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さらば愛しきテーオーデパート 61年の歴史に幕

  • 2023年9月6日

中心市街地の空洞化が進む函館市。その函館市で8月31日、また1軒の商業施設が閉店した。半世紀あまりにわたり、市民などから親しまれてきた「テーオーデパート」だ。閉店が近づく中、感謝の気持ちで接客にあたる店員や特別な思いで店を訪れる人たちの姿があった。(函館局・白野宏太朗) 

“長く履いて思い出に”

閉店まで残り1週間となった8月24日。テーオーデパートで次々に客が訪れている靴販売店があった。1度に4足もの靴を購入している女性など、その多くが常連客だった。「ちっちゃい頃から通わせてもらった。最後になるならここでぜひ1足買おうと。長く履いて、テーオーデパートの思い出になればいいなと思う」。1人の女性はそう話した。

この店で20年以上も店頭に立ち続けてきたのが、山坂英俊さん(72)だ。
女性客をターゲットに、この店にしかない商品を数多く取りそろえているのが自慢で、常連客も多い。長年にわたり仕事場となったテーオーデパートは山坂さんにとって特別な存在だという。

山坂さん
「テーオーというのははっきり言ってすごいお客さんと店の店員とのつながりというか、それはほかの店にないような雰囲気だと思う。小さいお子さんが本当に赤ちゃんの頃からいらしていて、本当に大きくなってからも顔を出してくれる人がたくさんいるんです」

大型店の閉店続く函館でまた・・・

この20年、かつてテーオーデパートの向かいにあった「西武百貨店」やJR函館駅前にあった創業80年あまりの老舗デパート「棒二森屋」が閉店。時代を経るにつれて市内の大型商業施設は次々と姿を消していった。
「テーオーデパートの閉店も近いのでは」とうわさもある中、ことし2月、親会社がついに閉店を発表、現実のものとなった。その日、山坂さんも店を訪れた経営陣から話を聞かされた。テーオーデパートは、61年前の昭和37年に開店して以来、幅広い世代から親しまれてきたが、少子高齢化による市場規模の縮小などによる売り上げの低迷が続き、ついに「閉店」の決断となった。

山坂さん
「『店閉めますから』ってことで。『ええ』と思って。とにかくショックだった」。

山坂さんにとってまさに「晴天のへきれき」だった。

閉店当日 開店前から大勢の人が・・・

8月31日、テーオーデパートの営業最終日。「長年親しんだテーオーデパートで最後の買い物を楽しもう」と開店の午前10時前から大勢の人たちが店の前に列を作っていた。

「61年間ありがとうございました」などと書かれたポスターが店内に貼られ、閉店を知らせるアナウンスも流れていた。皮肉にも、店内は買い物客でにぎわっていた。
また、テーオーデパートでは、広場に設置された「からくり時計」が名物で、その時報を見納めようと、2階の吹き抜けからカメラを構える客の姿もあった。

ある20代の女性は「幼いころ、祖母に連れてきてもらった思い出の店。閉店すると知り、最後の買い物をしようと思った」と、この日足を運べなかった祖母の思いを引き受けて、店を訪ねたことを明かした。
また、70代の男性は「高校生のころ、同級生とよく通い、喫茶店や広場で暇つぶしをしたのが思い出される。長年親しんだ場所だけに、閉店は寂しい」と話し、かつて建物の前に市電や「西武百貨店」があった頃の光景について語ってくれた。

 これは1989年に撮影されたテーオーデパートの外観。当時、日本経済はバブル絶頂期で、建物も2階建てから6階建てに増築された。建物の前には、今はない市電が走っている様子もわかる。

山坂さんは、テーオーデパートのこの場所に立てる残りわずかな時間を大切にしつつ、閉店を迎える最後まで、感謝の気持ちを込めて接客にあたっていた。

(山坂英俊さん)
「長い間、この建物の中で商売をして、いろんな勉強をさせてもらいました。20年間、店舗の位置は変わっていません。店から駐車場の出入りが見えるので、常連客の来店がすぐにわかったし、客との話も弾みました。そんな場所がなくなることを知って、もちろん複雑な気持ちがありました。それでも、閉店を迎えたいまは、お客さん、仲間、そしてテーオーデパートに対する『ありがとうございました』の言葉しかないです」。

ついに閉店のときが・・・

「地元の皆様に支えられ営業を続けてきました。この時間をもちましてテーオーデパート閉店となります。61年間本当にありがとうございました」

閉店時刻の午後7時、テーオーデパートの伊藤由喜社長が、感謝の気持ちを述べた。
テーオーデパートの前には歩道を埋め尽くすほどの大勢の市民などが集まっていた。

現地で閉店を見届けていた男性は「2度ともうこのシャッターが開かないと思うと、本当に続いて欲しかったなという気持ちでいっぱい。建物のマークを見るたびに店舗に通った日々を思い出す」と話した。また、店の元従業員だという女性は「涙が出そうになって、こらえるのに必死だった。店頭に立ってお客さんといろいろな話に弾んだ、楽しい思い出の詰まったこの建物に明かりが点かなくなるのはとても悲しい」と思いの丈を伝えた。
大勢の人たちにシャッターが下りる瞬間を見守られ、函館のテーオーデパートは61年の歴史に幕を下ろした。

今後の課題は?

テーオーデパートは惜しまれつつ閉店を迎えたが、喫緊の課題が大きく2つある。
その1つは「従業員の再就職先をどう確保できるか」だ。テーオーデパートにはおよそ80人が働いていたが、会社などへの取材では、再就職先が決まっていない人は「少なくない」とみられる。仕事を失うことは日々の生活に直結するだけに、再就職に向けた支援を確実に進めていけるのか、まさに差し迫った重要な課題だ。ハローワークは9月11日に、離職者を対象にした企業説明会を開くことにしている。
もう1つの課題は、テーオーデパートが建つ場所を今後どう活用していけるかだ。

函館市の中心部では、▼20年前に「西武百貨店」、▼4年前には「棒二森屋」、そして、▼去年は「イトーヨーカドー」と、中心市街地の「顔」として地域経済を支えてきた商業施設の閉店が相次いでいる。閉店後の利活用をめぐり、現在も調整が難航しているところもあり、中心市街地の空洞化は、歯止めが効かない状況だ。

函館市では、中心部の空洞化に合わせるように、人口も著しく減少を続けている。函館市では、ピークだった1984年にはおよそ32万人がいたが、現在はおよそ24万人、ピーク時に比べ実に8万人も減少し、市全体の活力も大きく落ちている。長年、地域から愛されてきた商業施設の閉店はそのあおりを受けたものでもある。北海道の中核都市・函館の中心部の衰退をどう食い止めることはできるのか。地元の市や経済団体などはしっかり危機感を持ち、具体的な対策をいかに講じていけるか、早急な対応が急がれている。

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