北海道の地名アクセントって? シラベルカ
- 2022年11月24日
今回のテーマは北海道の地名のアクセントについて。 札幌市に住む60代の男性から投稿をいただきました。
「NHKニュースの発音が『おたる』とトップアクセントで発音されるのが気になって仕方がありません。私のかつて慣れ親しんだ発音は『おたる』でした」
地名のアクセント、確かに気になりますね・・・。
新人アナウンサーの福田裕大が調査してきました!
50年ぶりに札幌へ帰ってくると・・・
投稿を寄せてくださった本間茂さん。
「おたる」の発音が気になり始めてから、なんと50年になるそうです。
投稿者 本間 茂さん
「NHKのローカルニュースを聞いても、いわゆるNHK発音の「おたる」となっていて、私の普段慣れていると思っていた「おたる」とはずいぶん違うなと思ったのが、今回調べてもらいたいなと投稿したきっかけです」
本間さんは高校卒業後、東京へ移り住んだ際にアナウンサーの発音が気になったとのこと。今回50年ぶりに札幌へ帰ってきても、同様の疑問が浮かんだそうです。
「おたる」? それとも「おたる」?
ちなみにNHK北海道のTwitterアカウントで、
A 「おたる」
B 「おたる」
C それ以外
の3つのアクセントを紹介したところ・・・。
自分は「おたる」だ、とコメントを寄せてくださる人が目立ちました。
実際のところ、地元の人たちはどのように発音しているのでしょう・・・?
小樽市民に聞いてみた!
思い立ったら即行動!
小樽市内の商店街で聞き込み調査をしてみると・・・。
早速、本間さんと同じアクセントで発音している方々に出会いました。
一方でこちらの男性は・・・。
どうやら、地元でも発音が分かれるようです。
なぜ2つのアクセントが生じているのでしょうか?
地名のアクセントとそのルーツって?
札幌学院大学で北海道のことばなど言語学について研究している岸本宜久先生にお話を伺いました。
岸本先生は特徴的な北海道の地名アクセントの一例に3拍の地名を挙げています。
札幌学院大学 岸本 宜久 専任講師
「3拍の地名で真ん中が高くなるという傾向が多く見られます。
『おたる』『るもい』『びばい』『むかわ』のような真ん中が高くなるパターンですね」
また、これらのアクセントは時代と共に変わりつつあるようです。
札幌学院大学 岸本 宜久 専任講師
「より時代が進むにつれて、標準語の影響を受けて真ん中から頭高へ傾向が強まってきました。例えば、『おたる』『るもい』『びばい』『むかわ』といったものですね。現在はどちらも北海道の方言アクセントの中で聞かれるようになりました」
年代別では、年代の高い人たちに、真ん中が高いアクセントが。
また、比較的若い人たちに、頭高のアクセントの傾向が見られるそうです。
NHKでは地元アクセントに配慮も
NHKでは「小樽」をどんなアクセントで発音しているのでしょうか?
入局26年目の大先輩、伊林 毅暁アナウンサーに話を聞きました。
伊林アナは現在、「北のことばお兄さん」として正しい日本語を広める活動を行っています。
NHK札幌放送局 伊林アナウンサー
「小樽は『おたる』という形で発音します。NHKは日本各地の地名について、全国放送の場合は地元の発音アクセントをそのまま使うのではなく、共通語の発音に置き換えて発音をしています」
頭高のアクセントを採用しているとのことでした。
その一方で、次のようにも話しています。
NHK札幌放送局 伊林アナウンサー
「ただ、地域放送の場合は番組担当者の判断で地元のアクセントを使っています」
全国放送と地域放送でアクセントを使い分ける場合があるようです。
具体例をまとめてみました。
厚岸(あっけし) あっけし→(全国放送) あっけし(地域放送)
幕別(まくべつ) まくべつ(全国放送) まくべつ(地域放送)
余市(余市) よいち(全国放送) よいち→(地域放送)
これはまだほんの一例とのこと・・・。
伊林アナが資料を見せてくれました。
北海道内の179の市町村すべてについて、それぞれの地名のアクセントをまとめたものです。道内7つの放送局のキャスター、リポーターの協力を得て、去年改訂されました。
番組や場面に応じて、よりふさわしいアクセントで放送を伝える。
地域放送については特に配慮や工夫がなされていることを知りました。
取材後記
今回取材した内容について、投稿いただいた本間さんに報告したところ、「関連する論文やアクセントをまとめた辞典などを見て知識を深めたい」とおっしゃっていました。私たちも今回の取材を通してことばの多様性を実感し、大変勉強になりました。
ご投稿ありがとうございました!
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