らなくても大丈夫です。

あなたの声を聞かせてください

シラベルカでは引き続き、北海道の大学生の悩みや疑問を調べていきます。その他、今回取材した方法以外に、友達作りの良い方法などがあればぜひ教えてください。追加取材してご報告したいと思います。

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シラベルカ取材班 札幌放送局記者    黒瀬総一郎
札幌放送局カメラマン   高伽耶

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