昭和37年に開店して以来、函館市で親しまれてきた「テーオーデパート」がことし8月末に閉店します。老舗デパートの「棒二森屋」や大型スーパーの「イトーヨーカドー函館店」など、函館市で商業施設の閉店が相次ぐ中、跡地利用やまちづくりの課題は、いまどうなっているのでしょうか。(函館放送局 白野宏太朗)
ついに函館市の“雄”が・・・
函館市中心部にあるテーオーデパート。昭和37年に開店して以来、地元の人たちに親しまれてきましたが、2月1日、閉店が発表されました。突然のことでした。
衣料品を中心に、食料品や家具、雑貨などの品をそろえ、幅広い世代の客足を呼び込み、1980年代から90年代にかけて売上高は最盛期を迎えました。2018年5月期には19億8400万円を売り上げました。

しかし、このあと業績は赤字に転落。去年5月期の売り上げは、2018年の半分以下となる8億500万円にまで減少。少子高齢化に伴う世帯数の減少により市場規模が縮小したことが原因でした。さらに新型コロナや急激な円安の影響などを受け、主力となる衣料品販売の低迷も続いた結果、去年5月期の経常利益は、3800万円の赤字になりました。

地元商店でつくる組合の理事長は、懐かしそうな表情でテーオーデパートの思い出を振り返りながら、閉店について大変ショックだと胸の内を明かしました。
五稜郭商店街振興組合 中里好之さん
「テーオーデパートは、かつては函館市の“雄”であり、街の核とも言える存在でした。それが撤退するとなると、やっぱり街に大きな穴が空いたような感じがあります。大型店舗の閉店に伴って、商店街そのものが疲弊するし、地域経済が縮小する可能性も危惧しています」

会社によりますと、建物を引き続き保有して、活用法を検討するほか、79人の従業員についても再就職のためのプロジェクトチームを立ち上げて、支援策を講じていくことになっています。
大型店閉店相次ぎ、跡地利用も課題
街の活性化が大きな課題となる中、函館市内では、近年、ほかの商業施設でも閉店が相次いでいます。このうち、2019年には函館駅前の顔であり続けた老舗デパート「棒二森屋」は82年の歴史に幕を閉じました。さらに去年、42年にわたり市民の暮らしを支えた大型スーパーの「イトーヨーカドー函館店」も閉店しました。
「棒二森屋」の跡地には、ホテルやマンションなどが建てられる計画で、令和8年度の開業を目指すとしています。一方、跡地をめぐっては、エネルギー価格や建設資材、人件費などの高騰をうけて、去年12月、規模などの計画の一部を見直すことが発表されています。
また、「イトーヨーカドー函館店」の跡地では、複合商業施設として、どのようなテナントを誘致するか話し合いが進んでいます。

街の空洞化に歯止めを
商業施設の閉店が相次げば、わたしたちの暮らしや市のまちづくりにも影響します。
郊外型の店舗が増えていることに伴って、街の中心部に活気が失われること、いわば街の中心部が「空洞化」していくことを函館市も課題ととらえています。
今回の閉店について函館市の幹部は、帯広市の「藤丸百貨店」や東京・渋谷区の「東急百貨店」を例に挙げながら、インターネット通販の普及や人口減少などの影響で、大型店舗の閉店が相次ぐことが、全国的に珍しくなくなったと述べています。その上で、函館市の課題について次のように話しています。
函館市経済部 小林利行部長
「テーオーデパートが位置する梁川地区は函館市の中心市街地であり、地域経済の活性化のためにも函館の顔として引き続きふさわしい地区であってほしいと考えている。市として、さまざまなイベントの開催や商店街への支援を通して、にぎわいの創出と街の活性化に取り組むのと同時に、住民の需要などを察知した上で商業施設の誘致などを目指していきたい」

わたしも函館で暮らす中で、生活用品を求めて何度も「テーオーデパート」に足を運んだことがあります。昭和37年に開店したため、建物の外観や内装は決して新しいとは言えませんし、建物の一部の階の大部分は空きスペースになっています。
産業構造や人口動態の変化に伴って、購買のあり方も様変わりし、「テーオーデパートから客足が遠のくのは、しかたが無い」という厳しい指摘も取材の中で聞かれました。函館市は道内の自治体の中で、もっとも人口減少が大きく、函館市中心部の「空洞化」に歯止めをかけるための対策は待ったなしの状況です。魅力的なまちづくりとは何か、雇用を守る方法はあるのか、行政と民間企業が一体となって答えを探していく必要があると感じました。
2023年2月7日

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